昨年9月、ISISのAaron Turnerが創立した音楽レーベルのHydra Headが凍結しました。<もうからないしやる気もなくなっちゃった>(超意訳)という理由。現在借金返済(?)のために必死にお金を稼いでいます(なんとTurnerのレスポールまで売りに出されている……)

そんなHydra Headの現時点での最終作が本作。GODFLESHやJESUで知られるJustin Broadrickの新名義JK FLESHと、アメリカのノイズミュージシャンDominick FernowのプロジェクトPURIENTの共作です。両名とも3曲ずつの計6曲。

JK FLESH

#1「Fear of Fear」は打ち込みリズム+ギターリフ+シャウトという彼の定番形式ですが、その他2曲はインダストリアルなエレクトロニカ。エグい低音リズムの反復。ただ、やはり出自が出自だけあってそのリズムの意味が一般的なエレクトロニカ勢とは異なります。一般的なエレクトロニカのリズム音には、当然ですが「リズム」という意味が主目的として結びついています。一方JK FLESHにおけるリズムはそうではなく、「リフレイン」です。しかもまったくメタル的な意味で。そう感じるのはたぶん、音のひずみ方がギターのそれに近いからなんでしょう。そもそもJK FLESH(Justin Broadrickの肉)というド直球にお肉ちゃんな名前をそのまま使っていることからも、彼が純粋なエレクトロニカの無機さとは違うところに自分を置いていることが伺えます。

一番良かったのは#2「Deceiver」。ノイズドローンとドラムンベース風のリズムトラックで主に構成されるこの曲。そのリズムが曲者で、いち反復における最後のシンバルが若干遅れています。このズレが、単純な反復にすこしの引っかかりを生じさせます。その引っかかりと背後に流れる音階の定まらない瘴気のようなドローンのあわせ技で、聴き手は違和感のウネリに放り込まれ、グラングラングラン。エヘエヘエヘエエ。

GODFLESH好きはもちろん、音の雰囲気としてはCLARK『Turning Dragon』に近いものがあるので、ああいうエグいエレクトロニカが好きなひとにもオススメです。

PRURIENT

先日TWITTERで上のやり取りで教えてもらったアーティスト(ありがとうございます)。本命の『Shipwrecker’s Diary』は現在鋭意捜索中ですが、とりあえず本作で雰囲気つかんどきます。

#1「Chosen Book」は鈍足ハーシュノイズドローン。前半は図書館の司書さん的理知さが見られますが、後半は本気出してきます。大量の情報が頭になだれこんでくる。や、やめろ!知識で、知識で破裂してしまう!そして突然ぷっつりと意識が飛んで終了です。あとには廃人と化した私が横たわっていました。ミーハベリベリワイズマンネ……フフフ

余談ですが、ノイズ音楽を聞くにはこうした「音に対する想像」も重要です。ノイズが苦手なかたは、是非ためしてみてください。

#2「Entering the Water」。左右にパンをふりまくって電子音とリズムが波打つ。その波打ちに別の電子波がかぶさりながらゆっくりとズレていきます。意識の法則が乱れる!この「ズレ」によって聴き手の意識を別次元にもってくって手法はborisの『flood』でも見られましたが、あの曲もこの曲も水にかかわる言葉が曲名になっていますね。陸生生物である我々人間にとって水中というのは異世界である、という原意識があるかどうかはわかりません。ただ、クソみたいに長くてツラい水泳の練習を意識を無にすることでやりすごしていた元スイマーの私には非常に共感できるテーマです。最高です。

#3「I Understand You」。ああああああ……。これダメなやつだ。泣くやつだ。包容力のある電子音のメロディにノイズがかぶさるという構成。電子音は徐々に拡散的な音になっていき、最終的にノイズの波に消えていく……。これ、「I」の感情が電子音で、「You」の感情がノイズなんですよ。私にとってあなたは他人であり、理解できないノイズでしかない。けれども私はあなたを理解したい。そのために私は私としての輪郭を放棄する。私は私でなくなり、あなたというノイズと一体化する……。泣いた。

本作はおそらくPRURIENTの理知的な部分が発現したものとおもわれますが、コイツが陰毛感のある音楽をつくったら……きっとよだれズビッっつーよーな音だぜええええ?

総評

この作品がHydra Headの最後の作品である意味や、このふたりが共作した意味は、本作のBandcampページに詳しく書いてあるので特に語るところもございません。よっ、レビュワー殺し!

要約すると、

  • Broadrickは従来の暴力的な音楽を電子音楽でやってるし、Fernowも従来のノイズ一辺倒じゃないから互いに影響受けた作品になってる。
  • 両者とも、協和中の不協和、メロディ中の不快な音、リズム中の非リズムを目指している。
  • Hydra Headの「アートメタル」という志はこの作品で崩壊するけど、このすばらしい作品はHydra Head凍結の意味をよくあらわしている。

とのことです(そう英語は得意ではないので、ちがうところがあったら指摘してください)

アートメタルという一大ジャンルの礎を築いた人物が、自身の王国の崩壊を示す作品を掲げた非常に歴史的意味のある作品です。というわけでそういうのに興味があるかたはISIS他の作品群とまとめて是非ご一聴を。もちろん、単純に暗くて重くて暴力的な音楽が好きなかたにもオススメです。

投稿日:2013年03月03日