ユナイト『NEW CLASSIC』:ヴィジュアル系ファンクロック~ネオ・オサレ系爆誕~

化粧をした男前は好きですか。私は好きです。最近は好きすぎて「Madmans Espritのギュホになりたい…… いや、ワシはもうすでにギュホや!!」と狂人の精神でもってグッズを買いあさっています。

さて、日本がほこるヴィジュアル系屈指の「お顔キレイ……」集団ことユナイトが、2018年に『NEW CLASSIC』を発売しました。これがほんとうにすばらしいので、レビューしていきます。

合言葉は「funky!!!」

本作はひとことでいうとヴィジュアル系ファンクロックです。ほんとうです。

  • 「funky!!!」という小曲からはじまる(でもなぜかEDM)
  • 表題曲「-ハロミュージック-」は素人の私が聞いても「ああ、ファンキーですね」とわかるほどファンキー

「-ハロミュージック-」のファンキーっぷりは笑ってしまうほどで、チャカチャカとしたカッティングやワウの効いたギターワーク、うねるスラップベースはもちろん、コーラスで「ウ-ッフ- ファンキ-(裏声)」といっています。そのまんますぎる。

「funky!!!」といってもいろいろあるわけすが、カバーアートでミラーボールをドーン!と使っているので、たぶんディスコ・ファンクなんだとおもいます。

さて、ヴィジュアル系とファンクは、あるいはファンクロックまでいっても、遠い存在です。Googleで「ヴィジュアル系 ファンク」で検索してもろくな情報がありません。もちろん、雑食性と長い歴史をみていけば、ファンク要素を取り込んだ曲はたくさんでてくるでしょう。ユナイトのもつポップな側面の文脈でいえば、アンティック-珈琲店-の「現代ソルジャーなう」はけっこうファンキーです。が、8-bitも混じっているため、彼らの音楽のカラフルさのうちのひとつに収まっています。

全体としては、その雑食性がゆえに、ヴィジュアル系のファンクな面というのはそれほど気にされずにきたようです。それを明確に打ち出してきた本作は、それだけでも注目です。

『NEW CLASSIC』に込められた意思

その音楽的な物珍しさにくわえ、もうひとつ注目したいのが『NEW CLASSIC』というタイトルです。

「“STAR” だとか “CLASSIC” とか、これを基準になるぐらいの作品にしたい」という思いはあったと思うので。

つまり「今までのユナイトとは、またちょっと違った一面を表に出してみようの会」が発足したわけです。

*

つまり「新しい側面を打ち出していこう」という明確な意思があります。

前述のとおり、ユナイトにかぎらず、ヴィジュアル系はファンクとは縁遠いジャンルでした。彼らがDanger Crue Recordsという大手レーベル所属ということもあって、本作がヴィジュアル系ファンクロックという「░▒▓新しいクラシック▓▒░」となるのはまちがいないでしょう。

日本のファンク影響下ロックのなかでの『NEW CLASSIC』

ヴィジュアル系ではなく、もうすこし広く、日本のポップスでみれば、ファンク要素というのは珍しいものではありません。70年代までさかのぼらずとも、ユナイトと近い、2010年代以降の広義のロックというところだと、BRADIO、ゲスの極み乙女の「私以外私じゃないの」、あるいはSuchmosの「STAY TUNE」などがファンク影響下でしょうか。

しかし、それらのバンドとはあきらかに違う特徴をユナイトはもっています。それは「チャラさ」です。

チャラ! 激チャラ!!

頭空っぽのほうが夢つめこめるではありませんが、SuchmosにもうGood Nightされてしまいそうな享楽的な雰囲気は、私が全盛期なら「再会の血と薔薇!!!」といいながら異能力「マリス・ミゼル」を発現し、この空間をゴシック聖堂に変えていたところです。

しかしこの「チャラさ」はまったく否定的なものではなく、むしろそれこそが、ほかのファンク影響下ロックバンドにはないオリジナリティなのです

BRADIOの漢臭い熱さでもなく、ゲスの極み乙女のすまし感でもなく、Suchmosのクールなスタイリッシュ感でもなく、「チャラい」。

チャラさ=親しみやすさ+おふざけ

この「チャラさ」の正体のひとつは、もちろん見た目もあるのですが、サウンドでいえば「親しみやすさ」です

「親しみやすさ」の要因として、サウンドのいい感じの力の抜け具体があります。まず、ドラムが軽々としている。リラックスした叩きかたを基本姿勢としながら、適切にオカズを入れたり力を込めたりするドラミングで、聴いてるほうもメリハリの効いたノリを楽しめます。ドラマーの莎奈はフル尺を聴いたときにあ、ドラム簡単そうだな、レコーディング楽そうだ(*)とおもったそうです。たしかに前作のガチャ重低音ロックとくらべたら、速度・手数的には楽でしょう。しかし同時にとにかく、簡単とは言いましたけど、ドラムロールの精度や種類には色々と考えながら叩きました。(*)ともいっています。譜面の再現、という点に手をさかなかったぶん、表現がいつもより洗練されたということでしょう。

そのドラムが醸すリラックスした雰囲気にのるボーカル。カッチリ声をつくりこみながら、力みのない息配分多めが基本の歌からは、イケメンが薄っすら微笑みながらこちらに手を差し伸べている光景がありありと浮かびます。君もこっち来なよ(イケボ)。ハイ……(赤面)想像不可避。

土台と主役がこうしてウェルカムな雰囲気を醸しているなか、それじゃあギターとベースはなにをやっているのかというと、それが「チャラさ」のもうひとつの要素「おふざけ」です

おふざけといっても実際にふざけているわけではありません。めちゃくちゃテクニック駆使してます。そして、重低音過剰バンドをやっていただけあるギターの力の入ったカッティングや、ゴリゴリと中低域を鳴らすベースは、ふいにその存在を主張してきて、リラックスした雰囲気を一気にパーリーなノリにします。途中のコールアンドレスポンス風パートも「目立ちたがり同士の目立ち対決」感があります。そうだよね、落ち着いた正統派お顔キレイ氏の横にはだいたいちょっとワル入った親友がいるもんね……私知ってるんだ……グイグイくるんだ……

とまあこういう感じで、ノリのよさがスーッと耳に入ってくる、ソファに座ってても踊っててもどちらでもウェルカムな、とても居心地がよいサウンドとなっているのです。高音がまろやかなで全体的にやわらかい音質も雰囲気にあってる。

多様なサウンドを「funky!!!」の名のもとに統一

「-ハロミュージック-」以外はここまで極端ではなく、たとえば「ubique」や「ナユタの秘密」は、ファンキーというには激しすぎる高速カッティング曲です。「五月已」は三連符三拍子のミュゼット風。「ノゾキアナ?」はスカ・ハードコア。「Romantic☆Trampoline」は作曲者本人がスキップ推奨という遊び曲ですが「-ハロミュージック-」の余韻を楽しむような内容でグッド。「隕石系スタジオパンダ」はYunomi、YUC’eと未来茶レコードのふたりの名前がでてくるように、フューチャーベース以降の和風Kawaiiサウンド&EDM。限定盤のみ収録ですが「good night」はアーバンな雰囲気のするこじゃれ曲。

その他の曲もふくめて、いちおうカッティングを軸にしたコード感やリズムにファンキーというテーマは感じられるものの、曲調としては多様で、さらにユナイトは初期からカッティングを得意としており、インタビューでも言及しているとおり過去にはファンク風の曲をやっていることもあって、全体としてはこれまでの彼らの音楽性の軸はそのままに「funky!!!」を目指したように感じます

これでもし1曲目が「funky!!!」でなかったら。もし「-ハロミュージック-」が表題曲でなかったら。本作のファンクさは、その多様なサウンドのなかに埋もれていたかもしれません。そういう点で、アルバムとしての意味がある作品となっています。

べつな見方をすると、これだけ多様な曲たちを「funky!!!」のひとことでエイヤッ!とまとめたのが本作ともいえます。厳密なファンクにこだわったわけではないことは、念頭にあったのはハロプロのファンク曲だったということ、「オシャレな感じで、ヴィジュアルシーンでは珍しい楽曲が揃ったらな」と思って選んでいった感じです(*)のひとことからもうかがえます。「funky!!!」は音楽性を拡張するための手段であって、目的ではないのです。

そういうアバウトさで作品を作っても、全体としてはファンキーがテーマとわかり、そして彼ららしい、という印象を持たせるほど、彼らの懐は深いのでしょう。

ネオ・オサレ系爆誕

オシャレという言葉がでてきましたが、この言葉をキーにして本作を聴くと、なるほどこれは「オサレ系の再定義」、すなわち「ネオ・オサレ系」の誕生としての側面も持っているようです。

オサレ系とは、もともとがスラングなのでがっちりした定義はないですが、以下のような特徴をもったバンドを指しています。

  • カラフルだったりカジュアルだったり、ポップな衣装
  • 歌謡曲的な切ないメロディ、明るくポップな曲調、シャッフル
  • 「I for You」ではなく「大好き」

ゴリゴリに化粧はしてるし衣装もふつうのロックバンドのソレではないけど、それまでのヴィジュアル系の耽美的・退廃的な雰囲気から外れたカジュアル/ポップな要素、ととらえられます。ある意味では当時のヴィジュアル系へのカウンターだったといえます。

エナメルの服を着て針金のような眉毛で「ウタカタノ…夢?」していたコテコテヴィジュアル系のファン、というか当時の私のオサレ系に対する気持ちをおもいだすと、反発心と戸惑いが、オシャレではなくオサレという言葉に、やけにフィットしていたのを覚えています。そして何より「チャラい」。そうたしかに「チャラい」と感じていました。「親しみやすさ」と「おふざけ」。振り付けと着ぐるみ……

そしてユナイトの「-ハロミュージック-」をみた多くの硬派な音楽ファンが抱いた「お顔キレイなひとたちがパーティしてる……」という感情は、おそらく私が当時オサレ系に抱いた感情とそう遠くないのではないかとおもいます。大丈夫怖くないこっちへおいで。

「チャラさ」を抜きにしても、ユナイトは、当時のオサレ系要素を色濃く受け継いでいます。しかし、その技術力とサウンドは「オサレ」と呼ぶには洗練されすぎています。そんなネクスト・オサレ世代の彼らが本気で「オシャレ」を追及したのが本作であり、その「オシャレ」にいままでにない「funky!!!」をすえ、そして実際に上述したオサレ系の特徴を正統に洗練させたような内容になっており、じゃあそれを「ネオ・オサレ系」と呼ばずして一体なんと呼ぶのでしょうか???!!!!

クラシックのその後楽しみです

さて、オサレ系はそのわかりやすさ、目新しさから流行しました。そして、廃れました。廃れましたが「オサレ的なもの」は、現代のヴィジュアル系まで根強く残っています。00年代以後頭角をあらわしたネオヴィジュアル系のうち、アンティック-珈琲店-はオサレ系ですし、ガゼット(当時)、ナイトメア(当時)、アリス九號.(当時)は、オサレ系の要素をもったコテコテのヴィジュアル系=コテオサ系と呼ばれていました。それぞれ音楽性は変わったものの、どこかオサっぽさは残っています。オサレ系はジャンルとしては廃れましたが、要素としては根深いのです。(このオサレ系的なものが90年代と00年代以降の断絶の要因のひとつな気がするのですが、今回は置いておきます)

さすがにこれほどの変革を『NEW CLASSIC』が起こすには、シーンが拡散しすぎています。それでも、本作が彼ら自身のクラシックとして、つぎの作品の足掛かりになるのはたしかです。

本作でのウェルカムな雰囲気は、彼らがもともともっていたものとはいえ、それ以外のシリアスさや攻撃性を削って拡張されたものです。この変化は、彼らにしても覚悟と信念があったものだということがインタビューのふしぶしから伝わってきます。

その想いを下地に、ヴィジュアル系っぽくないオシャレな音を「funky!!!」の名のもとにひとつにする懐の広さで、さらにオサレな音楽性へ拡張していくのか。それとも今作でみせたファンクやフューチャーベースの要素を深めていくのか。あるいは両方なのか。いずれにしても、ヴィジュアル系という枠が広がっていくはずで、今後も有り難く拝聴します。

しかし、2018年に、ファンクにこだわり本格ファンクを目指したENDRECHERIが『HYBRID FUNK』という題のアルバムをだし、アバウトな「funky!!!」という概念でユナイトが『NEW CLASSIC』という題のアルバムをだし、なんだか音楽って、ほんとうにおもしろいですね。

最後に一句

そして なにより 顔がいい

ただ、シングルの「ジュピタ」が、曲自体はかっこよいのですが「funky!!!」という視点からは浮いてる点がちょっとアレで、収録しないとか、ボーナス扱いにするとか、あるいはもういっそ完全に別バージョンにしてしまうとかだと、さらにアルバムが完璧だったのにな~~~とはおもいました。

*: 【インタビュー】ユナイト『NEW CLASSIC』|TuneGate.me

SLH Family

「-ハロミュージック-」で踊っているのは、SHARE LOCK HOMESというプロのダンスユニットと、そのFamilyのようです。ニコニコ動画とも縁深いようです。こういう交流、なんかいいですね。ヴィジュアル系とダンスというところで、なんとなく浮気者をおもいだしましたうそですほんとは生即苦です……

めちゃかっこいいすね~~

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