「エモ」?「びいしき」?

ミュージックビデオ観ていて、唐突な展開に思わず噴き出したことありませんか?あるいは、曲はよい。垢抜けてもいる。でもいや、ちょっとまて、それは違う!そうおもったことはありませんか?私はあります。そういう体験や違和感を「エモ」や「びいしき」として紹介していくのがこの企画です。

「エモ」の代表例としては陰陽座の以下の映像があげられます。

陰陽座「紺碧の双刃」

 エモォ…┌(┌ ^o^)┐

 瞬火の頭の回転は、演奏によって昂ぶった彼の内なるエモーショナンの噴出であり、これこそがまさに「エモ」であり、我々と彼の「エモ」は共有されるのです。

「びいしき」は、有名どころではIMMORTALが近いでしょう。あの表情、あの姿勢、あの動きは「びいしき」のカタマリです。他に、KALEDONはどっちかっつうと貧乏要素が強いので微妙。NINJA MAGICはおふざけ要素が強すぎるので除外。もっとも、この辺の感覚はひとによって違うでしょう。だからこそ各々で美意識のズレが生じてこんなことになってしまうわけであります。

「エモ」と「びいしき」の明確な線引きはありませんが、「びいしき」の瞬間的な昂ぶりが「エモ」であるともいえます。

というわけで上記のような「エモ」や「びいしき」をひしひしと感じる、そんな映像を紹介していきます。今回は私が現在最も「エモ」を感じるジャンルであるメタルコアを中心に8曲をまとめました。

ATTACK ATTACK!~メタルコアスタンダード

まずはチャラコアの標準とも言うべきATTACK ATTACK!の名曲「Stick Stickly」です。この映像には近代メタルコアの基本的な「びいしき」がこれでもかと詰まっています。ともかくどうぞ。

まず目をひくのがガニマタです。本作はこのガニマタにかけては他の追随を許さないクオリティを誇っています。この中腰を支えているであろう強靭な筋肉……元ヤクルトの名捕手古田を髣髴させます。

次に目につくのがギターアクションやステップで、かつそれを揃えてやっているところでしょうか。ある特定の動きを全員で行う、というのもメタルコア映像の特徴のひとつです。スタジオで演奏そっちのけで「ここでこうやってギター振りかざそうぜ!」と練習している様子を思い浮かべるとほほえましい限りです。混ぜろ!彼らに関しては衣装や髪型も揃えているのがポイント高いです。

アクションという点でもうひとつ。近代チャラコアの特徴のひとつとして横流しの前髪がありますが、これを活かした「前髪を横に流しなおす動作をヘッドバンキングと兼ねる」動作が盛んに見られます。ATTACK ATTACK!ではギターボーカルで特に顕著ですね。感情の昂ぶりを表しながらお色直しもできる一石二鳥のこの動作はぜひみなさんも習得してください。

あと忘れてならないのが脂肪です。まあまあの頻度で食べすぎた影響が強く出てる体格のメンバーがいます。メタルコアマンはこの手の音楽性のバンドマンのなかでは年齢が若めであること、細身の衣装でキメていることが多いためこの脂肪はより目立ちます。学校に数人いた、太ってるのにカースト上位だった言うなればデブ充とでも言うべき存在は我々の胸に郷愁を浮かび上がらせます。

本作の最エモポイントはこちら。昂ぶる感情が故左手に黄金長方形を宿した一瞬です。

 ブウワァァァァァアアアアアァァァァアァ

さて、メタルコアの基本的な「びいしき」を体験していただいたところで次に参ります。

SIENNA SKIES~期待の新人

残念ながらATTACK ATTACK!は解散してしまいました。そんな彼らの意志をつぐ次世代メタルコアバンドがSIENNA SKIESです。前述したポイントを踏まえながら早速見ていただきましょう。

強烈ぅ……。

おそらく多くの方が最初に目に付いたのがその脂肪でしょう。明らかに配分が偏っています。ベース、腹震えすぎ。とりあえず左二人のカロリーは足して2で割ったほうが良いです。また、ボーカルの軽やかなデブ感もなかなかステキです。あとは一番のイケメンがキーボードっていうのも哀愁がありますね。

そんな本作の最エモポイントはこちら。全体的に演奏が必死なドラムにスポットがあたった瞬間です。

THE BETRAYER’S JUDGEMENT~エンジョイキャンパスライフ

Twitterにて五条隆志ことban_off_jp氏が紹介していたバンドです。

なんというか冒頭のヒゲのおっさんの顔ですでに胸いっぱいなのですが、さらにそこから登場するメンバーのファッションセンスに脱帽です。なにこの大学1年生のオシャレ感。しまむらからavailへ、そしてOIOI or 109メンズ館へ……。キマってます。ボーカルCyril氏のカリアゲ+チョビヒゲ+英字Tシャツ+綿パーカーは役満つきます(綿ベストだったら跳満だった)。極細スキニーとガニマタを両立させるためにみんな膝が破けてるのもポイント高いです。

シンフォ要素や唐突なキスシーンなど、全体から「おれたちスタイリッシュ」感が滲んでいて私歓喜です。サビでいい感じに唄ってる背後でヘドバンかますやつがいる統率の取れてなさも大学生グループっぽくてステキです。

音楽的なところにもちょっと触れさせてもらってよいでしょうか。メタルコアの必須要項であるブレイクダウン――この映像だと2分40秒から始まるそれは、彼らの場合「デーデーデーデーデーデーデーwwwwwww」とギターだけだと単調でかなりマヌケです。ところがシンフォ要素がかぶさることでそこに強力な縦ノリが発生しています。さらにそのシンフォ効果が薄れてくるあたりでギターソロに移ります。練られてます。最初にもちょろっと触れましたが“音楽的基盤がしっかりしていること”というのは、「びいしき」においては結構重要です。

そんな見所満載の本作の最エモポイントはこちら。「エモ」が全力放出されて気の抜けた表情を捉えた決定的瞬間です。


フゥ…

MISS MAY I~彼女いない歴=年齢

とにかく動画を見ていただきましょう。

THE BETRAYER’S JUDGEMENTと真逆の、この全体に漂う「モテなさ」は一体何なんでしょうか。いやそりゃ具体的に挙げられますよ。ベースのゲイっぽさとか、ドラムのヤケクソっぷりとか。でもそういうんじゃなくて、もう何か、漂ってるんですよ。ああ、こいつらコッチ側の人間なんだなっていう空気感が。誰だバンドやったらモテるなんて言ったやつは。クソが!そしてそこの女、やめろ!「あたしは良いとおもうけどな~」とかそういうカンチガイを起こさせるような発言は!みじめになるだけだろ!

そんな鬱屈満載の本作の最エモポイントはこちら。「モテなさ」が集約された横スライドです。

PHINEHAS~魅せる客観視

ここまでは、本人たちが自分たちの美意識を客観視できていないがためのズレから来る「びいしき」を紹介してきました。次はやや趣向を変えて、本人たちが客観視できているバンドを紹介します。カリフォルニアのクリスチャンメタルコアバンド、PHINEHASです。

自分たちの美意識を客観視できていると、それを演出としてうまく扱えるようになるんですよね。例えばこの動画でいうとライブ映像が挟まれているところが演出。キメ動作のところをピックアップすることで、おまえらそれライブでもちゃんとやってんのかよ!と視聴者に突っ込ませる構造になっています。そしてその「ライブでもちゃんとキメ動作をやっている」という事実は彼らの微笑ましい音楽愛を我々に強く印象付けるのでした。

最エモポイントはありませんが、代わりにもうひと作品どうぞ。


ふざけすぎ。

これで「主の希望を皆に届けるバンドとして結成された」とか言うんだからなんかもうキリスト教わけわからないです。

THE HYSTERIA~辺境を彷徨う

次はメタルコアというよりマスコアなんですが、私が本企画を思いつくキッカケとなったバンドの紹介。ベラルーシのメタルバンドTHE HYSTERIAです。

共有無効なのでリンク先で視聴ください

まず「ベラルーシの森」っていう時点でこみ上げるものがありますが、メンバーひとりひとりに着目していきましょう。

とりあえず目に付くのがベースでしょう。でかすぎるイヤリングに筋肉でパッツパツの半袖スパッツ。服装という点では右ギターのMESHUGGAHティーシャツも影響元モロバレって感じでよいですし、左ギターの普通のチェックシャツもこの集団にあってはむしろ異様です。そしてドラムはベースに半分くらい筋肉をわけてもらったほうがいい。

あとは皆さん突っ込みたくてしょうがないボーカルの挙動。どうしたんでしょうか。大事なものでも落としたんでしょうか。このボーカルの動きと、弦楽器陣の楽器を構える位置の高さ、そしてその音楽性が一致して妙にコミカルな印象を受けます。

最エモポイントはこちら。ボーカルの探し物を一応手伝うフリをするギター。

SUBLEVELS~ストーリー性

お次はアルゼンチンのマスコアバンド、SUBLEVELSです。とりあえずどうぞ。

今回の作品群のなかではかなり玄人向けです。一見強烈な印象は受けませんが、やはり何かおかしい。そのおかしさの一番の理由は、映像のストーリーの意味不明さです。森の奥に消える謎の人物を追いかける形で映像は始まりますが、散々森の中をさまよった挙句最後に出てくるのがよくわからない像。えっ、だから何!?この像見つかったとたんに何でメンバー消えるの!?アルゼンチン史に詳しいかたなら何かわかるのかもしれませんが、平均的日本人にとってはなんか怖そうな雰囲気だけしか伝わりません。本人たちは何か意味があってこういう演出をしたんでしょうが、視聴者に全く伝わらないあたりまさに「びいしき」といったところでしょう。

また、その「びいしき」を実現するために未開の森奥で撮影したせいで、みんなハーフパンツはいてます。そりゃ長ズボンはいて撮影したら汚れてしまいますからね。

玄人向け本作の最エモポイントはこちら。石像発見後にとり憑かれたかのように全方位に変顔をするボーカルです。

OF TEMPLES~最終兵器

さて、ここまでさまざまな形の「びいしき」と「エモ」をご覧いただきました。皆さんかなりメタルコアのびいしきセンサーが発達したとおもいます。というわけで以下の最終兵器作品を持ちまして、本稿「びいしき」と「エモ」メタルコアら編は終了とさせていただきます。

本作の最エモポイントは言うまでもありませんね。それでは最後に皆さんご一緒に!

ドゥルルドゥルルッwwッドゥルルトゥルwwwwドゥルルツドゥルルッwwww

ハッwwwwwwwww

おしまい

いやあ、すばらしいバンドばかりでした。よい作品を届けてくれて本当に感謝です。今回紹介したバンドも、紹介できなかったバンドも、皆その美意識を強く保って今後も活動してもらえるよう祈っています。

なお、THE HYSTERIA、SUBLEVELS、OF TEMPLESはTwitterにてDanbo666氏に教えていただいたものです。ありがとうございます。最近ツイートは控え目ですが、氏の紹介する作品はどれもステキですのでフォローをおすすめします。マスやプログレ、辺境メタルが好きなかたは特にどうぞ。

投稿日:2013年11月27日