は?なんなのこの腑抜けた低音は?あの『Icon』で聴かせたウゾウゾと不定形に這いずりまわるエグい音はどこいったわけ?LENTOって、『Earthen』で見せてたPELICAN流れの重低音を、次回作でも失わないばかりか、UFOMAMMUTに感化されたようなぶっちぎりの黒さで加速させた点が素晴らしかったんだよ。それが、うう、こんな、あんまりだぁぁぁ、HEEEYYYYAAAAA!!あんまりだあああああ!!

とエシディシ式に頭を切り替えたところでもう一度この作品を聴いてみると、いや、そんな嘆くことないでしたよ奥さん。本作は端的にいうとポストデスメタル。ポストメタルの特徴である変拍子および倍音と情感にあふれたリフに、デスメタルの肉感あふれる突進力とザラついた攻撃性がまじりあっている。結果、音としては前作とはちがったものになっているけども、最終的な感情の到達点はやはり圧倒的な悪意であったのだった。

変化は音以外にもあらわれている、たとえばジャケット絵。前作はなんだかよくわからない黒っぽいモヤモヤしたものだった。一転今作は弦楽器を奏でる亜人で、CRYPTOPSY『Non So Vile』に近い、宗教画風ではっきりとしたモチーフのある絵になっている。そして曲名。過去作は『Earthen』と『Icon』の17曲のうち、16曲の曲名が単語ひとつだけだ。それが今回は#3「Death must be the Place」といった文章も曲名になっている。これはもうバンド側がはっきりと意識して具体化を行ったと考えてもいいだろう。

そしてそう、具体化。それを手がかりにして作品を聴くといろいろ腑に落ちるのだった。すなわちジャケットが黒い抽象的な絵からモチーフのある具体的な絵になったように、音も抽象的な「黒さ」から具体的な悪意に変わったと考えるのだ。いや、変わった、というよりは正体をあらわした、に近いか。ウィーザドリィでいう「ぶきみな せきぞう」がガーゴイルだとわかったようなものだ。見え方が異なっても、こちらからすると中身はまったく変わらない。

この「音楽的には変化したがその音楽がもたらす情感は変わらない」っていうのは、聴き手にミュージシャンの核心を確信させ、一生ついていくぜ!という決意をもたらす類の偉業であり、また、革新派と保守派両者を納得させる偉業でもある。そしてそもそも本作がこの手の音楽としては非常にできた作品であるという事実。まとめると、この作品はいろんなひとから「最高だぜ!」といわれるようなスゴいもんなのである。

……とはいえウィーザドリィでも正体不明の影のほうが名前の知れているモンスターより恐ろしいのは事実……あの低音が恋しくないといえば嘘にはなるのだけれども……それでも、やはりまあ、一生ついていくぜ!!

ちなみに前作『Icon』は無料でダウンロードできますのでぜひお試しあれ。

投稿日:2012年12月30日