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THE BODY『I Shall Die Here』は何とも収まりのよい作品だった

えっ!?THE HAXAN CLOAKがTHE BODYのプロデュースを!?

と、暗黒ミュージック界隈を雑然と追い続けるものたちを驚かせた今年2月の発表から2か月。ついにTHE BODYの『I Shall Die Here』がRVNGレーベルから発売されました。あの首つり縄が厭世のザ・ボディにかかってしまったら断末魔のガチョウ声はどうなってしまうの……。

FACTのインタビューによると、RVNGのMatt氏が二組を引き合わせたようです。それでは、彼らはお互いにどのような印象を持っているのでしょうか。

THE HAXAN CLOAK→THE BODY

前作『Christ, Redeemers』を聴いた感想が<I thought it was fucking amazing, so brutal. It appealed to a lot of my older metal sensibilities.(むちゃくちゃヤバいと思いました。ほんとブルータル。メタラーとしての感性をすごく刺激されました。)と、かなり誉めてます。THE HAXAN CLOAK(以下THC)ことKrlicは、人生で初めて行ったライブがSLAYERとPANTERA、MACHINE HEADが出演するもので、自身もメタルバンドを組んでいたという結構マジなメタラーだったようで、<I think there’s a lot of metal around at the moment that’s pretty safe, rehashing a lot of shit that has been done many times before.(今のメタル界って、焼き直しのクソみたいな、軟弱なやつばっかだと思ってますよ)とベテランメタルミュージシャンばりに現在のメタル界に苦言を呈しています。こわい。

THE BODY→THE HAXAN CLOAK

ピッチフォークの『Excavation』のレビューで知ったとのこと。直接THE HAXAN CLOAKの作品について誉めてはいませんが、SKINNY PUPPYやインダストリアルミュージックの名前を挙げたり、ドラマーなのに生ドラムよりドラムマシーンのほうが好きだとかひねくれたことも言ったりして「ぼくは電子音楽も聴くよ」アピールをしています。確かにインダストリアルについては彼らの音楽にも表れていますね。

というわけで、相互にそれぞれの音楽に対してある程度の理解があったことがわかります。また、人間嫌いのTHE BODYのオッサンですら今回のリミックスに肯定的な反応をしています。当事者間では、かなり有意義なコラボレーションになったようです

I Shall Die Here

以上の点をふまえて本作を聴くと、なるほどまったく違和感のない音になっています。たとえば#1「To Carry the Seeds of Death Within Me」。この曲はTHE BODYがドジャァ~~~ンといつものドゥームやったあとにTHCのエレクトロニックパートが顔を出す曲ですが、両者が持つ音の暗さとTHE BODYのもともとのインダストリアル感、そして何よりKrlicの手腕とメタルへの敬意によって、THCパートがアウトロとして違和感なく流れていきます。もちろん、THE BODYパートでもドラムが細切れになるなどのエレクトロニック要素はあるものの、同様の理由によりTHE BODY感を損なわないアレンジになっています。また、Pitchforkで先行配信されていた#4「Hail To Thee, Everlasting Pain」は、前半THCパートにTHE BODYの例の声が乗って、後半いつものTHE BODYパートになる曲です。「THCの打ち込みにあの声乗せたらヤバいんじゃね?」という誰しもが考えることが忠実に実行されています。

そう、作品全体として、何というか違和感もなく、滑らかで、予想を裏切らない形に仕上がっています。なので、最初に彼ら――ドゥーム界の人間嫌いとエレクトロ界期待の新人黒魔術師が合作すると発表を受けたときに感じたあの驚きからすると、ずいぶんと小奇麗な印象を受けてしまいました

いや、もちろん#5「Our Souls Were Clean」などは、THE HAXAN CLOAKがうまくTHE BODYのノイジーな部分を取り込みながら、ギターを契機にして徐々に激しさを増し、最終的に狂ったようなTHE BODYパートに移行する、MASSIVE ATTACKの「Angel」を思わせる名曲ではあります。ありますが、作品全体としてはやはりまとまりがある。逸脱しない。

これは当然と言えば当然です。本作はTHE BODY名義の作品。Krlicはあくまでリミックス担当です。また、Krlicは上述のように元メタラーで、THE BODYの作品に対しての評価も高いです。彼らから提出された素材を自らの領域に持ってきて料理するのではなく、敬意を込めて”メタル”として仕上げる、というのもうなづけます。

本作はTHE BODYの新作、ないし企画盤としては充分満足のいく内容でしょう。あるいはTHE HAXAN CLOAKの仕事のひとつとして「暗い!重い!うるさい!ヤバい!」と喜ぶひとも大勢出るでしょう。ただ、THE BODYとTHE HAXAN CLOAKという、メタル界とエレクトロ界でも優秀な重暗さを持った二組の合作に驚き、心待ちにしていたものとしては、何とも収まりのよい作品になってしまったなあ、と思うのでした。

Song of Sarin, The Brave

THE BODYは「Song of Sarin, The Brave」なんて曲で、麻原彰晃の声をサンプリングして「Oh, my beautiful Sarin the brave.」とか歌うクズです。そういうクズをPitchforkっていう大手メディアが持ち上げて、あまつさえオシャレな服まで着せて、色んなひとが賞賛するっていう今の状況。悪いって言ってるわけじゃないですよ。ただ、皆さんどう思うんでしょうか。「芸術作品と芸術家の性格」問題についてあまり考えたことがないひとは、これを機会にちょっと考えてみてはどうでしょうか。