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THOM YORKEの『Tomorrow’s Modern Boxes』を買って気になったこと(速度とか違法ダウンロードとか)

░▒▓新しいトムヨーク▓▒░

9月27日の日本時間深夜、THOM YORKEが新作『Tomorrow’s Modern Boxes』を発表しました。販売方法が少々特殊で、BitTorrent Bundleというサービスを利用しています

Pitchforkに掲載されている彼のメッセージが、下記記事にていち早く邦訳されています。

http://forevernevermore.hatenablog.com/entry/2014/09/27/013557Tomorrow's Modern Boxes. – いまここでどこでもない

これはBitTorrentのメカニズムが一般人に理解できる代物かどうかを試す実験だ。

ということのようです。

DREAM THEATERのコレ以来ひさびさにtorrentを引っ張り出して来て早速利用してみました。

実際に買ってみた

支払いはPayPalとクレジットカードが使えます。購入後、拡張子torrentのファイルがダウンロードできるようになりました。それを専用のソフトで読み込むと、torrentファイルに記載されているファイルのダウンロードが開始されます。ここでは例としてμTorrentを使ってみましょう。

torrentファイル読み込み

torrentファイル読み込み

こんな感じ。ダウンロード先を指定してOKを押して待つだけの簡単なお仕事です。

操作自体は簡単

torrentのダウンロード以降の流れは非常にスムーズです。インターネットや音楽ファイルの管理に慣れた人であれば何の問題もないでしょう

ただし、iTunes(と何人かの知人)におんぶ抱っこで元ファイルの場所もよくわかっていないような人になると話は別です。(1)新しい謎のソフトの導入が必要、(2)新しい謎のソフトでダウンロードしたあといつもの音楽再生ソフトへの移行が必要というこの2点が、パソコンに疎い人たちを遠ざける大きな要因になることは間違いありません

iTunesが日本でもそこそこ普及しているのは、「CD取り込み」というただ1つの操作を覚えれば一応使えるというその簡単さが関係しているんじゃないでしょうか。実際、それ以上のことを要求するとめんどくさがる人に何回か出会っています。

そういう意味で<BitTorrentのメカニズムが一般人に理解できる代物かどうかを試す実験>という発言は、それ以上の意味が含まれてはいるものの、なるほど彼らしい上から目線だなあ、とものすごく腑に落ちます。

また、購入にクレジットカードが必要というのは高校生や未成年にありがたくない話です。

BitTorrentのメカニズム

BitTorrentは「たくさんの人たちがちょっとずつダウンロードのために協力しあう」という特徴があります。現在進行でダウンロードしている人がいればいるほど、あるいはダウンロードしたあと他人のダウンロードのためにソフトを起動しっぱなしにしてくれる人がいればいるほど、ダウンロードは速くなります。

iTunesなどはAppleがファイルを提供していて、たくさんダウンロードされればそれだけApple側に負担がかかります。だからこそ<サーバーへのアップロード費用>が要求されるわけです。それがBitTorrentであれば、ダウンロードする人それぞれがサーバー機能を果たすため、どこかの誰かにサーバー費用を払わなくてもよくなります。また、ダウンロードされればされるほどサーバー機能を果たす人が増えるため、ダウンロード数肥大による負担の増大もあまり気にする必要もありません。理論上は。たぶん……。

今回、私の他にダウンロード協力者が最大で40名少々いました。貢献度のやたら高い人(下り速度300kb/sくらい)とその他大勢(下り速度10kb/s)という感じで、約200MBのファイルをダウンロードし終えるのに10分少々の時間がかかりました。Bandcampで同じくらいのサイズのファイルをダウンロードすると2~3分で終わることを考えると、決して速いとは言えないでしょう。現在光回線でネットに繋いでいますが、WiMAXを使っていたときはBandcampで50分くらいかかっていたので、BitTorrentではそれ以上かかると予想されます。

それでは、知名度のあまりないミュージシャンではどうでしょうか。BitTorrent Bundleのサイトで、ダウンロード数が50くらいの作品で試してみたところ、ダウンロード協力者はAmazonS3という人のみで、速度は10kb/s程度。単純に考えると200MBの作品をダウンロードし終えるのに5時間程度かかることになります。このAmazonS3はあのAmazonなのかはわかりませんが、もし彼がいなければダウンロードは不可能になります。お金を払って誰かに配信を依頼していない分、誰かが配信に協力していないとダウンロードができないというのはTorrentのひとつの欠点です。「完璧なファイルを持ってダウンロードに協力している人がいないと全員に中途半端なファイルしか行き渡らない」というの残念な結果も起こり得ます。これを回避するにはミュージシャン本人がファイルアップロード者として常にtorrentクライアントを起動していなければなりません。結構負担です。(もしBitTorrentがAmazonにそうした役割を依頼しているとすれば、今後何かしらの料金が発生する可能性もあります)

Thomや、既に配信をしているDEATH GRIPSなどの著名なミュージシャンであればアップロード協力者も多いでしょうし、それほど不自由なく利用できると思います。また、その存在が巨大になるにしたがって増えるであろうサーバー代の節約にもなるでしょう。しかし、数いる独立系ミュージシャンの場合、この先BitTorrentが普及したとしても不便である可能性が高いです。それほど好きでもないミュージシャンのために、誰がTorrentを常に起動して自らの帯域を捧げてくれるのでしょうか?素直にBandcampや他のサービスを利用したほうが良い気がします。

違法ダウンロード対策は?

torrentは違法ダウンロードによく利用されます。今回の形式で、合法的にダウンロードされたTorrentファイルと違法にダウンロードされたTorrentファイルは、どのように判断されるのでしょうか。元となるTorrentファイルは不正に入手されたとはいえ、そのファイルそのものは正規のもので、しかも実際にダウンロードするファイルは合法にアップロードされたものという、ダウンロードプロセスには何ら違法性がない以上、従来の「違法にアップロードされたファイルをTorrentでダウンロードする」よりもたやすく実行されそうな気がします。

とはいえ、さすがにこの辺を対策していないことはないでしょう。そのうち調べてみようかと思います。

BitTorrentは新風を巻き起こすか?

個々人がダウンロードのために協力しあうというサービスの特徴は、確かに<サーバーへのアップロードも費用も「クラウドシステム」なんて出鱈目も必要ない>かもしれません。しかしやはりその分欠点もあります。そしてその欠点は、サーバーへのアップロード費用を少しでもケチりたい多くのアマチュアミュージシャンたち、あるいはもしかしたら少しでも自らの音楽から次の活動費用を捻出したいミュージシャンたちにとって致命的なものかもしれません

とはいえ、今回の件でBitTorrentの知名度が上がることは、このサービスの可能性を見極める上で非常に有用でしょう。もちろん、単に新しいサービスを使った、というだけなので「商業主義からの脱却だ!」「オレは○○ドル払ったぜ(シタリ)」「金払ったほうがえらいのかよ」「音楽の金銭的価値を下げた」と阿鼻叫喚が繰り広げられたRADIOHEADの『In Rainbows』ほど話題にはならなさそうですが、とはいえ私はカオス寄りニュートラルなので、こういう既存のやり方を変えるような行動はとりあえずどんどんやっていってくれ、と考えています。良いものは残るでしょうし、悪いものは淘汰されるでしょう。その良い悪いが、リスナーではなく売り手側基準では、あるかもしれませんが。

たとえその先に破滅があったとしても、また僕たちで新しい世界を作ればいいよね?

あと、ただBitTorrentを使うってだけじゃなくて、そのことに対して話題性を高めるために突然発表するってところが、こいつやっぱ人心掌握してんなって感じです。蜘蛛の意図に貪りつく人の群れを横目に!

試聴と購入

http://tomorrowsmodernboxes.com/Thom Yorke – Tomorrow’s Modern Boxes

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Albumcover

BLUT AUS NORD / P.H.O.B.O.S.『Triunity』:プレゼント当選、そしてハシャぐ。

BLUT AUS NORD

2011年の『777 – Sect(s)』から始まった連作のひとまずの終点である『777 – Cosmosophy』で、その表題の通り中心人物Vindsvalの内面哲学宇宙に旅立ってしまい、グロウルを捨て、疾走を捨て、「なんじゃこりゃ」と良い意味でも悪い意味でも言われた彼らだが、本作ではそこで得た真理-スリーセブンス-を現世の肉体でもって存分に発揮している

いつもの通り、彼ら特有の呪術感や近年如実になってきた内的世界――そしてそれはVindsvalという名の”宇宙”でもある――への言及は十分に表現されている。それはあのグネグネとしながら幾層にもなって不定形に空間を蠢くギターや、定位を中央におかず左右から囁きかけるダミ声、浮遊感のあるコーラス、そしていかにも「宇宙してます」なシンセによって成されている。

今回は、そこに肉体性が加わる。最も目立つ変化がドラムだろう。乾き気味の拡散するような音から一転、ドシッと芯の通った内に篭る音になった。ツーバスによる押し引きや随所で目立つ跳ねやオカズもあって、ドラミングに非常に人間味を感じる。屋台骨のそうした肉感を補強するように、ベースもかなり意欲的な低音を出しているし、GODFLESHばりにミュートで刻むギターも聴ける。

収録された3曲はいずれも終始ブラストなしのミドルテンポであり、そういう意味では『777 – Cosmosophy』の延長線上にあると言える。ただし、どちらかというと非メタル的な、アトモスフェリックという意味でのその速度感だった当該作に対し、今回は上述の音の方向性によって、完全にドゥームメタルとしての説得力を持っていることは特筆すべきだろう。そのドゥームメタル的力強さと、これまで磨いてきた「考える人のメタル」=ポストメタル的空間性が合わさって、結果としてJESUのような”質量を持った神性”を放つに至っているのだ

あまりにも精神的過ぎてある程度その方面への感性を持っていないと知覚できなかったVindsvalの”宇宙”。それを、ブラックメタルバンドであった彼らが、グロウルやブラストを排してドゥーム的力強さで具象化した、というのは興味深い。この事実は同じフランスの哲学系ブラックメタルのDEATHSPELL OMEGAがあくまでブラックメタルというまな板の上でデスやらプログレやら果てはカオティックハードコアやらも取り込んで足し算的にアヴァンギャルドな世界を形成し「激しい音楽だいしゅき」な御仁を満足させているのとは好対照な例として考えられるだろう。10月10日に来る新作『Memoria Vetusta III – Saturnian Poetry』にも期待したい。

P.H.O.B.O.S.

スクラップ工場を思い起こさせる無機質な打ち込みドラムに執拗に同じフレーズを反復するギターやベースを以ってミニマルという言葉を思い浮かべるひとは多いだろうし、私も最初そのような印象だった。しかしながら、同時にどうも何か違うようにも思えて仕方がなかった。それは、実は、それぞれの楽器がそれぞれでその役割を果たしていないからではないか。

ドラムは反復を演出するにはフレーズに変化がありすぎるし、反復するギターも繰り返しの気持ち良さを発揮するには空間に拡散しすぎている。そして何より、語りに近いダミ声ボーカルが曲に意味を与えすぎている。反復によって朦朧とした頭があるからこそもたらされる身体的な心地よさが言葉によって妨害されてしまうのだ。

あるいはGODFLESHのように重低音に焦点を当てるにしても、ギターは音が不明瞭すぎるし、ドラムは徹底的に無機的すぎる。それぞれの楽器のアンサンブルという点もあまり意識されていないような曲構成、音作りだ。ドローン的に聴こうとしても、ベシャっとした音で不規則に打たれるドラムが邪魔をする。

そう、何というかこの手の音楽の文脈に乗せようとすると、どこかで必ず破綻するのだ。そして、それこそが彼らの魅力なのである。ジャンルの上にありながらも、音楽的な心地よさをこれでもかと拒否し、嫌がらせのように気持ち悪い音がただただ鳴り響く空間。収録された3曲それぞれで異なる音作りがされていて曲単位での変化を感じることや、2008年の『Anœdipal』や2012年の『Atonal Hypermnesia』が本作よりもギターが目立つ、NADJAを髣髴とさせる高品質なシューゲイズ/ドゥームサウンドになっていることを考えると、サウンドプロダクション能力は高い言えるだろう。そしてそのことが、インダストリアルドゥームというそもそも対象を選ぶ内容の音楽を、さらに限定的な代物にしてしまった業の深さをより浮き彫りにしている。要素で見るとGODFLESHや近年のBLUT AUS NORDに近いものがあるのだが、こっちのほうが決定的にアンダーグラウンドだ。だからこそ逆に、我々のような一部の好事家に対してはとてつもない破壊力を発揮するのである。

ちなみに彼らはBLUT AUS NORDを「blackness audio masters」と評している(※2013年12月時点の公式サイトにて。現在は確認できず)。となると今回の3曲とも収録時間が(ほぼ)7分であることは、BLUT AUS NORDの777シリーズへのオマージュなのかもしれない。

試聴と購入

†アレ†

ちなみに本作はDebemur Morti Productions日本支部のプレゼント企画にてゲットしました。なんと本来ならLPとCDをセットで買わないともらえない†アレ†付きです。というわけで以下†アレ†の素晴らしさを伝えていきたいとおもいます。

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包装された†アレ†。

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解放された†アレ†。

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12インチLPがちょうど入る大きさの†アレ†。(LPが『Triunity』じゃなくてすみませんという気持ちはあります。ちなみに†コレ†

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†アレ†装着時イメージ。

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お気に入りのレザージャケットを着ての外出中、急にジャンバラヤが食べたくなった……。

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そんなときにもエプロンとして役に立つ†アレ†。

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急な匿名性も確保できる†アレ†最高!HEEELLLL YEEEAAAAAHHHHH!

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ちなみにCDはこんな感じです。ディスクの裏面が黒い!〆印がかっこいい!

Debemur Morti Productionsの宣伝

Debemur Morti Productions略してDMPは、ブラックメタルを中心としつつ一風変わったメタル作品も取り扱っている優良レーベルです。日本支部の公式サイトは日本支部なのに英語記載というストイックぶりですが、ツイッターは安心のジャパニーズオンリーなのでぜひフォローしてみてください。

https://sites.google.com/site/dmpjapan/homeDebemur Morti Productions: Japan Support


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