ヴィジュアル系初の本格派 Djent バンド

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いよいよ本格派ヴィジュアル系 Djent バンド = Vjent バンドが登場しました。元 CodeRebirth や 元 DELUHIのメンバーのバンド FAR EAST DIZAINです。

これまでも Djent っぽいことをやっているバンドはいました。DIR EN GREY が『THE UNRAVELING』で若干それっぽいことをやっていますし、ギルガメッシュも Djent という言葉を使っています。少しまえにはヴィジュアル系ジェントコアなるバンド JILUKA も話題になりました。ただいずれも、要素としては Djent 的なところはあるものの、全体としては異なる文脈にあるようなかんじです(DIR はプログ/デスドゥーム、ギルガメッシュはピコリーモ、JILUKA は最近のヴィジュアル系メタルコアの範疇)。また、海外では GaidjinN というバンドがいますが、これはちょっと例外でしょう。

JILUKA / Twisted Pain (PV full)

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(とはいえ1曲目のインストは完全に Djent なので、もっとそれっぽくやろうとおもえばできるんだとおもいます)

Djent ってなに?

擬音としての Djent とジャンルとしての Djent があります。

擬音としての Djent は、低いチューニングあるいは多弦ギターによる低音の刻み(ジェンッ! ジェンッ!)を表現しています。

ジャンルとしての Djent は、定型化すると「擬音としての Djent+(一定打ちシンバル+)シンコペーションや変拍子などの変なリズムを主体とした複雑な展開」です。音作りは輪郭がはっきりしたモダンなもので、ボーカルはシャウトとエモい歌を使いわけることが多いです。浮遊感や煌めきのある雰囲気を持つバンドが目立ちます。(もちろん、それなりの規模を持つジャンルなので、ここから外れるバンドも多いです)

Periphery – Icarus Lives!

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(ヴィジュアル系で言えば「ROSIER」みたいな位置の曲。ギルガメッシュ「INCOMPLETE」はこの曲にかなり影響を受けているとおもわれます)

MESHUGGAH を発端とし、SikThなどを経て、PERIPHERY、ANIMAL AS LEADERS(以下AAL)といったバンドが出てきたあたりで形づくられたというのが Wikipedia 的認識です。それらのバンドやファンは、ジェントルメン/ウーメン、紳士淑女などと言われたりします。ダジャレです。また、涅槃で蠢くような音を出すデスメタルバンドの MESHUGGAH と比べて、どこか知的な印象を与えることに対する、一部のメタルファンからの揶揄でもあるでしょう。(耽美系を好きなひとがオサレ系を嫌うようなものです)

MESHUGGAH – New Millenium Cyanide Christ (OFFICIAL MUSIC VIDEO)

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「Cry My Name From The Light」に見る Djent さ

「Cry My Name From The Light」はまさにうえで挙げた特徴を持っています。そして、Djent 的にはかなり練度の高い、あるいは “近い” レベルの曲です。既存の Djent 曲で言えば PERIPHERY「Make Total Destroy」に類するでしょうか。また、 AAL にも多大な影響を受けているのでしょう。2分40秒ころからのギターソロの奏法は、その立ち居振る舞いが “紳士” を体現している AAL の Tosin Abasi氏そのものです。

Periphery – Make Total Destroy (Official Music Video)

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Animals as Leaders – “CAFO” | Music 2011 | SXSW

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ギターヘッドから手元を映すやつも見るやつだ!なんだったら Matt Halpern 氏のウンコが半分出てるような切ない顔も真似していいんだよ!

Vjent の発生

Djent は音作りやリズムに強い特徴がありますが、メロディはそれほどではありません。彼らはそのメロディをヴィジュアル系的なものに置き換え、さらにジャンル特有のドライブ感を付与することで、十分にヴィジュアル系的でありかつ十分に Djent である、すなわち Vjent を作りあげています。ヴィジュアル系的な部分は既存の Djent シーンにはあまりなく、本作には独自性が感じられます。今後の一層の活躍に胸が躍ります。

さて、Vjent の発生は突然変異的なものではなく、当然の時代の流れと考えられます。

00年代以降にヴィジュアル系が参照してきたメタルのジャンル、ないし参照した結果近づいたメタルのジャンルは、グルーヴ/ニューメタルとメロデス~メタルコアです。また、そういう風潮を作った本山である DIR EN GREY は OPETH もお気に入りにあげています。

ザ・ロードキラーズ~ディルアングレイ・セレクション
2008年9月10日

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グルーヴ/ニューメタルは、ヒップホップなどのリズムを取り入れた重低音を特徴としています。また、メタルコアにはブレイクダウンやビートダウン、チャグといった、重低音で刻む様式があります。ヴィジュアル系で言えば、前者はthe GazettEなどで、後者は最近のムックなどで聴けます。

このあたりの用語に関しては、以下のサイトに詳しいです。

http://romanticnobita.blogspot.jp/2012/03/rnr-talk-session-001-chug.htmlRNR Talk Session 001: Chug (チャグ)談義 その① – チャグの発祥を探る-

OPETH はプログレッシヴデスメタルというジャンルでもっとも有名なバンドのひとつです。グロウルやメタリックなリフを駆使しながら、アコースティック楽器や変な拍も用いて、壮大な長尺曲を演奏します。DIR EN GREY では「VINUSHUKA」などに大きな影響が見られます。

Opeth – Ghost of Perdition (Audio)

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(『Blackwater Park』と並ぶ超重要盤)

重低音とリズムを特徴とするグルーヴ/ニューメタルおよびメタルコアと、複雑なリズムやアレンジを用いるプログメタルは、海外でのDjent を生む土壌となっていたと思われます(PERIPHERYのメンバーはSLIPKNOTOPETHをお気に入りのバンドに挙げています)。海外のモダンなメタルの流行がニューメタル→メタルコア/デスコア→ピコリーモ/ジェントと移ってきたことも考えあわせれば、似たような変遷を遂げている日本のヴィジュアル系で Djent バンドが生まれるのは、インターネットで世界の情報がたやすく手に入るような現代においては、なるほど自然ともいえる流れでしょう。

Vjent は普及しない

ヴィジュアル系と Djent は、音楽的には相性がよいです。ただし、今後ヴィジュアル系ジェントバンドが増えるかというと、そうおいそれとはいかないでしょう。

一番の壁は演奏技術です。00年代以前にヘタクソヘタクソと言われた反動からか、最近のヴィジュアル系は演奏技術も編集技術もかなり向上しています。とくにその垢抜けた音作りは Djent とも相性がいいです。

一方で演奏技術にはやや問題があります。たしかに速度のある刻みやグロウル、正統派メタル的なピロピロは(少なくとも編集音源上では)海外メタル水準に近づいてきていますが、Djent に特徴的な複雑な曲展開には、それとは異なるプログ的な意味での力が要求されます。海外メタルシーンには DREAM THEATER から脈々と続くプログパワーが充填していたためか、若手も一斉に続きましたが、ヴィジュアル系シーンにはそうしたプログ的な意味での強い象徴的存在がいません。そのため、おそらくはその手の演奏能力は、シーンとしてまだあまり根付いていないと考えられます。したがって、雨のあとのタケノコのように、もといディルのあとのガゼサディのようにニョキニョキと似たようなバンドが出てくることはないでしょう。

もちろん、演奏できないことを逆手にとったゴールデンボンバー方式のジェントバンドも、このジャンルは動きが “エモ” いので、おもしろそうといえばおもしろそうですが……。

日本の Djent バンド

ここで、ヴィジュアル系ではない日本の Djentバンドを見てみましょう。

国産ジェントについては、3年前の記事ですが、mossgreen氏によるまとめがあります。

http://masterofslach.blog114.fc2.com/blog-entry-365.html願わくば 背中合わせに 音楽を。【旧館】 : 国産Djentを探そうキャンペーン

世界的にも Djent は宅録色/ソロ色/オタク色が強いジャンルです。2013年には『Djent多難 状態:難あり』という同人コンピレーションが出ているように、日本ではバンド界以上に同人/宅録界で人気なのかもしれません。ニコニコ動画や Soundcloud を探せば Djent をやっている/やっていた宅録ミュージシャンは多く見つかると思われます。たとえば BABYMETAL の Djent 曲「悪夢の輪舞曲」はボカロP出身のゆよゆっぺ氏の作曲です(※彼女らは別の文脈がありすぎるので今回は紳士的に言及しません)。ただしそうした活動形態のひとたちは、その性質上、大手ロック/メタルメディアでは取り上げられにくく、メタルファンのあいだでの認知度は高くないと思われます。

一方、現在作品を残す程度の、あるいはインターネットで適当に検索してヒットする程度の積極的な、知名度が出る活動をしている Djent 要素が強いバンドは、先の記事で出た CYCLAMEN と SAILING BEFORE THE WIND、2014年にファーストアルバムを出した abstracts などです。あとは 7YEARS TO MIDNIGHT もそれっぽいところがあります。HAMMERHEAD SHARK は解散してしまいました。

Cyclamen – “Departure” Live Music Video


(歌詞のテーマといい歌メロや歌い方の†エモ†さといい、ヴィジュアル系と親和性が高いと一部でささやかれる CYCLAMENさん)

こうして国内でも増えつつある Djent 的なバンドたちに、ある程度商業的に成立するジャンルであるヴィジュアル系にいて、赤坂 BLITZ をソールドさせる人気だった DELUHI のメンバーが立ちあげたバンドである FAR EAST DIZAIN が加わることになります。他バンドを参照することに対するヴィジュアル系の無垢さがゆえか、個人的な感覚ではうえに挙げたどのバンドよりもより “いわゆる Djent” 然としている彼らが、国内での Djent の認知と普及に寄与するのではないかという期待はあります。

DELUHI / Departure

(この曲もギターの音は Djent)

DELUHI『VANDALISM [∑]』
2015年3月25日

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国内メタルシーンの期待の星

海外ではすでに Djent は最先端というわけではありません。これまでの多くの流行ジャンルでそうだったように、一部のひとたちからは唾を吐かれる事態にまでなっています。そして Djent シーンの中心を成したバンドや新世代のバンドは、すでに次の段階へ進もうとしているところです。

とはいえ、やはりこうしたバンドが出てきたことは喜ぶべきことです。重要なのは国内に Djent シーンができることそれ自体ではなく、そのジャンルが広く認知され、多くのバンドが自然にその要素を使えるようになることです。どれかひとつのジャンルによってあるバンドやシーンが固定されてしまう、というのはその発展にはあまり良くないでしょう。彼らだって、アルバムに先立って発売された EP を聴けばわかるように、Djent だけをやっているだけではありませんし、今後ヴィジュアル系という割と何でもありなジャンルで、どんどん特異な音楽性を築いていくに違いありません。その中で、国内メタルシーンにも影響を与えてもらえるのであれば、こんなに楽しいことはありません。

そうした作用を起こすためには、やはりライブでの交流なのでしょうか。

ヴィジュアル系のライブはファン層が限定される傾向はあるものの、最近ではムックや MERRY、Lynch. 、NoGoD、摩天楼オペラなど多くのバンドが他ジャンルのバンドと一緒にライブをしています。Plastic Treeが ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015 の PARK STAGE のトリを務めたりと、大きな舞台でもそうした傾向は見えます。

FAR EAST DIZAIN も積極的にヴィジュアル系外のバンドと対バンし、Tシャツマッチョとオタクメガネが跋扈するテックシーンを チャラオイチャラオイwww とかき乱して対抗心を燃え上がらせ切磋琢磨し、ひいては国内メタルの先鋭化と活性化に貢献して欲しいところです。そしてアイドルと激ロッ系に奪われた「うるさい音楽フェスの集客要員」という立ち位置を、再びヴィジュアル系の手に取り戻して パ ウ ド ラ ー ク 2 0 1 6 してください。

もちろん、それは机上の空論じみた険しい道だとおもいます。ヴィジュアル系外のみならず、一部のヴィジュアル系ファンからも冷たい視線は受けるでしょう。というわけで日本全国のオタク紳士淑女のみなさまは、苦難の道を進む彼らを応援すべく、あと単純にライブも楽しそうなのでぜひライブに足を運んで、私といっしょにバンギャルから好奇の目で見られましょう。また、この作品からジェントふくむプログ・マスメタルに興味を持つひとが増えてくれればそれも良しです。

ちなみに 1st ONEMAN LIVE は売り切れです。うっ、わざわざでしゃばらなくても当然のように人気だった!

FAR EAST DIZAIN『TONICK DIZAIN[初回限定盤]』
2015年3月25日

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投稿日:2015年10月23日