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「海外からの評価が高い」日本のバンドって女性多くね?からの「海外」信仰の話。

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海外から評価が高い日本の音楽

世界中のアンダーグラウンド/インディ音楽を取り扱う多人数参加型ブログであるHi-Hi-Whoopeeの記事が話題になっています。

http://hihiwhoopee.tumblr.com/post/84917795128/column-japanese-experimental-musicHi-Hi-Whoopee – COLUMN: “Japanese Experimental Music”の現在地

非ポップス系の邦ミュージシャンを紹介する内容ですが、以下のような文章がありました。

「海外からの評価が高い日本の音楽」的な枕詞で上記のミュージシャンの名前は頻繁にあげられる。現に、海外の音楽マニアは一般的な日本人より、よっぽど日本のコアな音楽を掘っているし、そして、その構造を日本人が逆輸入(勿論それが全てという訳でなく)する形で、彼らの名声を確固たるものとして築いてきた。そして、この辺の話は腐るほど語られてきた訳で。

この「腐るほど」のうち、直近で話題になったのが2chの以下のスレです。

http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1395850902/?id=Mg7WV583w4chをよく覗くおれが海外の音楽ヲタに評価されてる日本のバンドあげてく

バンドと言っておきながらCOURNELIUSやトクマルシューゴを紹介したり、本拠地が日本ではないASOBI SEKSUを取り上げたりとかなり怪しいですが、挙げられているバンドは大体他のこの手の記事と似通っているのでひとまず参考にしましょう。

ここで挙げられた15組の中でバンド形態になっているのが11組。そのうち8組に女性メンバーがいて、さらに表立ったポジションにいます

女性メンバーがいるバンド

あふりらんぽ:全員女性
ASOBI SEKSU:Yuki Chikudate(ボーカル他)
BOREDOMS:Yoshimi P-we(ボーカル他)
BORIS:Wata(ギター)
BUFFALO DAUGHTERS:シュガー吉永(ギター)、大野由美子(ベース)
MELT-BANANA:Yako(ボーカル)
少年ナイフ:全員女性
The 5.6.7.8′s:全員女性

男性メンバーのみのバンド

裸のラリーズ
ACID MOTHERS TEMPLE
FLOWER TRAVELLIN’ BAND

世の中のアンダーグラウンド系バンドを見渡せば、この比率は偶然にしては多いんじゃないかしら?というのがこの記事の発端です。以下、日本人女性という記号にまとを絞っていつものようにあれこれ言っていきます。というとやたら怒り出すひとがいるので当たり前のことをわざわざ先に言っておきますが、「音楽的に認められている」のは当然の前提条件として考えてください。

記号としての日本人女性

女性の少ない界隈で女性が“女性”として取り扱われるのは――その是非についてはひとまず置いといて――よくある話ですが、それが“異国人”でもあれば、なおさらわかりやすい属性になるでしょう。

では、欧米人にとって日本人女性はどういった特徴を持っているのでしょう。日本人は欧米人に比べて低身長痩せ型で肌つやが良く、顔が平坦なため幼く見えるという話があります。

http://www.madameriri.com/2013/04/24/%E3%81%AA%E3%81%9C%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AF%E9%AD%85%E5%8A%9B%E7%9A%84%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%8B%EF%BC%9F-%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E7%94%B7%E6%80%A7%E3%81%8B%E3%82%89/なぜ日本人女性は魅力的なのか? 外国人男性から見た7つの理由

欧米人にしてみれば、少年ナイフやあふりらんぽにおいては「幼い(見た目の)女性が自分好みの音楽を演奏している」という、音楽マニアが妄想をこじらせた末に作成したMANGAかANIMEのような自体が実際に起こっているわけです。そういう意味で彼女たちの存在は『けいおん!』やヴィジュアル系に近いのかもしれません(すげえ怒られそうなこと言いましたよ)

ともあれ、欧米の音楽リスナーの一部が上述のバンドに“日本人女性”――それは “ロリータ”に近い意味も持つ――という記号を感じていること、そしてそれが海外での評価に繋がっている可能性はそれほど低くはないでしょう。英語版WikipediaのBOREDOMSの項目で、中心人物の山塚アイではなくYoshimiの写真が掲載されていることからもそのあたりは読み取れますし、ASOBI SEKSUのYukiは下記のように語っています

――ユキさんはインタビューで、日本のことを聞かれるのは嫌いと言っていますが、日本人であることを全面に出すと、そこばかり突っ込まれるんですか?

ユキ インタビューで音楽の話を聞いてくれなくなるから。白人の男の人によく言われるのは、私のことはただの飾りだって。ジェームスは誰でもいいからジャパニーズ・シンガ-を探してたんだろ?って。学校で会って友達としてずっとやってきたのに。

「白人の男の人」のなかには、ジャパニーズ(ガール)シンガーというアイコンをYukiというミュージシャン個人より先立たせる人々がいて、それに反発するようにそういうことに対しての皮肉を言う人物が「よく言われる」と感じられる程度にはいるということです。

であれば、ですよ。本来なら“本格派”という意味で使われる「海外からの評価が高い日本の音楽」という言葉は、女性メンバーが表立っているバンドにおいては、実は本格派とは相反するアイコン性を含むという事態になります。見た目や年齢、やっている音楽や立ち回りといった複合的な要因から日本では意識されないアイコンとしての女性性が、その見た目の特異性が際立つ欧米だからこそ注目され、その結果生まれた親しみやすさ、導入部における敷居の低さが評価にも表れているというわけです。

日本でのCHVRCHESの人気にはLauren Mayberryの容姿が絡んでいることは疑いようもないですし、BABYMETALが海外で大成功した要因のひとつとして彼女たちが“BABY”だという点はあるでしょう。そこに「海外からの評価が高い日本の音楽」が加わったとしたら……。人が異性の異性的部分に注目してしまうのは、日本だろうが欧米だろうが、ポップスだろうがアンダーグラウンドだろうが、変わらないっていうことなんじゃないでしょうか。人類皆平等。

神秘性の体現者としての日本人女性

欧米人から見た日本人女性の魅力を語った先の記事には、神秘的といった言葉も見られます。異国情緒を感じる見慣れない容姿と聞き慣れない言葉という“得体の知れなさ”が、音源やライブパフォーマンスにも日本人女性特有の神秘性をもたらしても何ら不思議ではありません。そしてその神秘性が、欧米の音楽ファンに特異なものとして受け入れられている可能性は高いです。

もちろんそうした得体の知れなさは日本人男性にも言えますが、何となく女性のほうが神秘的じゃないですか。この感覚には理由があります。まず、音楽とライブパフォーマンスという単語からシャーマンを思い起こしてください。シャーマンには脱魂型(自分が超自然界に「行く」)と憑依型(超自然的存在が向こうから「来る」)がありますが、憑依型には女性が多いそうです。

http://www.kisc.meiji.ac.jp/~hirukawa/anthropology/theme/religion/religion_text.htmHirukawa Laboratory – 宗教と宗教的職能者

ライブ演奏中のミュージシャンにおける神秘性は、演者そのものが神性をまとうという点で「来る」タイプのシャーマンのそれに近いでしょう。であれば、日本人女性のパフォーマンスに神秘性を感じて男性には感じないというのは歴史的にある程度妥当性があるということになります。なります?

「日本人女性」のほうが商品として売り出しやすい

上記の理由もあって、日本人女性がいたほうがプロモーションしやすいんじゃないでしょうか。プロモーション大事。

Thurston Mooreはガールズバンドがお好き

SONIC YOUTH。『Daydream Nation』が名盤として知られる、アンダーグラウンドロック界の重要バンドです。その中心人物であるのThurston Mooreは少年ナイフの海外ツアーでサポートを務めたり、あふりらんぽを自身のバンドの前座として招聘したりしています。冒頭の記事にも書かれていますが、最近では、ZZZ’sというガールズバンドを2012年のお気に入りに挙げていました。要するにオルタナティヴ/ガレージロックをやる日本のガールズバンドが好きなんでしょう。

天下のSONIC YOUTHのメンバーがオススメしたとあれば、欧米のリスナーはそりゃあ食いつくでしょう。

それでは日本ではどうでしょうか。「海外からの評価が高い日本の音楽」には大概「日本より海外で評価されている」という意味がくっついています。もし欧米と日本でのSONIC YOUTHの扱いに差があるとすれば、彼らに対する評価の格差が、そのままThurston Mooreが推薦しているバンドの知名度の差に繋がっていると考えて良いでしょう。

ただし、Amazonのレビュー数を比較する限りでは、現在の欧米と日本のロックファンのあいだでそれほどSONIC YOUTHの知名度に差があるようには見えません。レビュー総数こそ欧米と比べて日本では少ないですが、それは他のバンドや作品でも同じです。もしSONIC YOUTHの知名度が洋邦で差がないとすれば、日本人はThurston Mooreが推薦している、という情報に重要性を感じないか、SONIC YOUTHの先にまでアンテナを張っていない(あるいはメディアが取り上げない)かになります。

SONIC YOUTHの知名度が日本で低いとすれば「SONIC YOUTHも知らねぇのか」で、高いとすれば「どうして好きなバンドから音楽を掘り下げていかないのか」で、いずれにせよ、ステレオタイプ的な「最近の日本の音楽ファン」に対するテンプレ的な批判に繋がっていくのがやらしいところです。

欧米と日本の情報格差とその縮小

かつての「日本より海外で評価されている」の「評価」には、実際の評価の他に、知名度という意味もありました。少年ナイフやBOREDOMSなどが活動をし始めた80年代は、海外の音楽情報を得ようとするとそれなりの苦労が要りました。一般のリスナーは、その“それなりの苦労”をした限られた人物から情報を得るしかなかった。だから、海外と日本での情報には大きな格差があり、音楽好きに絞ってみても、日本より海外で有名な音楽というのが成立しました。

しかし2000年も中盤を超えたくらいから、インターネットが広く普及し、海外と日本の音楽情報の格差はどんどん少なくなっていきました。いまでは翻訳サービスを駆使すれば中高生でも海外メディアから情報を得られます。そんな状況で、初めから海外を拠点に活動しているようなバンドは別として、「日本でのみ知名度が低い」なんてことはあまり考えられません。いや、そりゃあ絶対的な「知っているひとの数」で言えばそういう事実はあるでしょう。しかしそれはそもそも音楽好きな人物という母体が少ないというだけで、そのジャンルの音楽が好きな人物に限って言えば、今回取り上げたような「海外からの評価が高い日本の音楽」は当然知っていると思います。知らないとしたら、それは過ごしている時代が違うというだけでしょう。この世代格差の問題はまた別の機会に語るとして、よしんば「日本より海外で知られている」状態があったとしても、今やSNSであっという間に拡散されて一瞬でその状態は解消されてしまうんじゃないでしょうか。

つまり現在の「日本より海外で評価されている」の「評価」は、実質的に本当に本当の意味での評価でしかなくなったことになります。

ヴェイパーウェーブブームを牽引したHi-Hi-Whoopeeの長は21歳で、ユニバーサルミュージック所属のポストスヌーザーWEB音楽誌AMPの編集長も20代。インディ音楽WEBサイト界で頭角を表しているUNCANNYなんかも大学生が運営しています。アヴァンギャルド/エクスペリメンタル界の巨匠大友良英が国営放送でノイズミュージックをかけまくるようなこの国で、彼らはもちろん、彼らの音楽観に刺激されて毎日を過ごしているいまの日本の若いリスナーは、少ないながらも確実に「海外」に肉薄した情報量と感性を付けてきていると言っていいでしょう。であれば、もはや「日本より海外で評価されている」というのは、地域の好み程度の意味しかないんではないでしょうか。

それでも多くの音楽好きが、「海外」という言葉をありがたがり、紹介された瞬間に消える「日本より海外で評価されている」という要素に飛びつくのは、この言葉の魔力を考えれば当然と言えます。海外で評価されているという“本格派”の音楽を「自分だけが知っている」という幻想に浸り音楽メイニアとしての自尊心を満たす。ネットの普及でキリがなくなった個々人の音楽知識の増大。その中で「音楽に詳しい」というアイデンティティを保つのは非常に難しいです。そこにふっと現れるオエイシス。それが「(日本より)海外で評価されている音楽」なのです。

そういう欲求があるからこそ、売る側もこの魔性の言葉を使って宣伝を繰り返すのでしょう。なるほど確かに聴き手を惹きつけるのに便利な言葉です。ただ、私がツーイッタで幾何学模様を紹介したときにカッコ書きでこの言葉を使ったのは、このグローバルでグローカルな血塗れのインターネッツ世界で、もはや欧米とか日本とかどっちで人気かとかあんまり意味ないし、その段階で留まらず判断しなよヘイ!ということだったのです。

いや、欧米と日本の差を無視しろというわけではありません。その差を考えて見えてくることはたくさんあるでしょう。そして、聴き手の欧米コンプレックスが創作の原動力となって、日本の音楽の発展に貢献してきた可能性も否定できません。とはいえ、上述のように日本と欧米という差がそれほど重要ではなくなってきている昨今、さすがに次の段階へ進んでいきたいのです。洋楽コンプレックスを刺激する宣伝や、それに乗っかって自尊心を満たす行為は、個々人の楽しみという点では全く問題ないにしろ、これからの日本の音楽の発展にはあまり意味がないと考えるのです。「海外」=“本格派”を目指すような音楽ファンなのであれば、そうした喧伝に惑わされない、もっと本格的な本格派になって欲しいのです。すなわち、なぜ海外で盛んに聴かれているのかにまで踏み込んで、その考察をもとに日本のリスナーに働きかけるような、Hi-Hi-Whoopeeのサイト運営者のようなかたにです。なぜならそうしたリスナーの増加は日本全体の音楽感性を上げることになり、後世のプレイヤーの成長にも繋がるからです。そしてそれは、私の、そして皆さんの「生涯の1曲」を生み出す肥沃な土壌と成りうるからです

持続可能な農業ならぬ持続可能な音楽。サステイナブルミュージック。これが当ブログの2014年度のテーマです。いま決めました。多くのひとがリスナーから音楽生活を始めることを考えれば、次の世代のリスナーを正しく導くことは、日々消費される音楽を末永い文化にしていくために必要なことです。

おまけ:日本より〇〇で人気のバンド紹介

カンの良い方は私が「海外」の代わりに「欧米」という言葉を使っていたことにお気づきでしょう。そう、韓国やインドネシアで人気と言っても音楽メイニアの自尊心は満たされないのです(一部の変態を除く)。しかし、日本や欧米以外にもすばらしい音楽家はたくさんいます。どの国でどういう音楽が人気なのかに目を向けることは、どの国からどういう音楽が生まれやすいかという判断にも繋がり、音楽鑑賞生活の手助けとなりますし、あと単純に楽しいです。というわけで今回は私が知っている欧米と日本以外で人気の日本のミュージシャンを紹介します。

越中 睦士

MAKOTOはタイで人気を誇っており、たびたび訪問してライブ等の活動を行っている(その人気はプミポン国王の三女チュラポーンもΛucifer時代からのファンを公言するほどである)。(Wikipedia「Λucifer」ページより

元Λucifer、現†яi¢кのボーカリストである氏のタイでの人気っぷりはこちらの記事でも伺えます。

日本では認知度が低かったルシファーですが、好きな日本人は?という質問に必ず出てくる名前「MAKOTO」。実物もかっこいいですねぇ。

てめー!当時カラオケに行ったらみんな競うように「堕天使BLUE」歌ってたっつうのー!ヒステリックな唇で!

diskatlo

日本のお耽美ブラッケンドスラッジドゥームメタルバンドです。何を隠そう私のバンドです。WEBでバンド名検索しても私の発言しか引っかからないという哀しき状態ですが、なぜかロシアで紹介されてちょっとだけ評価されてます。お願い聴いて。そして宣伝して。(でもワールドワイドウェブで宣伝や口コミをお願いするのは絶対やっちゃダメって誰かがゆってました)

わかります、わかります。これは違う、というみなさんの心、ご察しいたします。それならばこの程度の情報しか持っていない哀れな私の代わりに、日本と欧米以外でナゾの人気を誇る日本のミュージッシャンをどしどし紹介してください。そういうのすげえ好きなのですげえ喜びます。

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