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あなたの耳が試される、絶叫空耳10選。~メタル/ハードコア編~

あの頃の思い出

わたくし2009年くらいに空耳にハマっておりまして、いろんなジャンルの空耳を探してはタモリ倶楽部に送っていた過去を持っております。残念ながらまったく採用されなかったわけですが、今回その弔いをかねて絶叫系空耳を厳選してまとめました。

NUEVA ETICA「El Arma」

33秒ごろから

で、どうだ?へたっぴだ。

De Toda Mierda

バンドについて

アルゼンチンのハードコアバンドの3枚目。スペイン語のツインボーカルが強烈。最近再発されたようです。これは事後空耳ですね。

HACRIDE「Act of God」

44秒ごろから

「そういう言動エロですわ」
芽が出ないホウレンソウです

so you can go and destroy.
Men organize wars and slaughters.

作品について

フランスのデスマス系バンドの3枚目。世の中には報告しなくても良いこともあるのです。ちなみにこのバンド、前作が結構話題になったわりに本作はなぜか日本ではスルーされています。すげえ好きなんですけどね……。

STARRING JANET LEIGH「Odium」「Creation」

「Odium」:1分33秒ごろから

女子高、栗売れよー!

(原詞不明)

「Creation」:45秒ごろから

「きもーい」って言われたッスよ!

(原詞不明)

作品について

カナダのエクスペリメンタルデスメタルバンドの1枚目。下ネタではありません。ちなみに歌詞カードの曲順が間違ってるので「Ex-You」じゃなくて「Odium」であってます。たぶん。

CELESTE「Au Feu Le Savoir」

2分19秒ごろから

弟グレ、お父さん死んだ(バイバイ!)
弟グレ、お父さん死んだ(パパー!)

autant tout bruler. autant se lessiver a` mort.

作品について

フランスのブラッケンドハードコアバンド1枚目。その黒々しさから当時かなり話題になった作品です。空耳まで黒い!

NEUROSIS「The Doorway」

5分39秒ごろから

先っぽが、ビショ濡れ!?

searching for the piece of me

作品について

言わずと知れた名盤。精通。

INFERNAL WAR「Crushing Impure Idolatry 」

58秒ごろから

打て!歩はしっかりダイレクトに!

to death crushing idolatry

作品について

ポーランドのブラックメタルバンドの1枚目。かなりアグレッシヴな音楽性です。将棋まで攻撃的。

FEAR FACTORY「Christploitation」

3分42秒ごろから

ロッカーにしちゃった(風呂へ!)

Your god is just a lie

作品について

カリフォルニアのインダストリアルメタルバンド7枚目。初期のギタリストの再加入やドラムのメンバーチェンジで話題になっていた作品です。ロッカーでしてはいけません。

DEVILDRIVER「Hardened」

1分42秒ごろから

(ハーゲー)ハゲ父ちゃんは
(ハーゲー)ハゲ父ちゃんは
(ハーゲー)えりちゃんの便所、入らして、入りたい!

Hardened (Hardened towards your world)
Hardened (Hardened towards your…words)
Hardened…in eternal vigil
Hardened like steel
Hard as hell

作品について

カリフォルニアのグルーヴデスメタルバンド5枚目。サビがこれだとどうしようもないですね……。

DEAFHEAVEN「Dream House」

ヤッバァァイwwwコレヤバァァアァイwwwヤダァァアwwwww

まだ続く

次回は「あなたの耳が試される、語り系空耳」でお会いしましょう。プワーオ。

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あなたの耳が試される、語り系空耳8選。

あの頃の思い出

わたくし2009年くらいに空耳にハマっておりまして、いろんなジャンルの空耳を探してはタモリ倶楽部に送っていた過去を持っております。残念ながらまったく採用されなかったわけですが、今回その弔いをかねて語り系空耳を厳選してまとめました。絶叫空耳に続く空耳シリーズ第2弾。

GRAVE TEMPLE「IV」

13分37秒ごろから

FUJIYAMA連呼

作品について

SUNN O)))のひとらの別プロジェクト。これ空耳だと思ってたんですが、リイシュー盤の販売サイトを見る限り、どうやらマジでフジヤマって言ってるみたいですね。

ちなみにオリジナル盤と再発盤では曲の区切りや名前が異なりますが、内容はおそらく同じです。

MOS DEF「Quiet Dog Bite Hard」

1分9秒ごろから

すまねぇ すまねぇ すまねぇな すまねぇな すまねぇな すまねぇ

Simmer down simmer down simmer down now Simmer down now

作品について

ブルックリン出身の俳優兼ラッパーの5作目。謝り倒してフェードアウト。

mewithoutYou「Be Still, Child」

1分4秒ごろから

石鹸バケツでグワーン

sinking back into the ground

作品について

ワタクシが大好きなアメリカのアートロックバンド。まさにbe still, childっつー感じですね。

この頃はポストハードコアでしたが、現在はフォーク要素を取り入れてよりアートな感じになってます。2012年の最新作はレビューもしてます

CLAP YOUR HANDS SAY YEAH「Upon This Tidal Wave of Young Blood」

2分13秒ごろから

2班だ 2班だ 2班だ 2班だ 2班だ 2班だ 2班だ 2班だ

Young Blood

作品について

ニューヨークのインディバンドの1枚目より。そんなに2班のメンツが良かったんでしょうか。

本作はピッチフォークが9点をつけ話題になりましたが、それ以降は失速気味。今年6月に出た最新作もこのざまです。

RUDRA「Hymns From The Blazing Chariot」

22秒ごろから

飽きてから丸十年

akirtikaramarjuna

作品について

シンガポールのブラックメタルバンドの5作目。捨てろ。

ROTTING CHRIST「Δα?μονων βρωση?」

22秒ごろから

「好きや」「あれま」

ΣΚΙΑ ΑΝΑΙΜΑΚΤΟΣ

作品について

ギリシャのベテランメタルバンドの10作目。あれま。去年の作品も非常に良かったです。

DAITRO『Y』

「Part I」:3分12秒ごろから

おっちゃん、絶世、戦法、熱唱、ツモ!ふつうでー!

(原詞不明)

気合入れた割にタンヤオのみ。

「Part IX」:40秒ごろから

大人どしてどこにいる?

(原詞不明)

ボーカルが完全に迷子。

作品について

後世への強い影響力を持つフランスのDIYスクリーモバンドより。他にも空耳が眠っていそうなので探してみてはどうでしょうか。お子様の自由研究にも。

元メンバーは現在BATON ROUGEというエモバンドで活動しております。最新作『Totem』の日本盤は、彼らと同じくDIY精神を持つディストロ兼レーベルLongLegsLongArms(通称3LA)から発売されております。試聴もできます。かっこいいのでぜひこの機会に。えっ、この記事もしかしてステマ!?違います。勝手な宣伝です。

http://longlegslongarms.jp/3la_releases/4/batonrouge.html3LA- LongLegsLongArms Records レーベル第4弾 フレンチエモBaton Rouge最新作”Totem”リリース!!

ネタ切れ

絶叫シリーズ、語りシリーズで空耳ネタはもう尽きました。またたまったころにお会いしましょう。プワーオ。

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タイトル画像

【DSR】2015年作品から8枚選出+α(MMM便乗企画)

MMM READER’S POLE

http://sin23ou.heavy.jp/Marunouchi Muzik Magazine | Just find your own music

個人規模ながら、国内外、知名度問わず、メタル、ロック、アイドルを中心に突撃インタビューを続けるサイト Marunouchi Muzik Magazine(以下MMM)が今年も読者投票を行っています。

私も投票しようと、コメントを書きながら作品を選んでいたらなんだか楽しくなってきて、それなりの文章量になったので記事としてまとめました。過去に「ベスト記事書いてて楽しくないから書かない」という記事を書いたのは過去のことです。

7作品+ブライテストホープ+ベストライブを選んでいます。いちおう順位はつけましたが、どれもほぼ同列1位です。だから7枚という半端な数字。

7.MOONFALL『Refraction』

ニューヨーク発、ヴィジュアル系影響下の3人組ロックバンド。facebookの影響を受けたもの欄<the GazettE, One OK Rock, PVRIS, Thirty Seconds To Mars, Linkin Park, Ling Tosite Sigure, Dir En Grey, Deluhi, Luna Sea, Versailles, Nocturnal Bloodlust, coldrain>という、まさに海外で人気のヴィジュアル系バンド(過去調査による)詰め合わせ状態。<Moonfall strives to instill deep feelings in the listener through immersion in the resonance of the unknown. >というバンドの説明文もソレっぽい。

その中でもやはりthe GazettEの、特に2000年代中後盤の彼らの影響を強く感じる。SLIPKNOTをカジュアルに解釈したようなリフとデスボ(グロウルでゎない)による「ゴールデンボンバー演奏しろ」的フレーズ、淫靡な女性コーラス、そしてそれらを含む雑多なアレンジが目まぐるしく変化する曲展開。メロディからほのかに感じる90年代的部分をふくめて、圧倒的ネオヴィ感!

とはいえ、彼らはNOCTURNAL BLOODLUSTやDELUHIの名から想起されるような、近年のアッパーで輝きのあるヘヴィサウンドも聴かせている。それにより、あのころよりもさらに雑多な、さらに派手な、現代に通じるアップデート版ネオヴィサウンドとなっている。

さて、海外ヴィジュアル系影響下バンドとして注目すべき点として、そのボーカルが挙げられる。SEREMEDYを代表とするバンドのボーカルたちは、発声にこのジャンル特有のクセがなく、英語詞だということも含めてその辺の海外ロックバンドとあまり変わらなかった。そのあたりをしっかりやっていたのは中国のLILITHくらいなものだった。

Lilith 3rd EP「 GALASSIA」MV

(なんて良い曲なんだ……)

一方MOONFALLはヴィジュアル歌唱を完全にモノにしている。歌が重要な意味を持つヴィジュアル系において、これは強いアピールになる。日本のヴィジュアル系ファンも、日本のバンドの延長線上として、全英詞のバンドとして聴けるだろう。

もちろん、ただ「日本のヴィジュアル系に似ている海外のバンド」というだけではない。作品のクオリティ自体が高い。メロディのキャッチ―さ、音やアレンジの作り込み、演奏力のすべてが近年の海外ロック/メタルバンドとして戦える水準にある。

彼らの「くっきりとした音で基本骨格は初期ガゼット的節操のなさ」という構造は、思った以上の効果を発揮している。分離の良い音が、雑多な音に必然性を与える。その必然性はバンドとしての「クオリティの高さ」を聴き手に印象づけ、次の再生を誘う。2回目以降の再生では、初回で把握できなかった音がより鮮明に耳に残る。こうした流れによって「聴くたび新しい発見がある」が、聴き手の積極的な探求を必要とせずに、引き起こされる。パッと聴きのインパクトと、繰り返しに耐える味を兼ね備えている。

以上のように音は完璧とも言える仕上がりの彼らだが、ヴィジュアル面は残念ながらKIAIが足りていない。演奏力はもう十分なところにあるとおもうので、今後は化粧力にも磨きをかけて欲しいところだ。とりあえずタンクトップをやめるところから始めよう。タイトなスーツを着て目の周りを黒くぼかそう。

なんて言ってたら新作のダブルAサイドマキシシングルでは脱ヴィジュ気味になってしまった。

とはいえ、この痛しかゆしなかんじが海外ヴィジュアル系の “エモ” でもあったりする。日本のヴィジュアル系に近くて、クオリティも高く、海外ならではの要素も持つバンドがぽつぽつ出てきているので、あと10年くらい長い目で見守っていきます。

試聴と購入 (Bandcamp)

6.LITURGY『The Ark Work』

あんだけ騒がれたのにぜんぜんベストに選出されないかわいそうな子! レビュー済み

5.LEPROUS『THE CONGREGATION』

私は今年何度「アッアッアーアーアー」しただろうか。そしてこれから何度「アッアッアーアーアー」していくのだろうか。ノルウェーのプログレッシヴメタルバンドである彼らの4枚目のアルバム『THE CONGREGATION』の魅力は、1曲目の「The Price」に凝縮されている。

単純に聴こえる冒頭からのリフアンサンブルだが、その一振り一振りで、各楽器の関係性は微妙に変化する。特にギターとベースで顕著だ。1本のギターがリフのメロディ部分を一貫して担当して目立ってはいるものの、それが常に主役というわけではない。その他楽器の押し引きによって、主従をふくむ、アンサンブル内での存在感が入れかわる。ドラムとの関係でも、特に一定拍子で鳴らされるシンバルとその他アンサンブルで、リズム関係が変わる。

その微妙な変化を際立たせるのが、休符の多いリフそのものだ。一般的には、この程度の各楽器の押し引きがあったとしても、その連続性がゆえに「フレーズ」という印象が前に出てきやすい。だが、この曲では、一振りの前後の空白がその連続を切り取り、各楽器の関係を明白にする。肉眼ではわかりにくい順位も、写真判定では一目瞭然というわけだ。

こうして、シンプルでありながら変化を感じる、魔法のようなリフができあがる。

もう少し大きな構造、すなわちリフの何小節かで見ても、この曲の節々でこのような変化は成り立っている。たとえば1回目のサビのあとのリフは、ギターの代わりにキーボードが使われ、シンバルもクローズになっており、サビのあとのチルアウトとして機能している。ところがその後、ギターやベースが戻り、シンバルもオープンになり、イントロのときよりも強めに演奏される件のフレーズが現れた時点で、その二つは、同一のリフフレーズでありながら、メロとサビのような関係性になる。我々がチルアウトだと思っていたそのフレーズは、すでに次の盛り上がりの前段階であった。

サビやメロ、という点で言えば、この曲の展開には「音の流れ」が感じられる。空白が多く塊感の強いリフが、細やかにミュートで刻まれるギター粒子とそれが舞う空間を演出するキーボードが特徴的なメロになり、変拍子による圧縮ののち、最後に歪み全開のサビとなって爆発する。固体が分散し、粉塵爆発を起こしたような物理的変化の流れが、音の変化に宿っている。つまり、各場面は、その繋ぎの滑らかさ以上に、本質として強く関係している。

書き出してみれば、リフ→メロ→サビという、アルバムのオープニングおよびプロモーション曲としてわかりやすい、ベタな曲構造ではある。しかし、上述の綿密な関係性の変化は展開に必然性を与え、それがベタという印象を遠ざける。すべての要素がそれぞれと強固な意味を持って繋がり、曲を完成させる。

構築美。そう言ってもいい。ただし、一般にその言葉から連想される完璧さとはやや趣が異なる。それはその構築が、プログ/マスに顕著なテクニックやリズムといった演奏力を主とせず、あくまで綿密な「関係性」に根をさしているからだ。繊細な演奏によって紡がれる、何かひとつの音がはみ出してしまうことで破綻してしまいそうな意味としての美しさは、完璧であり、同時に崩壊に面した緊張感も生み出している。彼らの<だけど実際は “THE PRICE” は僕たちが書いた中でも最もテクニカルな曲の1つなんだ。抽象的にやっているから判りにくいけどね。>*)という言葉は、こうした点を指しているのと感じた。

その緊張感をより有機的に、人間的にしているのが、やはりボーカルだろう。その感情表現力は“ウタモノ”の主役として十分に存在できる力がある。だからこそ逆に、最も目立つパートでありながら、上述の関係性のなかに完全に溶けこみ、曲の人間味を増幅させるひとつの要素として存在できるのだろう。

「緊張感のある完璧さ」が作品を一貫する名作。

バンドとしての強度もあるし、ウタモノとしてもいけるし、近年のプログ/マスの盛り上がりにも合致するし、メタルだけではなくロック好きにも広く聴かれて欲しい名作。これ絶対MMMの投票企画で上位に来るでしょ。来なきゃおかしい!ぜったいぜったいおかしい!!(ちなみに00年代中後半以降の邦楽ロック好きの友人に聴かせましたが「メロディが暗い」と一蹴されました……)

4.SLOW『IV – Mythologiae』

ベルギーのひとり葬式ドゥーム。このジャンルはその名前もあって、はじめは暗さに耳が向きがちなんだけど、いつしかその陰鬱で、しかし美しいメロディに『救い』を求めるようになるという。そんな救われ目線で聴くと本当に、本当に心に響く。

本作はアタック感がうすい。ゆっくりとコードを弾き鳴らすギター、丸みを帯びたベースに、息が多くかすれたボーカル、ズシリとした芯はあるものの、強くリヴァーヴのかかったドラム。一撃の強さが控えめで、相対的に持続音が目立つ作りになっている。それらによってもたらされる、西洋的な拍子をひととき感じさせないほど間を空け、要所要所でたっぷりとタメを作るアンサンブルは、演奏に強く鈍さを付与する。

全体的に低音は出ているものの、そのアタック感のなさもあって、こちらを圧倒するような音圧はない。低音は重苦しい空気感として機能している。

そうした鈍く、重い音に乗るのが、ツインギターと教会的なコーラスが成す暗く美しいメロディだ。

それらがひとつになり、「Mythologiae」――神話というテーマと相乗してひとつの音楽世界を作り出す。重苦しい音は濁った空を、遠くで鳴り響くようなドラムは崩壊する世界を、美麗なメロディは世界の終わりにおける悲哀と苦しみからの解放を、それぞれ描いていく。

滅びは救済でもある。このツラく苦しい生が終わることは、恐怖と、そして安堵をもたらす。救われた……僕はこの音の世界の中でだけは、ただ救われたんだ……(音が切れた瞬間に現実が重くのしかかるところまでが “”フューネラルドゥーム”")

試聴と購入 (Bandcamp)

3.wombscape『新世界標本』

東京のハードコアバンドの1stミニアルバム。

なんなんだ、この作品全体から滲む得体の知れなさは!

不穏でひきずるようなギター、重低音発生装置のベース、手数が多くひとところに留まらないドラム、力の限り叫ぶ芯の座ったボーカル。こうした主な特徴を並べると、なるほど、ボーカルのRyo氏が<音楽的な影響は受けています>と言っているとおり、カオティックハードコアという単語が浮かぶだろう。しかし、同時に<あくまで1つの要素として取り入れているといった感覚><たまたま今はハードコアの要素が強い曲が多いだけ>/q>とも述べている。たしかに、彼らはCONVERGEやTHE DILLINGER ESCAPE PLANによって形成された「カオティック」の概念には留まらない。

本作中もっとも「カオティックハードコア」然としている#3「真白な狂気」を聴いてみよう。不穏なコード感のうえ、左手によってうねうねと音程を変化させられているリフ。その骨格は保たれたまま展開していく。そこにカオティックな性急さは感じられない。続く#4「新世界標本」でより顕著だが、その繰り返しに重きを置いたようなマスさは、どちらかといえばMESHUGGAHに近い感覚だ。MESHUGGAHは基本的にいわゆるDjent的な音で、固体的な点でそのリズムを活かしているが、本作はうねるような音、液体的な曲線をリズムに絡めている。とはいえ気体的な音、シューゲイザーやDEATHSPELL OMEGA以降のブラックメタルのような、不定型なギターサウンドにまでは到達しない。彼らの音は分離がハッキリしている。

この液体的な音は、各音の不協和を強く耳に残すのに丁度良い。固体的な音は、その密度の高さがゆえに、圧縮された塊として耳に届き、不協和への意識が弱くなる。あるいは、そもそも不協和音は適さない。気体的な音は、その密度の低さがゆえに、不協和音は雰囲気として処理されてしまう。しかしこの液体的な音は、その分離の良さから不協和音をハッキリと耳に残し、その滑らかさから音を圧縮せず、コード感をそのまま耳に届ける。

我々を殴打する直接的な音はない。我々の耳をくらます性急な展開や、我々の耳がぼやける音の洪水もない。曲の骨格はハッキリしている。ただ、それは、協和や質量という形で我々の耳に歩み寄らない。それが、「何者かであることはわかるが、何者かはわからない」という得体の知れなさに繋がっている。

その得体の知れなさは、#6「正しい愛が正しい絶望に変わるまで」でひとつの解決を迎える。柔らかく丁寧な音で、うってかわってわかりやすく郷愁を誘うこの曲で、「何者か」が我々と同じ形の、愛や絶望といった感情を持つ「何者か」であることがわかる。そして、そうした感覚を持って、再度作品を始めから再生すると、また異なる意味を持って言葉と音が伝わってくる。

ひとつの作品で描かれる、我々と似た「何者か」の物語。なるほど、確かにこれは<ある日あるとき突然、例えば白昼夢のように頭の中を埋め尽くすように生まれてくる>景色をもとに作曲された、『新世界標本』なのだなあ、と腑に落ちたのだった。

試聴と購入 (3LA)

引用部:wombscape、Ryoロングインタビュー – Guilty Forest

2.AEvangelist『Dream an Evil Dream』

アメリカの二人組ブラックメタルバンドが、ちょっと変わったレーベル20 Buck Spinへの移籍前に出した、Debemur Morti Productionsへの置き土産。これが嫌がらせのような内容の作品だった。

38分1曲。私は悪魔を身に宿すための生贄かなにかか。禍々しいシューゲイザー音が空間を渦巻くなか、壁を一枚へだてたかのような音――「音が悪い」どころではない、明らかに意図的に曇らされたひどい音の、呪術的デスドゥームアンサンブルが鳴り響く。その半覚醒状態を模したような「遠いアレンジ」に、グロウルから高音ボイスまで器用にこなすボーカルが、あるときは直接、あるときは空間に溶けこみながら我々の耳に入り込んでくる。儀式によって、まさにいま悪魔が頭に入り込まんとしているかのようだ。実態のつかみにくい音ながらも、10分を超えて耳が慣れてきた以降、演奏が激しく加熱するなどの展開を聴かせるのも、儀式の進行度の表れに思えてくる。

ブラックメタルや、それに類するアンダーグラウンド音楽では、音質が悪いことが良い方向に作用する場合がある。しかし往々にして、それは製作者が意図したものではない。あるいは意図されたものだとしても、それは単純に作り手の好みや思想の問題で、曲と音質が強く結びつくことは少ない。しかし本作では、音の悪さ、しかも極端な音の悪さが、「そうでなくては作品が成立しない」ほどの意味を持って使われている。

実験的でプリミティヴで、同時にコンセプチュアル。嫌がらせのような内容の怪作だけど、名作。

試聴と購入 (Bandamp)

1.AEvangelist『Enthrall to the Void of Bliss』

で、その彼らの20 Buck Spinへの移籍後の作品がこちら。『Dream an Evil Dream』ほどではないものの、こちらもかなり異質な内容だ。

基本は低音がぼわついた粗い音質のデスブラックだが、どうも右のほうで、チェンバロか何かか、妙に高音が耳につく音が鳴っている。それはデスブラック部分とコード的にも音質的にも不釣り合いだ。似たような展開はするものの、足並みを揃えることはない。凶悪な演奏に、異質な何かがまとわりついている。ときおり、その異質さに意識を奪われるように、DEATHSPELL OMEGAめいた不穏なギターワークも登場する。あるいは獣めいたガテラルが、ふいに朗々と歌い上げる。ひとつの曲に複数の意思が存在するかのような面妖なアレンジ。なるほどこれは、悪魔に取りつかれてケダモノと化した人間の音楽か。

『Dream an Evil Dream』で見せた「意味のある音の悪さ」。そして本作での大胆なアレンジ。2015年、彼らの音楽制作能力はひとつの極点を迎えた。

試聴と購入 (Bandamp)

LLNN『LOSS』(ブライテストホープ)

ポストアポカリプティックを自称する、デンマークのブラッケンドスラッジハードコア。HEXISとツーマンライブをした、という情報から予想されるとおりの黒くて重くて攻撃的な作品。DIYを掲げていることもあって、投げ銭。

この手のバンドには珍しいキーボードサウンドを駆使した、多彩なアレンジによる音の洪水のような空間表現は現代的、ポスト的。そして、それと同列、あるいはそれ以上重要に作品の核として据えられているのが、ハードコアとして十分な質量を持つ鈍重パートだ。「ポスト」パートで聴けるコード感とざらついた音の感覚そのままに「ハードコア」パートが刻まれるため、そのふたつを行き来する際に場面が切り替わったという印象は受けない。静と動、感情と筋肉というような対比は感じられない。同じ質のものが、空間が、ただ密度だけを変えて我々の耳に迫ってくる。筋肉ではなく、空間の暴力。それが、単調になりがちなこの手の音楽性に奥行きを持たせ、しかしながら一貫した音の志向を保ち、バンドとしての芯の強さを支えている。

ボーカルは地声成分が多めで人間味が強い。焦り、怒り、悲しみ、憎しみなどの負の感情が入り混じったようなその声は、拡散と凝縮で我々を飲み込もうとする音空間にそうした人間的感情という意味を加える。すなわちこの空間は、我々の陰鬱な精神世界である。叫ばれるのは、ひたすら世の不条理を嘆き、責める言葉。逃れたい焦燥感を、逃れられない絶望感が押しつぶす。すべてが精神に帰結するという意味で、これは ISIS (the band) のアーロン・ターナーが提唱したポストメタル=シンキングマンズメタルのひとつの形と言いたい。

2015年、自信を持って弊サイトが1番にかかげる作品であり、今後もっとも期待する新人バンドのひとつだ。と、言いたいところだけど、これ、発売は公称2037年なのだった。ポストアポカリプティックの名は伊達じゃねぇ……。2037年にまた会いましょう。

試聴と購入 (Bandcamp)

ベストライブ

これしか行ってないんですけど、TJLA FESTとても良いライブでした。

http://decayedsunrecords.com/archives/dsrfeature/tjla-fest-reportTJLA FEST記 ~”場” の作用にフェスの意味を感じた最高の2日間 – Decayed Sun Records

2016年がんばりたいこと

とりあえずガゼットの記事を完成させて、あとバンドのほうもまとまった作品を出したいです。今後ともよろしくお願いいたします。

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TJLA FEST記 ~”場” の作用にフェスの意味を感じた最高の2日間

田舎ものが都心のライブに行った

Tokyo Jupiter Records(以下TJR)とLongLegsLongArms(以下3LA)の共同開催であるTJLA FESTに行きました。最寄りのデパートがつぶれて廃墟と化す程度の街に住んでいるライブ慣れしていない人物が、都心のライブハウスで行われるライブに行った率直な感想を書いていきます。

読み返してもなかなか長い文章ですが、とにかく今回言いたいことは、このフェスには「(海外招聘をふくめて)良いバンドが集まった」がゆえの “”ケミストリー”" があったってことです。フェスである意味のあるフェスだったとおもいます。

ちなみに各バンドの試聴なんかはこちらの記事でできます。

http://decayedsunrecords.com/archives/dsrfeature/tjla-fest-matomeTJLA FEST ~うるさくて黒くて激情で “アトモスフェリック” な音楽好きにおすすめのアンダーグラウンドフェス

新大久保駅

新大久保駅から韓国関係の店が多い通りをまっすぐ歩く。ハードコア/メタルっぽいフォントの黒パーカー着てるひとがたくさんいるとおもってよく見てみると「G-DRAGON」などと書いてあり、文化はちがえどセンスは同じか……。あと「人気も実力もあって女遊びするならいいけどそういうのないんだからせめてそこはマジメにやってほしい」という韓流ファン女性の声が聞こえて来たので人気と実力をつけて何もかもを許されたい。

駅の売店と自販機で2回両替して500円のコインロッカーに預けるも、マクドナルドの隣に「駅より安いコインロッカー!」があったので次回は駅より安くすませたい。

距離としては歩いて3分程度だが、土日だったからか人通りが多く、その倍はかかった。また、飲食店の間にひっそりと入口へ続く階段があるので少しわかりにくかった。

すぐ隣に有名なホットク屋(韓国のスウィーツらしい)があるため、入口の周囲にセンスある若男若女がひしめいていた。迷子になりかけていたところに、階段から欧米系の顔立ちの黒くて細い服を着た、明らかに異質なひとたちが出てきたことで場所を特定できて助かった。「あっ、ダウンフォールオブガイアみたいな顔のひとたちだ!!」と思いながら入れちがう。

入場時に「デカイエドです」「えっ」「デ・カ・イ・エ・ドです」などと少々恥ずかしいやり取りをし、2日通し券料とドリンク代500円を払って入場。

新大久保アースダム

ステージ脇の馬鹿でかいスピーカーにビビる。音響は低音重視。ギターが低音に巻き込まれて聞こえにくくなる場面が多々あった。とはいえこれ、結構メジャーな会場やバンドでも感じる現象なんだけど、聴く場所によるのかな。

前のほうは耳栓なしではツラい音量になった。耳栓をしてライブを観るなど気合いが足りぬ、精細な音に鼓膜を委ねよ」と我慢をして聴力が低下するとさらにツラいので、耳がツラいとおもったら耳栓をする。バンド関係者はだいたいみんな耳栓しているので、気おくれすることはない。ライブの音はドンシャリが多く、さらに私は8kHz以上のシャリ高音が耳に痛いので、高音カット性能が高い耳栓を使用している。でもこの日は忘れたのでカナル型イヤホンで代用。同じようにイヤホンのひとも結構いる。

床は三段になっているので、後ろでもわりと見やすい。ただ、でかいスピーカーのせいで、ステージのハシが見えにくい場合もあった。天井は低く、梁で隙間ができているという、ボーカルがそこに手をあてたり頭をハメたくなる構造(今回数バンドで確認)

休憩はライブスペースのベンチかバースペースで。ただし、バースペースのソファはほぼ団体に占拠されていた。ひとり用の高椅子はわりと空いていた。ライブスペースにあるベンチは5名くらい座れる。抵抗がなければ前述の床の段差に座って休むこともできるが、それなら壁際でも座れるだろうか。

通常は全域喫煙可のようだが、今回はライブスペースは喫煙可、バースペースは禁煙だった。非喫煙者への配慮だろう。とはいえ某嫌煙家氏によると「ライブスペースが前回ブラックメタルバンド来日のときよりも煙たくない。あとその辺でタバコ吸って床に捨てるひとがいない」とのこと。たしかに非喫煙者の私からしてもそれほどタバコくさくなかった。やはり客層が違うのだろうか。ブラックメタルこわい。ただ、一張羅のレザージャケットに “アースダムの臭い”(なんか生臭い)が染みついたのは事実で、もうこれはどうしようもないので、次回は強烈なアロマ(隠語)を焚いてみんなでハッピーになりたい。

今回は再入場可能で、タバコがツラくなれば外に退避できたので、バースペース禁煙の恩恵はそれほどなかったかもしれない。タバコの煙はそうでもなかったけど、ライブの最中にタバコを吸いながら前につめてきたり、タバコ持ったその手で写真を撮ろうと高々と手をあげたりするひとがいて、喫煙家との共存を望む私もそのときはさすがに「おまえのライフスペースを禁煙にしてやろうか」と不謹慎にもおもってしまった。

ドリンクはアルコールが500円、その他飲み物が200円前後。アルコールはいらなかったけど、ソフトドリンクだと300円くらい損をすることになり少し悔しいので、マリブミルクを頼む。「マリブミルクお願いします」「えっ」「マリブミルクお願いします」。マリブミルクを頼むとちょっと驚かれる。

トイレは年季が入っている。ふたつ並んだ男用便器。奥に個室。男用便器は背後に申し訳程度に布がたらしてあるだけでほぼ丸見え。女性はむちゃくちゃ気を遣うだろうこれ。男性も気を遣う。臭気もかなり強い。個室に入る勇気はなかった。最寄りのミニストップのトイレを使えばまだマシなのだろう。そういう意味でも再入場可はありがたい。

ただ、普段は再入場禁止のようで、「再入場不可!」みたいな張り紙がいたるところに貼ってあった。ちゃんと情報を持ってないひとは混乱しそうだ。

sekien

全体的に重心低めでかつプリミティヴな演奏。ベースボーカルのJyoji氏が録音作品よりどっしりした声を出していたのが象徴的。前述のとおり低音がもりもり出ていることもあって、かなりマッチョな印象を受ける。というかベースの弦引きちぎってたし実際マッチョだった。その筋力と曲の抒情性がうまく結びついて何ともいえない土臭さ、汗臭さがほとばしり、拳を振りあげ泣きながらシンガロングしたい衝動すごかった。ネオクラストとしても、ハードコアとしても熱い!

After Forever

メロデスとハードコアの熱い部分を混ぜたような力強い演奏。ただし、1曲1曲ごとに休憩を挟んで「久々のライブで」「体力がない」と音の雰囲気とは真逆のことを口にしていて、なんだか暖かい気持ちになる。たしかに中盤ちょっと演奏がよれているように感じた部分もあったものの、後半「belief」から続く流れは貫禄だった。低音過剰の環境にあっても各パートがそこに埋もれず、各音域でしっかり役割を果たし、短い曲のなかでまとまりのあるキメを何度も見せていた。かっこよかった。

なお、主催者のひとり水谷氏への謝辞を述べようとしてからの「水谷さん」「いねぇのかよ!」→演奏開始は本日のベストMC。

抒情が熱さにつながる点でAfter Foreverとsekienは共通しており、開幕の2バンドの流れとしてとても良かったとおもう。

STUBBORN FATHER

ここまでの熱い2バンドからするとやや異形な雰囲気がある音。リズムを維持しそうでしなさそうでするドラム。リフを刻みそうで刻まなそうで刻むベース。メロディになりそうでならなさそうでなるフレーズを刻むギター。各楽器が持つバンド感とジャム感はそれ自体でまとまりになっているけど、そこにさらに統一性を持たせていたのが、ステージを動き回り、ときに指揮者のような、儀式のような動きを見せるボーカルShige氏だった。バンド全体の音が、氏の叫びとともに何か「語っている」ような感覚を受けた。

前2バンドが作った “熱” を吸収して、独特の “激情アトモスフィア” へと変換して放出した印象。

物販で1stと2ndが売っていたので購入。おまけでステッカーを2枚もらえたのでパソコンに貼った。

あと、音チェックのための行われた怒涛の演奏のあとの静寂に、BGMのブルージーなボーカルがたまたまジャストタイミングでのっかって笑いが起きたのが本日のベストハプニング。

■【絶対不変のハードコアの核】STUBBORN FATHER shigeロングインタビュー – Guilty Forest

OVUM

この日いちばん驚いた。録音作品では、地に足のついた、解放感のあるポストロックを聴かせていたのだけど、今回は趣が違った。同じ “地に足のついた” でも、そのつけ方が完全にメタルのそれ。ポストロック的なトレモロメロディはそのままに、ミュートリフでザクザク刻むわ、ツーバスはドコドコ踏むわで、ここまでのハードコア/メタルバンドたちと比較してもまったく劣らない力強さを発揮していた。それらのバンドのファンにも訴えるものがあっただろうと予想できる。実際、予備知識なしで聴いたというブラックメタル/ネオクラスト他愛好家の某氏も「かっこよかったっす」と言ってCDを買っていた。

雰囲気としてはポストメタルに近い。ただ、過剰ともいえるメロディによる陶酔感とトレモロの柔らかい響きが先にあって、そこにメタリックな強度を足しているという点で、もとがスラッジだったISIS (the band) 勢やNEUROSIS勢とは完全に違うそれ。まさか新しいポストメタルの形をこういうバンドで聴けるとは。ひとりのシンキングマンとしてとてもとても感動した! 『ascension』は良い作品だったし、このバージョンの『ascension』、あるいはそれ以前の作品もぜひ聴きたい。

各楽器の音の分離性と演奏の丁寧さも随一だったようにおもう。これに関しては、そもそもギターが低音に巻き込まれにくい音域を主に演奏しているという点もあっただろう。

STUBBORN FATHERが放出した “激情アトモスフィア” をメタル部分で受容し、その “熱さ” の質を天上のメロディでポストロック的な熱量に変換して届けてくれた。

Years Passing

北欧の美男による、低音から高音まで万遍なく使った美しいドローン。ときおり顔を出すメロディと美声は過ぎ去った日を思い出させる。会場の音響特性もあってか、音が耳以上に身体に響く。そのため、透明な音でありながら、肉体のない「幽玄」という感じはない。なるほど、これは身体性と強く結びついた記憶だ。まさにイヤーズパッシング。

大部分の時間、地べたに近い位置で機械をいじっているだけで、演奏しているという感じはなかった。それが聴衆の態度を軟化させたのか、座ってゆらゆら聴いてるひともちらほらいた。長丁場の中盤、いい感じに、気持ちはライブ状態のまま身体を休めることができた。「ほんとにありがとう」と日本語で最後に挨拶していたけど、こちらこそほんとにありがとうだ。

OVUMによる『ascension』で浮いた身体を受け止めて癒してくれたイヤーズパッシングスパ最高でした。

COFFINS

なにしろハッキリとした低音が出ていて、各音が地面を踏みしめるような感覚が強かった。強調されたそれは巨体が前進するようなどっしりとした躍動感を生み出していて、しばしばテンポをあげたり全員参加のコーラスがあったりすることもあって、悪くて重いながらも快活さを漂わせていた。

会場の音を完全にモノにしていて、フェス後半であるにもかかわらずいきなりモッシュが起こる(それで体力消費したせいか途中観客の運動が鈍くなったかんじもあったけど)。貫禄だ。演奏途中で入ってきた欧米風のひとたちも演者を指さしながら「やべぇ(笑)」みたいに話してた(たぶん)

加入後初ライブとなるベーシストのあたけ氏がとにかく楽しそうだったのも印象に残った。サークルモッシュを煽ったりなど、音以外の面でも場を盛りあげていた。

Years Passingが記憶へといざなった肉体を受け止め、一気にこの世に引きずり戻す。精神と肉体がフル覚醒状態で、後半へ向かう。

The Caution Children(以下TCC)

“エモ”。いつか流れてきた動画で彼らが “エモ” の達人であることはわかっていたけど、まさかこれほどとは……。正直パフォーマンスに圧倒されて演奏の細かい部分は覚えていないんだけど、とりあえずめちゃくちゃ盛りあがったし、盛りあがってた。

神妙な面持ちで行われるボーカルNick氏の脈絡のない動き。その奇行に触発されるかのように、どんどんバンド全体が感情をヒートアップさせていく。繊細さかテンションの高さか、という対比でいけば、繊細さが強かった録音作品。それとは真逆の、テンションマックスのライブだった。ただ、『Unknown Lands』で聴かせた、後半に向かって徐々に昇りつめていく展開は、ライブでのこの状態を体現してもいたんだなぁ、と感慨にふけった。

あと、これは同行した “エモニスト” である某氏が発見したことなのだけど、Ian氏が演奏の最後にギターを観客に渡したあと、ステージの奥で「早く返って来ないかな……」というかんじで客席を眺めていたとのこと。そういう自分の行動に対するちょっとした冷静さ、のめりこめなさには、やはりナードという言葉が似合う。

COFFINSの有無を言わせぬ迫力によって蓄積した肉体的疲労が、ほとばしる “エモ” によって一気に吹き飛んだ。ドラムのTony氏がケガをしていて演奏曲が予定より少なかったとのことだけど、そんなこと微塵も感じさせない盛りあがりだった。

Downfall of Gaia(以下DoG)

高速部分でバンド全体がしっかり「走って」いるように聴こえた。クラストが下地となっているから、というのはあるだろう。そして、手数が多くなっても姿勢を崩さず、強弱をしっかりつけ、かつ爆撃のような音を放ち続けるアスリート型のドラムの貢献も大きいだろう。

ドラムとベースの土台に乗るのが、反響するトレモロギターのメロディと、それに3種の表情を与えるトリプルボーカル。他の音に巻き込まれずに上空で渦を巻くそれと、グオングオンと地響きのように鳴る低音成分は、太陽を遮り雷鳴を轟かせる暗雲と崩壊する地殻を思わせ、まさに「ダウンフォールオブガイア」そのものだった。

退出後にメンバーがギターアンプの電源を再度つけに来るなど、アンコールしたほうがいい雰囲気を漂わせていたのはちょっと笑ってしまった。とはいえ実際みなアンコールしたい気分だっただろう。心からの手拍子でメンバーが再登場、再演奏をして、この日は幕を閉じた。

Disrotted

2日目のオープニング。

単低音発生装置ドラム、持続型低音発生装置ギター、そこに獣じみた荒々しさを付与するボーカル。単純に低音をかますだけではなくて、振りおろす低音を軸にして、微妙に速度変化をつけたり、ドローンパートを設けたり、ギターがフィードバックノイズを駆使したり、声色を使い分けたり、あの手この手を使って低音の鮮度を落とさないままライブをやりきった。「気を失うのはまだ早いぜ」系拷問なのか。

14時開始ということもあって人は多くなかったけど、お客さんの反応が「とんでもないものを聴いてしまった」「なんて最高の昼下がりなんだ」みたいに分かれていて、真性ドゥーマー判定パッチ状態でおもしろかった。今回のナンバーワン地獄サウンド!

SeeK

むちゃくちゃヘヴィ。ギャリギャリとした音の弦楽器で鳴らされるメロディも、上体をゆさぶりながら叩かれ刻まれる低音も、筋肉がなければ出せない地声成分多めで生気あふれるボーカルも、ひとつひとつ輪郭がハッキリしており、それが組み合わさって全体として大きな「塊」となっている。圧倒的質量! それががんがん体にぶつかってくるのだから、最前列の女性たちもそれは頭を振りますわ。

途中で下手のかたが太いギターをピックを使わず弾いていることに気づいて「7弦ギター指弾き!?」と魅入ってしまったんだけど、あとあと聞いたら6弦ベースとのこと。私は弦の数も数えられないのか。

ベース的役割も果たすギターふくむDisrottedと、ギター的役割も果たすベースふくむSeeK。両者違う志向の重低音。観客を突き放すようなDisrottedが作った低音空間を観客を巻き込むようなSeeKが引き継ぎ、フェス2日目のオープニングを強烈なものとした。

■SeeK、Suguru Inomotoロングインタビュー – Guilty Forest

ghostlate

「八王子から来ました」というMCから始まったけれど、やはりアウェイだという認識だったのだろうか。それでも、暴れない低音とやや丸みを帯びた高音で、過剰なドンシャリの会場の音をうまくまとめあげ、自分たちの感情を最大限に発揮できる場を作りあげていた。

そしてその感情は、エモ。安定感のあるドラムとベースに、多重感のあるコードとメロディを駆使したギターが彩りと奥行きを加える。その構造を、裏声と地声の境を明確に行き来するボーカルが不安定にする。こうして演奏のうまさは衝動を阻まずその骨格となり、揺れるような感情が演奏に宿っていた。

そしてやはり “エモ”。自分たちの演奏に聞き入りながらゆったりと踊るベースkishimoto氏。マイクの配置にこだわりがあるsuzuki、tadaギター両氏(高位置および縦置き)。ここぞという場面で落ちる帽子。物販に行ったらメンバーがいなくて3LA水谷氏「あっ、代わりに受け取っておきますんで。あっ、値段は……」僕「ア…ア…」となっていたところに本人登場。”エモ”。(そろそろエモの濫用を嘆くひとが出てくる)

Years Passingのヘニング氏とその彼女っぽいひと(妖精)が最前列で身体を揺らしていた。メンバーのかたはヘニング氏のファンのようだったんだけど、やっぱり呼応するものがあるんだろうなあ。

低音でゆるんだ鼓膜に届く引き締まった演奏、そしてあふれ出る感情。ダウンチューニングからレギュラーチューニングへ。気持ちをあらたに中盤へ向かう。

isolate

弦楽器隊は黒々しい旋律をうねるように繰り出しているものの、スコココスコーンとぬけのいいスネアを響かせるドラムと、何よりボーカルのかたの具体性の高い煽り(「みんな金払って来てるんだろ!?盛りあがらねぇと損だろ!!」「あと2曲やります!あと2曲!!」など)を代表とする体育の成績5なノリがあって、全体として風通しのいいポジティヴな雰囲気になっていた。演奏の強度に裏打ちされたそのノリにあてられて、こちらも否応なしに身体が動く。

マイクを口にくわえての力の限り叫びは、曲の演奏とフィジカルの誇示、観客の煽りを兼ね備えていて、ハードコア凝縮のベストパフォーマンスだった。とてもかっこよかった。パクりたい!

あと、途中からベースのかたの動きが儀式めいてきて、最終的に何かに憑依されたかのようにベースをかきむしって(弦を、ではない)いて「とんでもないものを見てしまった」と衝撃を受けた。でも、どうやら今回に限ったことではない様子。

あふれ出る感情のghostlateからあふれ出る運動量のisolateへ。

■isolate、Andoロングインタビュー – Guilty Forest

THE DONOR

圧倒的フィジカル! 録音作品でも発揮されていたそれが、ライブ環境になったことでさらにさらに増強されていた。締まった低音圧を繰り出すリズム隊が誘発した上下動に、音域を行き来するギターフレーズが変化を加える。魅せるための筋肉と殴るための筋力を兼ね備えたハードコアサウンドに、場内は大いに盛りあがっていた。私も汗だくになった。

目鼻立ちがバッチリとしたドラムのRyuji氏がバッチリアイメイクをしていて、それはさながら魔眼の様相でかっこよかった。ヴ系好きとしては、脱メイクせずに、最終的に目が8つあるみたいな特殊メイクにまで行きついてもらえると嬉しい。

isolate→THE DONORという本ライブ屈指の筋力と運動を感じさせる流れで、残念ながら帰宅。

その後のTJLA

この日のYears Passingスパを経てのVampillia→DoG→TCCがまたすごかった様子。Vampilliaがハシゴ芸にTCCのボーカルを巻き込み、それに触発されたのか、彼らのライブは前日以上の暴れぶりだったとのこと。DoGもそんな両者に挟まれながらさらにいいライブを行ったらしい。

TJLAケミストリー

激情、黒い、騒がしい、アトモスフェリック、などの形容詞でまとめることはできるけれど、音楽ジャンル的に言えば、さらに地域的にも、それほど統一感があるメンツではなかった(来日バンド4つだけでも、住んでる場所も音の方向性もバラバラだ)。にもかかわらず、ここまでで触れたように、両日各バンドごとの繋がりと全体の流れを感じることができた

さらに、VampilliaとTCCの件、あるいはメタル化OVUMの件に顕著だけれど、各バンドの相互作用ないしフェスの雰囲気の作用というものを感じる場面が数あった

この2点だけでも、TJLA FESTが、海外バンド招聘以上の、かっこいいバンドを集めた以上の何かを残していったことがわかる。演奏側も観る側も、自分の「内」が組み込まれているひとつの流れのなかで「外」を感じることができた。こういうフェスが、アンダーグラウンドの裾野を広げ、将来の音楽の豊かな土壌を育むに違いない。そしてたぶん、諸先輩が過去にそうした機会を設けたことをきっかけとして、ここに集まったひとも多いんだろう。誰かの行動が誰かの行動を促す。そう、おれたちの “TJLA FEST” はまだ始まったばかりだ!

主催のTokyo Jupiter Records、LongLegsLongArms、出演バンドや関係スタッフのかたがた、来場者のかたがた、この記事に興味をもってくれたかたがたに、本当にありがとうの気持ち。楽しかったです。

http://tjlafest.com/TJLA FEST

公式サイトからのリンクで、他のかたのライブレポートや水谷氏のツアー日記も読めます。

リツイート用

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TJLA FEST ~うるさくて黒くて激情で “アトモスフェリック” な音楽好きにおすすめのアンダーグラウンドフェス

TJLA FEST

http://tjlafest.tumblr.com/TJLA FEST

欧・米・日の激情ハードコア・ブラッケンド・ポストメタル・ポストロック etc. 14組の有力バンドが一斉に集う アンダーグラウンド・シーンの祭典 「TJLA FEST 2015 (ティー・ジェル・エー・フェス)」
Tokyo Jupiter Records & LongLegLongArmsの共同プロデュースで開催決定!!

開催日: 11月14日(土)・15日(日) 場所: 新大久保EARTHDOM

一部音楽好きたちがその日を心待ちにしているフェスまであと1週間を切りました。情報をまとめました。出演バンドについて簡単な紹介もしました。(なお、本記事を書くにあたり各バンドやレーベルと何のやり取りもしていません。個人の勝手な宣伝です)

記事の流れ

まず出演バンドを出演順に試聴リンクつきで紹介していきます。

「そもそも激情ハードコアetc.って何なんだ」という方にこそ、試聴をしていただきたく。どうぞ。

その後主催であるふたつのレーベルについての情報を記していきます。

sekien

日本でネオクラストを自称する数少ないハードコアバンド。姫路拠点。過剰な叙情性と暑苦しいボーカルは、どこか人情や仁義といった泥臭さを感じさせます。演歌以降の土着感情+クラスト=ジャパニーズネオクラストということなのでしょうか。

初録音作品は売り切れなので、インタビューを読みながら次回作を待ちましょう。

ちなみに公式ホームページが魔法のiらんどです。インターネット黎明期!

after forever

千葉のカオティックハードコア/ヘヴィメタル。鋭く歪んだギターによるメロディと空中に吐くように叫ぶボーカルの感情を、フィジカルから逃げずに刻む重いリフとベース、芯の太いドラムが支えながら突進します。<ニュースクールハードコアとメロデスを足したようなバンドがやりたくて>結成されたバンドとのことで、なるほどメロデスにも通じるところがあります。

入手容易な作品は残念ながらありません。

3LAによるインタビューがあります。上記引用箇所もここからです。

STUBBORN FATHER

大阪のハードコア/エモバイオレンスバンド。コード使いやフレーズ、ボーカルの叫びに叙情性は感じるものの、メロディや展開においては、単純複雑、あらゆる方向での「安易さ」を避けているようで、それらが得体の知れない異形の感情を想起させます。

スプリット音源として下記のふたつが入手できます。他のバンドもふくめてどちらもすばらしいのでぜひどうぞ。

【2014年末に生み出された傑作split】Trikorona / Stubborn Father (split CD)

【日本大阪/USナッシュビル激情を繋ぐ4way split】Altar of Complaints / SeeK / Stubborn Father / Thetan (4way split 12″)

OVUM

東京のインストゥルメンタルロックバンド。感情を揺らすトレモロ轟音ギターを主軸としつつ、軽快なドラミングやファンキーなベースを交えることで地に足のついた憧憬を、変な拍子や展開を交えることで異物感のある陶酔を引き起こします。

現時点での最新作は2013年の『ascension』です。

また、World’s End Girlfriend (以下WEG)のVirgin Babylon Records (以下VBR) の5周年記念作品『ONE MINUTE OLDER』にも参加しています。

中心人物Norikazu Chiba氏へのOTOTOYによるインタビューはこちら。WEGの前田氏と自身の音楽に対する姿勢の違いの話はおもしろいです。

Years Passing


スウェーデンのギタリスト、ヘニング氏によるソロプロジェクト。場面ごとにギターを中心としたさまざまな表情の音が顔を出し絡み合いながら、全体としてはゆったりとした展開をしていく様は、複雑な感情を抱きながら一日をひとつひとつ終えていく個人を感じさせます。唄モノもあります。

TJRと契約し、20日に来日記念盤『In Japan』を出す予定です。TJLA FESTで先行販売。

Coffins

名門Relapseとも契約している、「日本より海外で人気」の悪くて怖いドゥーム/デスメタルバンド。OVUMとYears Passingが作り上げるであろう『昇天』感を一気に地獄へ叩き落す予感しかしません。フィジカルから逃げたら戦えない(ゾンビと)

The Caution Children

フロリダ州のスクリーモバンド。多くは語りません。これがエモであり “エモ” なのです。購入はTJRから。


Downfall of Gaia

ドイツのブラックメタル/ポストメタル/ネオクラストバンド。SLAYERやMETALLICAを見出したことで知られるMetal Bladeと昨年契約しており、最新作『Aeon Unveils the Thrones of Decay』は反響の効いた輪郭の曖昧なギターやブラスト中心のドラムが目立つ、ポストブラックメタルと呼ばれるものに近い音楽性になっています。水谷氏による「ネオクラストのネオの部分はクロスオーバーの探求心や実験精神」(TOKYO UNLEARNED Episode 37)を体現しています。

大売れしたDFHVNよろしくなのか、ヴィンセントギャロみたいな小奇麗なかんじもありますが、うってかわって音には黒い怨念が渦巻いてます。地球崩壊しろ。

3LAMarunouchi Muzik Magazineによる日本語インタビューがあります。

Disrotted

<僕たちはとてもラウドで、不快で、憂鬱にさせる、スロウなシカゴ・スタイルのドゥームメタルを君たちに約束します>)。約束されました。2日目の鈍重地獄枠です。

SeeK

大阪のダークハードコア/ポストメタルバンド。重さと暗さのなかにポストロック的な救済感もあった2007年『朽ちていく中で』でしたが、2013年『崇高な手』ではもう光は射してません。

展開は多めであるものの、ひとつひとつの場面の中でしっかりリフレインが入っています。また、各パートが、おのおのの重さに力を入れた音を、同じタイミングで振りおろしているのも特徴です。それらによって、曲展開時に場面が「切り替わった」という印象を与えず、変化のあるひとつの大きなうねりとして曲が機能しています。そしてそのうねりは、叙情性を持っています。

3LAでのインタビューもあります。

ghostlate

東京のスクリーモ/ポストハードコアバンド。ベースが作りあげる曲の骨格に、多分に叙情的なクリアトーンギターと突っかかるような刻みギター、その感情を支えるように叩きつけるドラムが乗ります。音と感情の両者で揺れの激しいサウンドですが、同時にバンドとしてのまとまりと足腰の強さも感じます。

【国産激情 2nd EP!!】paradigm shift / ghostlate (CD EP)

ISOLATE

東京のダークハードコアバンド。動画ではわかりませんが、録音作品ではかなり重い音を出しています。その重苦しい音に乗せて人間の欲をつづった2014年『ヒビノコト』を聴いて、我々はやはり「人間が憎い」と口に出すしかないのでしょうか。

かき鳴らされるギターの輪郭は明確ではないものの、ドラムの1音1音から重低残響音が発生しているかのような曲作りがされているので、同様のギター音を使うポストブラックメタルなどと比較すると全体の結束感、肉感が高いです。歯切れの良い音の乗せかたをするボーカルもここに寄与しているでしょう。こうして欲と肉が同居し、醜い人間が描き出されるわけです。

インタビューを読むと完全に曲先行だということですが、上記の点や、一定のコードやスケールのみを使う作曲法による作品全体の音色の統一感から、『ヒビノコト』という表題と歌詞が、高いレベルで曲の印象と合致していると思います。

THE DONOR

金沢のハードコア/パンク/メタルバンド。

多くのひとが賞賛した2014年『Agony』。RelapseやDeathwish Inc.あたりのバンドと殴りあってKO勝ちできそうな圧倒的なフィジカルを持っています。ドラムとベースがどっしりとした、近年の音圧競争でも殴り勝ちできるような音圧を持つ低音基盤を作っていることで、ギターがあらぬ高音にすっ飛んでいったりしてもその肉感を損なうことはありません。そして、奔放に低音と高音を行き来してさまざまな表情を見せるギターは、肉体に、単なるジャンルのクロスオーバー以上の躍動感を付与しています。

3LAによるインタビューはこちら。

【金沢発,世界標準のMetallic/Hardcore】Agony / The Donor (CD)

Vampillia

ポップとアンダーグラウンドをつなげる奇跡のハシゴ(直喩)。VBRという影響力のあるレーベルに身を置き、名の知れたミュージシャンともコラボする存在ながら、今回のフェスのようなアンダーグラウンドな場にも頻繁に顔を出している守備範囲の広さに敬意を表したいです。いつか夏フェスにTHE BODYと参加してシャボン玉と花冠とまぶしい日差しを銃弾と肉塊とモンゴロイドと男の娘で染めあげてください。

OVUMとVampilliaというVBR関係のバンドが2つ参加していることに、何か起きて欲しいという期待があります。

来日バンドは他の公演もあるよ

来日バンドはTJLA FEST以外にもライブをやります。すでに終わってしまったものもありますが、日程はこちらでご確認ください。Downfall of GaiaとDisrottedは西のほうにも行きます。日本のバンドも強烈です。

LongLegsLongArms (3LA)

http://longlegsarms.xsrv.jp/index.phpLongLegsLongArms Distribution -3LA-

今回のイベントの主催。<日本のネオクラスト界のドン>(TOKYO UNLEARNED Episode 36より)こと水谷暁人氏が運営するレーベル兼ディストロ(レコード店)。ネオクラストや激情ハードコアを代表とする、感情が爆発するような音楽を主に取り扱っています。

ディストロとしての側面は、音楽サイトGrumble Monsterでのインタビューが詳しいです。

http://grumblemonster.com/column/interview_3la-2/LongLegsLongArms distro(3LA) – interview

重要だと思っているのはその音源やバンド、そしてシーンがこの壮大なパンク・ハードコアの歴史の中で、どのような立ち位置にあるのだろう?という疑問です。シーン全体がビックリマン神話体系だとしたら、バンドや音源はあのチョコのおまけシールのようなもの、つまりこの壮大な物語にアクセスする鍵となります。

加えて、インターネットラジオ「TOKYO UNLEARNED」では、レーベルの考え方などを語っています。

http://tokyo.unlearned.fm/post/129677996787/episode-36-20150923-interview-with-mizutanilongTOKYO UNLEARNED — Episode 36 20150923 Interview with Mizutani(Long…

レーベルとしてはスペインのネオクラストバンドICTUS『Complete Discography / Ictus』の発売において、いちはやくクラウドファウンディング的な手法を用い、そして成功を収めています。

レーベル事業、レコード店事業ともに、音楽への真摯な態度と見識の深さ(および二郎への愛に基づいた音源選択によって、日本の一部音楽オタクを大いに喜ばせていますが、そうした彼の人間性とそれへの信頼がその成功を支えたことは言うまでもないでしょう。

海外バンドの招聘ではHEXISの衝撃が記憶に新しいです。そのときの話は氏がまとめています。個人を主としたDIYツアー、そして音楽を通した異文化交流に対する実感や葛藤がつづられており、おもしろいです。

https://medium.com/hexis-japan-tourHexis Japan Tour – Medium

Tokyo Jupiter Records

http://tokyojupiterrecords.com/TOKYO JUPITER RECORDS

今回のイベントの主催。Tokyo Jupiter Records(以下TJR)はKimi氏による<世界各地に散りばめられたまだ光の当たっていない激情ハードコア/ポストロック系バンドを中心に探り当て、リリースを手掛けているレーベル>です。ということで、またも音楽サイトGrumble Monsterのインタビューに詳しいです。(音楽サイト的には “Grumble Monster (Takuya Ito) フェス” 色もあることがわかります)

http://grumblemonster.com/column/column_tjp/Tokyo Jupiter Recordsの核心に迫る | Grumble Monster

言葉にはできない繊細な部分にあたるのですが、社会性・建前・処世術が要求される現代社会においても、決して取り繕うことのない、剥き出しのハートの部分を包み隠さず投げかけることのできるアーティストは、表現者と受け手の相互理解の実現においてこれ以上とない可能性を秘めていると思いますし、そういった部分をそれぞれの音楽性の中で表現できる・大切にしているアーティスト達を率先してサポートしていきたいと考えています。

これまでのリリースのうち、もっとも名のあるバンドはAmenraでしょうか。NEUROSISのメンバーが設立したNeurot Recordingsは、2013年に彼らと契約しています。そしてその2年まえに、TJRが『Mass III-IIII Japan limited edition』をリリースしている事実は、当レーベルの信頼できる審美眼を示しているでしょう。

また、海外で単独フェスTOKYO JUPITER FESTを開いたりと、ライブシーンでの活動も行っています。

TOKYO JUPITER Compilation II

はるまげ堂

http://www.obliteration.jp/OBLITERATION/ はるまげ堂 デスメタル グラインド ブラックメタル スラッシュメタル ドゥームメタル DEATH, GRIND, BLACK, THRASH, DOOM, GORE and all extreme here. Stay Underground!!

主催ではありませんが、デス、グラインド、ブラック、スラッシュ、ドゥームなどなどを扱うレーベルOBLITERATION RECORDSの通販部門はるまげ堂が両日出店するようです。今回のイベントではCoffinsやDisrottedと関わりが深いです。

主催者メッセージ

http://3lanakanohito.blogspot.jp/2015/07/tjla-fest.htmlTJLA FESTのお知らせ – 臨時ブログです

TJLA FESTは国内外の良質な激情HC、ポストメタル、ブラッケンド、ネオクラスト、強烈なシンパシーや興奮を覚える音楽を、実体験できる場を築きたいという試みです。

http://longlegsarms.xsrv.jp/index.php?main_page=document_general_info&products_id=1635br/Downfall of Gaia Japan Tour、そしてTJLA FEST 2015が始まります。

自分たちだけ上がりたいんじゃない。
自分の好きなレーベル、バンド、リスナー、全員で上がりたいんだ。
俺たちが好きな音楽をしっかり根ざした形で定着させていきたい。
そういう思いでやってます。

以上まとめました

14日15日は池袋他楽しいイベント盛りだくさんですが、お近くのかたはぜひTJLA FESTにも。私も行きます。

あらためて、詳細はこちら

リツイート用

FED1st

FAR EAST DIZAIN「Cry My Name From The Light」が完全にジェントルメンのソレでざわつく紳士淑女たち。

ヴィジュアル系初の本格派 Djent バンド

いよいよ本格派ヴィジュアル系 Djent バンド = Vjent バンドが登場しました。元 CodeRebirth や 元 DELUHIのメンバーのバンド FAR EAST DIZAINです。

これまでも Djent っぽいことをやっているバンドはいました。DIR EN GREY が『THE UNRAVELING』で若干それっぽいことをやっていますし、ギルガメッシュも Djent という言葉を使っています。少しまえにはヴィジュアル系ジェントコアなるバンド JILUKA も話題になりました。ただいずれも、要素としては Djent 的なところはあるものの、全体としては異なる文脈にあるようなかんじです(DIR はプログ/デスドゥーム、ギルガメッシュはピコリーモ、JILUKA は最近のヴィジュアル系メタルコアの範疇)。また、海外では GaidjinN というバンドがいますが、これはちょっと例外でしょう。

JILUKA / Twisted Pain (PV full)

(とはいえ1曲目のインストは完全に Djent なので、もっとそれっぽくやろうとおもえばできるんだとおもいます)

Djent ってなに?

擬音としての Djent とジャンルとしての Djent があります。

擬音としての Djent は、低いチューニングあるいは多弦ギターによる低音の刻み(ジェンッ! ジェンッ!)を表現しています。

ジャンルとしての Djent は、定型化すると「擬音としての Djent+(一定打ちシンバル+)シンコペーションや変拍子などの変なリズムを主体とした複雑な展開」です。音作りは輪郭がはっきりしたモダンなもので、ボーカルはシャウトとエモい歌を使いわけることが多いです。浮遊感や煌めきのある雰囲気を持つバンドが目立ちます。(もちろん、それなりの規模を持つジャンルなので、ここから外れるバンドも多いです)

Periphery – Icarus Lives!

(ヴィジュアル系で言えば「ROSIER」みたいな位置の曲。ギルガメッシュ「INCOMPLETE」はこの曲にかなり影響を受けているとおもわれます)

MESHUGGAH を発端とし、SikThなどを経て、PERIPHERY、ANIMAL AS LEADERS(以下AAL)といったバンドが出てきたあたりで形づくられたというのが Wikipedia 的認識です。それらのバンドやファンは、ジェントルメン/ウーメン、紳士淑女などと言われたりします。ダジャレです。また、涅槃で蠢くような音を出すデスメタルバンドの MESHUGGAH と比べて、どこか知的な印象を与えることに対する、一部のメタルファンからの揶揄でもあるでしょう。(耽美系を好きなひとがオサレ系を嫌うようなものです)

MESHUGGAH – New Millenium Cyanide Christ (OFFICIAL MUSIC VIDEO)

「Cry My Name From The Light」に見る Djent さ

「Cry My Name From The Light」はまさにうえで挙げた特徴を持っています。そして、Djent 的にはかなり練度の高い、あるいは “近い” レベルの曲です。既存の Djent 曲で言えば PERIPHERY「Make Total Destroy」に類するでしょうか。また、 AAL にも多大な影響を受けているのでしょう。2分40秒ころからのギターソロの奏法は、その立ち居振る舞いが “紳士” を体現している AAL の Tosin Abasi氏そのものです。

Periphery – Make Total Destroy (Official Music Video)

Animals as Leaders – “CAFO” | Music 2011 | SXSW

ギターヘッドから手元を映すやつも見るやつだ!なんだったら Matt Halpern 氏のウンコが半分出てるような切ない顔も真似していいんだよ!

Vjent の発生

Djent は音作りやリズムに強い特徴がありますが、メロディはそれほどではありません。彼らはそのメロディをヴィジュアル系的なものに置き換え、さらにジャンル特有のドライブ感を付与することで、十分にヴィジュアル系的でありかつ十分に Djent である、すなわち Vjent を作りあげています。ヴィジュアル系的な部分は既存の Djent シーンにはあまりなく、本作には独自性が感じられます。今後の一層の活躍に胸が躍ります。

さて、Vjent の発生は突然変異的なものではなく、当然の時代の流れと考えられます。

00年代以降にヴィジュアル系が参照してきたメタルのジャンル、ないし参照した結果近づいたメタルのジャンルは、グルーヴ/ニューメタルとメロデス~メタルコアです。また、そういう風潮を作った本山である DIR EN GREY は OPETH もお気に入りにあげています。

グルーヴ/ニューメタルは、ヒップホップなどのリズムを取り入れた重低音を特徴としています。また、メタルコアにはブレイクダウンやビートダウン、チャグといった、重低音で刻む様式があります。ヴィジュアル系で言えば、前者はthe GazettEなどで、後者は最近のムックなどで聴けます。

このあたりの用語に関しては、以下のサイトに詳しいです。

http://romanticnobita.blogspot.jp/2012/03/rnr-talk-session-001-chug.htmlRNR Talk Session 001: Chug (チャグ)談義 その① – チャグの発祥を探る-

OPETH はプログレッシヴデスメタルというジャンルでもっとも有名なバンドのひとつです。グロウルやメタリックなリフを駆使しながら、アコースティック楽器や変な拍も用いて、壮大な長尺曲を演奏します。DIR EN GREY では「VINUSHUKA」などに大きな影響が見られます。

Opeth – Ghost of Perdition (Audio)

(『Blackwater Park』と並ぶ超重要盤)

重低音とリズムを特徴とするグルーヴ/ニューメタルおよびメタルコアと、複雑なリズムやアレンジを用いるプログメタルは、海外でのDjent を生む土壌となっていたと思われます(PERIPHERYのメンバーはSLIPKNOTOPETHをお気に入りのバンドに挙げています)。海外のモダンなメタルの流行がニューメタル→メタルコア/デスコア→ピコリーモ/ジェントと移ってきたことも考えあわせれば、似たような変遷を遂げている日本のヴィジュアル系で Djent バンドが生まれるのは、インターネットで世界の情報がたやすく手に入るような現代においては、なるほど自然ともいえる流れでしょう。

Vjent は普及しない

ヴィジュアル系と Djent は、音楽的には相性がよいです。ただし、今後ヴィジュアル系ジェントバンドが増えるかというと、そうおいそれとはいかないでしょう。

一番の壁は演奏技術です。00年代以前にヘタクソヘタクソと言われた反動からか、最近のヴィジュアル系は演奏技術も編集技術もかなり向上しています。とくにその垢抜けた音作りは Djent とも相性がいいです。

一方で演奏技術にはやや問題があります。たしかに速度のある刻みやグロウル、正統派メタル的なピロピロは(少なくとも編集音源上では)海外メタル水準に近づいてきていますが、Djent に特徴的な複雑な曲展開には、それとは異なるプログ的な意味での力が要求されます。海外メタルシーンには DREAM THEATER から脈々と続くプログパワーが充填していたためか、若手も一斉に続きましたが、ヴィジュアル系シーンにはそうしたプログ的な意味での強い象徴的存在がいません。そのため、おそらくはその手の演奏能力は、シーンとしてまだあまり根付いていないと考えられます。したがって、雨のあとのタケノコのように、もといディルのあとのガゼサディのようにニョキニョキと似たようなバンドが出てくることはないでしょう。

もちろん、演奏できないことを逆手にとったゴールデンボンバー方式のジェントバンドも、このジャンルは動きが “エモ” いので、おもしろそうといえばおもしろそうですが……。

日本の Djent バンド

ここで、ヴィジュアル系ではない日本の Djentバンドを見てみましょう。

国産ジェントについては、3年前の記事ですが、mossgreen氏によるまとめがあります。

http://masterofslach.blog114.fc2.com/blog-entry-365.html願わくば 背中合わせに 音楽を。【旧館】 : 国産Djentを探そうキャンペーン

世界的にも Djent は宅録色/ソロ色/オタク色が強いジャンルです。2013年には『Djent多難 状態:難あり』という同人コンピレーションが出ているように、日本ではバンド界以上に同人/宅録界で人気なのかもしれません。ニコニコ動画や Soundcloud を探せば Djent をやっている/やっていた宅録ミュージシャンは多く見つかると思われます。たとえば BABYMETAL の Djent 曲「悪夢の輪舞曲」はボカロP出身のゆよゆっぺ氏の作曲です(※彼女らは別の文脈がありすぎるので今回は紳士的に言及しません)。ただしそうした活動形態のひとたちは、その性質上、大手ロック/メタルメディアでは取り上げられにくく、メタルファンのあいだでの認知度は高くないと思われます。

一方、現在作品を残す程度の、あるいはインターネットで適当に検索してヒットする程度の積極的な、知名度が出る活動をしている Djent 要素が強いバンドは、先の記事で出た CYCLAMEN と SAILING BEFORE THE WIND、2014年にファーストアルバムを出したabstractsなどです。あとは 7YEARS TO MIDNIGHTもそれっぽいところがあります。HAMMERHEAD SHARK は解散してしまいました。

Cyclamen – “Departure” Live Music Video


(歌詞のテーマといい歌メロや歌い方の†エモ†さといい、ヴィジュアル系と親和性が高いと一部でささやかれる CYCLAMENさん)

こうして国内でも増えつつある Djent 的なバンドたちに、ある程度商業的に成立するジャンルであるヴィジュアル系にいて、赤坂 BLITZ をソールドさせる人気だった DELUHI のメンバーが立ちあげたバンドである FAR EAST DIZAIN が加わることになります。他バンドを参照することに対するヴィジュアル系の無垢さがゆえか、個人的な感覚ではうえに挙げたどのバンドよりもより “いわゆる Djent” 然としている彼らが、国内での Djent の認知と普及に寄与するのではないかという期待はあります。

DELUHI / Departure

(この曲もギターの音は Djent)

国内メタルシーンの期待の星

海外ではすでに Djent は最先端というわけではありません。これまでの多くの流行ジャンルでそうだったように、一部のひとたちからは唾を吐かれる事態にまでなっています。そして Djent シーンの中心を成したバンドや新世代のバンドは、すでに次の段階へ進もうとしているところです。

とはいえ、やはりこうしたバンドが出てきたことは喜ぶべきことです。重要なのは国内に Djent シーンができることそれ自体ではなく、そのジャンルが広く認知され、多くのバンドが自然にその要素を使えるようになることです。どれかひとつのジャンルによってあるバンドやシーンが固定されてしまう、というのはその発展にはあまり良くないでしょう。彼らだって、アルバムに先立って発売された EP を聴けばわかるように、Djent だけをやっているだけではありませんし、今後ヴィジュアル系という割と何でもありなジャンルで、どんどん特異な音楽性を築いていくに違いありません。その中で、国内メタルシーンにも影響を与えてもらえるのであれば、こんなに楽しいことはありません。

そうした作用を起こすためには、やはりライブでの交流なのでしょうか。

ヴィジュアル系のライブはファン層が限定される傾向はあるものの、最近ではムックや MERRY、Lynch. 、NoGoD、摩天楼オペラなど多くのバンドが他ジャンルのバンドと一緒にライブをしています。Plastic Treeが ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015 の PARK STAGE のトリを務めたりと、大きな舞台でもそうした傾向は見えます。

FAR EAST DIZAIN も積極的にヴィジュアル系外のバンドと対バンし、Tシャツマッチョとオタクメガネが跋扈するテックシーンを チャラオイチャラオイwww とかき乱して対抗心を燃え上がらせ切磋琢磨し、ひいては国内メタルの先鋭化と活性化に貢献して欲しいところです。そしてアイドルと激ロッ系に奪われた「うるさい音楽フェスの集客要員」という立ち位置を、再びヴィジュアル系の手に取り戻して パ ウ ド ラ ー ク 2 0 1 6 してください。

もちろん、それは机上の空論じみた険しい道だとおもいます。ヴィジュアル系外のみならず、一部のヴィジュアル系ファンからも冷たい視線は受けるでしょう。というわけで日本全国のオタク紳士淑女のみなさまは、苦難の道を進む彼らを応援すべく、あと単純にライブも楽しそうなのでぜひライブに足を運んで、私といっしょにバンギャルから好奇の目で見られましょう。また、この作品からジェントふくむプログ・マスメタルに興味を持つひとが増えてくれればそれも良しです。

ちなみに 1st ONEMAN LIVE は売り切れです。うっ、わざわざでしゃばらなくても当然のように人気だった!

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