こちらに移転しました。以後、記事はそちらで更新します。また、こちらは数か月を目途に非公開にし、過去記事は移転先に転載いたします。

BABYMETAL『BABYMETAL』is アイドルメタルエクストリィィーーム!

BABYMETAL-BABYMETAL

YUIMETAL「メタル!」

BABYMETALは3人組のティーンエイジアイドルユニットだ。その名の通り、メタルをコンセプトにしている。彼女らは、ただメタル演奏にティーンエイジの声をのせただけでも、アイドルポップスをメタル風味に味付けしただけでもない。メタル演奏とアイドルポップスを高次元で融合させている。

彼女たちの“メタル”は幅広い。それでもひとつ音楽的に近似しているジャンルを強いてあげるとすれば、エレクトロ要素+ブレイクダウンの多用+メロディアスな歌という意味で若手メタルコアーーそしてそれはしばしばメタラーからメタルではないとされるーーだろう。硬質でモダンな音で繰り出されるゴリゴリのリフに電子音やメロディアスな歌が絡む形は2000年代中後半からメタルコアで大流行し、近年日本でもCROSSFAITHやSiMを筆頭として人気が高まっているジャンルだ。そういう意味でBABYMETALの音はメタルの流行をしっかりと押さえている。

SiM – WHO’S NEXT (OFFICIAL VIDEO)

流行と言う点では、「完全にジェント」として話題になった#11「悪夢の輪舞曲」も見逃せないだろう(ジェントには原義的なジェントとANIMALS AS LEADERS以降の“ジェントルマン”があるが、ここでは後者の意味)。2010年にPERIPHERYがメタルコア的なジェントの使い方を披露してからというもの、その技法は世界中に広がった。昨年のPERIPHERY来日もあり、日本国内でもジェント熱が高まっている。

Periphery – Icarus Lives!

しかし、先に述べたように、彼女らの“メタル”は幅広く、そうした流行だけに留まらない。例えば多くの非メタル日本人が“ヘビメタ”の代表格として思い浮かべるだろうX JAPANの代表曲「紅」への明確なオマージュである#5「紅月-アカツキ-」や、メタル様式美がたっぷりと詰まった#13「イジメ、ダメ、ゼッタイ」は、流行と言うよりもむしろ懐古に近い。他にも#7「おねだり大作戦」はラップメタルだし、#8「4の歌」のリフは完全にMETALLICAだし、#10「Catch me if you can」はモロSLIPKNOTだ。さらに#1「BABYMETAL」は、ほぼインストの序曲とはいえ、容赦ない重低音リフとツーバスはブルータルデスメタルに近い感触を持っている。こうなるとエレクトロ要素の強い#4「いいね!」もロシアあたりのインダストリアルメタルと近しいものを感じてしまう。

さすがにブラックメタルやポストメタルは見られないものの、本作の楽曲の幅広さはメタルの歴史に根ざしており、まさにメタルアーカイブスとでも言いたくなる様相だ。最初にメタルコアに近い部分があると言ったが、こういう具合に全体に散りばめられたわかりやすいメタル要素を考えれば、彼女らがメタルコアよりもメタル然としているのは当然だろう。

通常のメタルバンドであれば、これほどバラバラの音楽性を詰め込んでしまうとその統一感のなさが浮かび上がってしまう。にもかかわらず、彼女らのアルバムでは通してまとまりが感じられるのは、その編曲の巧さももちろんながら、やはり“アイドル”という属性による。メタル村の中から見れば、ジェントやピコメタル、“ヘビメタ”やスラッシュメタルは近い音楽ではない。しかしながら“アイドル”という離れた視点から見れば、それらは“メタル”という大きな枠組みに落ち着くのである。

外側から見た“メタル”という視点によって感じられるメタルの歴史は、彼女らの音楽制作陣の背後にあるメタル観が間違いなく“本物”であることを示す。これだけ曲の影響元が明白だと通常ならパクりだオリジナリティ皆無だと糾弾されてもおかしくはないが、その本物のメタル観がそうした考えをたやすく“メタル愛によるオマージュ”へと変える。さらに、さくら学院というバックボーンを持ったBABYMETALの三人のアイドルとしての実力とそれを活かす編曲が、影響元が明らかな楽曲をしっかりと“BABYMETAL”というメタル作品に仕上げるのである。

本物のメタル観から繰り出される本格的なメタル成分を含む演奏に、メタルとしてはありえないほどキャッチ―でファニーなエレクトロポップスが乗る。BABYMETALは、そうしたアイドルポップス+ガッツリメタルというありえない組み合わせと、その音楽性の雑多さ、そしてBABYMETALというアイドルとしての完成度という3点から、メタルのキワにあるまさにエクストリームなメタルと言える。だからこそ海外のミュージシャンが、今までに無かったものとして彼女らに食いついたのだろう。

とはいえ本作に含まれるメタル要素はその時代時代に「キッズ向け」と揶揄されていたようなものも多く、さらにかなり大衆的で過剰に味付けされており、本格派のメタラーにしてみればチャラい印象を受けるだろう。彼女らに否定的なメタル好きが多いのもうなづける。とはいえ彼女らをメタル的観点でのみ受け取るのは、後述の理由によって正確な理解ではないように思える。

MOAMETAL「アイドル!」

SKRILLEXの若き成功を代表とする、近年のブロステップの大流行は記憶に新しいだろう。このブロステップは本作でも#9「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」で直接的に取り入れられている。しかしここでは、さらに踏み込んでブロステップとBABYMETALの関係を見ていきたい。

孫引きになるが、英語版WikipediaのDubstepの項目には以下のような記述がある。

According to Simon Reynolds, as dubstep gained larger audiences and moved from smaller club-based venues to larger outdoor events, sub-sonic content was gradually replaced by distorted bass riffs that function roughly in the same register as the electric guitar in heavy metal

Simon Reynoldsによると、ダブステップの人気が上昇していき、小さなクラブから大きな野外イベントへとその現場を移していくにしたがい、sub-sonic(訳者註:訳せませんでした)は、ヘヴィメタルにおけるエレキギターと大体同じような役割を持っている歪んだベースリフに徐々に置き換わっていった。

ブロステップはやや感傷的な従来のダブステップに比べると、そういう意味で一層ダンスミュージックとしての意味合いが強い。その強力な電子音で大勢の観客を熱狂させるダンスミュージック……。それは、ダンス中心のメンバーを2人内包し、自らのダンスとコーラスで観客の“振り付け”やコールを仰ぎながら、圧倒的な強度を持つエレクトロメタルミュージックでファンを熱狂させるBABYMETALと構造的に非常に似ているのではないか。つまり、ブロステップの歪んだベースリフをまじもんの<ヘヴィメタルにおけるエレキギター>に置き換えたのがBABYMETALであると言えるのではないか。そして海外メディアの彼女らの捉え方は、もちろんメタルとしての側面もあるだろうが、こうした“ブロステップの突然変異種”としての見方があるのだろうと予想している。

さて、日本における彼女らの成功の音楽的下地となっている重要人物のひとりとして、間違いなく中田ヤスタカは挙げられるだろう。彼の作る曲は強烈な4つ打ちが基礎となっている。その音楽性は、エレクトロハウスの文脈、ないし“強い音圧を持つダンスミュージック”という点でSKRILLEXと共通しているし、BABYMETALと同じアイドル畑で活躍しているPerfumeの近作では彼もブロステップを取り入れている。

[MV] Perfume 「Sweet Refrain」

中田ヤスタカは、Perfumeや、客層は異なるだろうけれどもきゃりーぱみゅぱみゅを通して、それほどブロステップが普及していない日本のポップス/アイドル界隈に対して、前述のような“エレクトロダンスミュージックの超強化版”としてのBABYMETALの見方を提供したのではないか。(ついでにPerfume関連で付け加えるならば、彼女らが大ブレイクのきっかけになった「ポリリズム」は、BABYMETALが「悪夢の輪舞曲」でやったへんちくりんなリズムパターンに対しての耐性もアイドル界隈に与えているかもしれない)

さらに言えば、彼の音楽は、視聴者に対して“音圧の高い音楽に対する耐性”もまた与えているだろう。彼が与えた“強度への耐性”によって、以前であれば“うるさい音楽アレルギー”を起こしていただろう多くの非メタルファンがすんなりBABYMETALを受け入れられるのである。もっとも、この音圧ということに関して言えば、ボーカロイド/同人音楽/アニメソングを中心とした、近年のオタク音楽のヘヴィ化によるところもあるだろう。

ともかく、BABYMETALは、近年のエレクトロアイドルミュージックの流れを極限までマジアゲポヨ方向に突き詰めたエクストリームなアイドルだと言える

SU-METAL「エクストリィィーーーム!」

このように、本作ではメタル要素がアイドル要素を、アイドル要素がメタル要素を、それぞれエクストリームな方向へ押し広げるように働いている。もしアイドル音楽を主軸としていたならば、これまでのメタル風オタクミュージックの域から抜け出せなかっただろう。あるいはメタルを主軸としていたならば、多くのファンを熱狂させるアイドルとして成り立たなかっただろう。どちらかを主軸とするのではなく、あくまで両者とも極限まで突き詰めたことで、その二つが奇跡の融合を果たした。BABYMETALはメタルとアイドルという方向性の全く異なるジャンルの境界線を融解させ、その領域でキラキラとプリズムの如し輝きを放っている。月並みな表現だが、これはもはやBABYMETALというジャンルなのである

そう、それはまさにサイクロンジョーカーエクストリーム(CJE)、もといアイドルメタルエクストリーム(AME)。BABYMETALは左翔太郎とフィリップくん(ライト)が、幾多の苦難を乗り越えて「完全に一体化した姿」であるCJEに初めて成ったときの感動を僕に再び与えてくれた。地球という無限のデータベースに直結したCJEのように、彼女らにはMETAL ARCHIVESという無限のデータベースをもとに、現在絶賛大流行中のシューゲイザーブラックやアイシスラッジを取り込みながら、これからも「メタルとアイドル、ふたつでひとつのBABYMETALだ」を実現し続けて欲しい。