kaigaivisual-kei2

海外のヴィジュアル系をまとめて47バンド紹介してみた。

前書き

何せ数が多いので「とりあえずおすすめだけ教えれ」という方に。下記リンクと右下(携帯は右上)の「最上部へ」ボタンで行ったり来たりしてもらえれば。

演奏や録音の技術水準が高いのはOVERWORLD(メタル系)、GLORIA IN EXCELSIS(シンフォメタルコア系)、LILITH(the GazettE系)、AKADO(インダストリアルメタル)でしょうか。あと、珍しいのはGaidjinN(ジェント)とSOL ARDOUR(黒人)。個人的にはバカみたいに低音出してるzetsubou:[TRIGGER]は応援したいです。日本のバンドには日本語詞、声色、男性という点でMEAが一番近いですが、海外勢は邦ヴィジュアル系基準でいくとどこかしらヘンなので、日本にいるようなバンドを求めるかたは素直に日本のバンドを聴いたほうが良いんじゃないでしょうか……。

そういマジメなのいいから!というかたは、IN SHADEのモノマネをしたあとにPINKU JISATSUでケイレンを起こしてください。

なお、各バンドの頭にある画像をクリックすると埋め込み動画が流れます。

活動中のバンド

OVERWORLD

国:スウェーデン
活動時期:2012年~

最近のメタル寄り実力派バンド(ボーカルはひいき目)。映像の曲は疾走メタルだけど、アルバムの曲はグロウルや重低音リフも交えて展開。リフワークにthe GazettEの影響あり。英詞でそんなに声色を作ってないので日本のヴィジュアル系とはちょっと雰囲気が違います。

ガイジンのかっこよさをちゃんと活かした薄メイク&衣装で日本人には出せない雰囲気、出てます。私が勝手に言っているスクエニ系だこれ。ベースのひととかFF10に出てましたよね?ね?

BatAAr

国:スウェーデン
活動時期:2010年~

映像だとゲイズム、いや往年のグラムロックを思わせる化粧でスタジアムロックをやってますが、この程度にはマッチョなハードコアもやっています。というか絶対そっちが本業だろ。楽しそうすぎるでしょ。

KERBERA

国:スウェーデン
活動時期:2013年~

元SEREMEDYのSEIKE氏が新たに始めたバンド。音楽性は若干メタリックで大人びたもののSEREMEDYの延長線上にあるのでファンのかたはそのまま楽しめると思いいます。しかし女形のファッションまで継承してるそのこだわりは何なんでしょうか。

SEIKE氏は海外ヴィジュアル系情報サイトVisual Uniteを創設したり、かなり活動的な模様。海外ヴィジュアル系って風当たり強そうだし、何せライブが遠いんで日本からも人気イマイチそうだしがんばって欲しいです。

DIE/MAY

国:スウェーデン
活動時期:2013年~

SEIKE氏所属のバンド。映像のピコピコハードコア曲はYOHIO氏がミックスを手がけているようですが、既発のシングル「LOVESESSED」と比べてかなり音が良いです。YOHIO氏のミュージシャンとしての地力の高さが伺えます。

CRESTILLION

国:スウェーデン
活動時期:2013年~

カラフルポップな見た目と過剰とも言えるネコナデ声は近年のオサレ系に通じます。この声色は海外ではなかなか珍しいです。英詞で音楽性がピコポップパンクなので一時期のALL TIME LOWとかあの辺のキッズパンクのような雰囲気もあり。

SHIZZURA(シッズラ)

国:ドイツ
活動時期:2010年?~

山形を思わせるバンド名です。facebookおすすめアーティスト欄の<DEATHGAZE , D’espairsRay , Girugamesh , MUCC , Korn , HIM>がすべてを物語っているような音楽性。つまりニューメタル系。LOUD PARKあたりに出演してメタラーにケチつけられる系。クリーンボーカルはほのかにヴィジュ臭いです。ただし「Boku No Kurai Mirai」とかいう密室系というか初期ムックを思わせる日本語ヴィジュアル歌謡もやってるあたり混乱します。本国のかたにはどういう受け取りかたされるんでしょうこれ。

割と化粧っ気はあるものの、フロントマンの見た目がDEFTONESのChinoリスペクトなのでKoi No Yokanしかしません。

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KOGURE(コグレ)

国:ドイツ
活動時期:2010年~

ヴィジュアル王道ハードロックをベースに重低音リフを絡ませるタイプ。歌謡曲もうまい具合にメロディに取り込んでいます。歌は英語に発音に寄せた日本語歌唱。ボーカルが女性という点を除けば割とふつうに邦ヴィジュアル系です。というかドラマーがインパクト強すぎて他に目がいかないんですが。頬紅チークのkawaiinessとは一体……。

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Nana:[shi]

国:ドイツ
活動時期:2010年~

和風っぽい旋律を使いつつ低音リフでがんがん攻める新世代タイプ。ボーカルは基本的に英語で、要所要所日本語を絡めてくる感じ。男女混合かつ女性ボーカルなのでヴィジュアル系の仲間に入れてもらえなさそう(犬神某氏談)ですが、今後期待できそうな雰囲気はあります。

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生命光☆Seimei Hikari

国:ドイツ
活動時期:2007年~

ヴィジュアル系を自称しているものの、映像の曲はボーカルレス完全打ち込み曲です。結構凝っていますので、メトロノームの入場曲だけで休日を1日潰せるタイプのかたにはおすすめできます。ピアノとアコギのしっとりとしたインスト曲もあり。ワタクシ、数千円出してオークションで落札したライブ会場配布CDがインスト曲だったときの記憶が蘇りました。ちゃんと調べてから買おうね。

SoundCloudでたくさん曲を配信してます。ボーカルはないものの、こちらはバンドっぽい曲もあります。

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LaBathory(ラーバソリ)

国:ドイツ
活動時期:?~

意図してかどうかは別として、不協和音キメまくってます。ヴィジュアル系を自称しているものの、メンバーの3分の4が女性だったり、ボーカルがふつうに歌ってたりで、日本人基準で言うとヴィジュアル系ではないです。低音出したいインディバンドのほうがしっくりきます。きます?


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Cho^kaze(蝶風)

国:ドイツ
活動時期:2010?~

打ち込みサウンドですがヴィジュアル系を自称しております。ベースのひとのTwitterを見る限りオサレ系のようです。ダークサイドとポップサイドをニオわせるアートワークがソレっぽい。

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MEA

国:インドネシア
活動時期:2010年~

私が勝手に親近感を感じているインドネシア産のヴィジュアル系です。やっぱり濃い化粧はアジア系のほうが映えますね。歌詞も日本語なのでいつもと変わらぬ気持ちで接せます。

DELUHI大好きのようで、サウンドもそんな感じのゴリゴリ→サビ爽やか系です。若干ギターが甘いのはご愛嬌。ギタリストの名前が「びゅ」とかいう熱血硬派くにおくんのモブキャラみたいなのもご愛嬌。記念すべき最初のミニアルバムのジャケットがkonozamaなのもご愛嬌。っていうかヨダレしか出ないんですが何ですかコレは。ただし、現時点で日本からは彼らの作品を購入できないようです。続報を待ちましょう。

年齢不詳ですが、ボーカルの声質やドラム氏の童顔(友だちのヨシオカ君に似てる)を考えるとかなり若いんじゃないでしょうか。今後の成長に期待大!ちなみに5月に来日するようです。みなさんぜひ

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ZANROKKU

国:インドネシア
活動時期:2009年~

まだまだ続くぜインドネシア!こちらも公式サイトにDELUHIの名が挙がっております。インドネシアで局地的にDELUHI大人気説浮上。とはいえ映像作品はthe GazettE「千鶴」感マシマシで、「KABUKI」というやめけよソレっつうようなモダンでヘヴィネスな曲もやっているあたりガゼッテが一番の影響元だと思われます。

MEAとは違いボーカルの容姿から出身国がほとばしっております。つうか、なんか、X-MENに出てませんでした?え?他のメンバーもクセモノ揃いで、ギターMiyuu氏はTwitterアカウントで「後悔したくないひとはフォローしないでください」とかチュウニリキ全開の文章かましてますし、映像でドラム叩いてるのにパートはギターのRyuu氏は4月20日に脱退してるし、ベースのXiaojun Huang氏はfacebookページで「僕の愛しい天使……†」とか「交際の終了」とか赤裸々に恋愛事情を綴っています。日本だったら大炎上&粘着出現不可避。

前途多難の予感しかないですが、上記の「Silent Alice」はこちらからダウンロードできますのでどうぞ。

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JELLYFISH

国:インドネシア
活動時期:2011年~

さらにインドネシアです。ヴィジュアル系が流行ってるんでしょうか。彼らも影響を受けたものにthe GazettEの名前をバーンと出してますが、そのあとにAlice NineとかVividとか続きます。そして、曲も大体そんな感じの傾向で、前述の2バンドと比べると攻撃性抑え目で哀愁と開放感が大目です。シンセなども使うようです。日本語じゃなくてたぶん母国語で歌ってるのも違う点ですね。ちなみにカバーもたくさんしているようですよ。

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SILVER ASH

国:中国
活動時期:2000年~

Sweet Childのイベントにも参加したことがあるベテラン。ほぼ全曲ミドルテンポ以下でメロディや演奏は歌謡曲スレスレというかったるい音楽性のせいか2005年に契約を切られてしまいました。ただ、その後も活動を続け、2013年に「Reborn」で全国流通復活をしております。流行のブロステップを惜しげもなく取り込んだわりにそれ以外の部分がアレなのはもはや伝統芸能でしょう。

LILITH

国:中国
活動時期:2012年~

中国新進気鋭のthe GazettE系バンド。心なしかRUKIに顔まで似せている気合いの入りっぷりです。といっても近年流行のメタルコアフレーズを織り交ぜているあたりには心意気と実力を感じます。演奏や録音もしっかりしてるし、見た目もちゃんとヴィジュヴィジュしてるのでネオ以降が好きならふつうに盛り上がれるんじゃないでしょうか。この勢いをSILVER ASHに見習って欲しいところです。

ただし。中国人は顔も日本人と近いので演奏と見た目は全く違和感がないのですが、歌詞が中国語なんですよね。めちゃくちゃ滑舌が悪いボーカルだと思えば日本のバンドに聴こえるかもしれませんが、そこまでするくらいならふつうに中国語の響きに思いを馳せて楽しんだほうが幸せになれそうです。

ギター氏のソロ活動AFFECTIVE SYNERGYは日本のバンドと見まがう感じですが、もともと日本のヴィジュアル系バンドでギターを弾いていたようです。

公式(中国語)

ARMY OF JADE KIRIN

国:中国
活動時期:2008年~

黒に身を固めた見た目と、電子音を織り交ぜながら突進するその音楽性はヴィジュアル系と言ってもよいのですが、ボーカルがゴッツイおっさん声なので何かそう言い切ってしまうには違和感があります。メタル的に化粧したらヴィジュアル系の仲間意識を持たれたGARGOYLE感はあるかもしれません。

公式(試聴可)

GaidjinN

国:フランス
活動時期:2008年~

かっこよすぎる映像の割にガイジンとかいう身もフタもない名前ですが、なんとヴィジュアル系ジェント!世界初なんじゃないでしょうか。日本の最先端メタルヴィジュアル系DIR EN GREYが『THE UNRAVELING』で若干手を出したもののたぶん意図的にザ・ジェント感を外したところをあっさりやってしまうあたり、さすが第一次MESHUGGAHチルドレンのGOJIRAHACRIDEを生み出したフランスというところです。つうかゴシカルなフレーズやピアノ絡める感じがふつうにカッコいいのでLisnable Recordsあたりがトチ狂って拾ってくれないっすかね?

ちなみにfacebookの好きなバンド欄にはPERIPHERYとDIR EN GREYがワンツーフィニッシュを決めており、まんまです。ボーカルのクリーンボイスに多少難ありなので、今後練習を重ねてうまくなって欲しいところです。

このバンド、格好はかなりゴシカルなんですが、プロモーション動画も含め、facebookやTwitterにメンバーの姿が一切載っていません。一部動画でギタリストの格好が若干わかるくらいです。動画を配信しているBeheadingTheTraitorってとこは「金払えばYoutubeで宣伝してやるよ」ってだけの存在のようで、別に事務所などと契約してる節もないんですが、何ででしょ。水面下で何か動いてるんでしょうか。それともやっぱりヴィジュアル系じゃ売れないんでしょうか。ともかく脱ヴィジュしていくとすれば少し寂しいです。

ちなみにこの曲以前は普通にゴシックなヴィジュアルロックをやっていたようで、メンバーの姿も含め、どういう経緯でこの変化を遂げたのか気になるところです。

彼らの曲は国内外見渡しても買えるとこありませんでした。今後に期待しましょう。

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HYBRIDS

国:フランス
活動時期:2011年?~

気合い入りまくりの衣装と疾走ピコピコピロピロハードロックで良い感じに期待高まりますが、ボーカルが入ると一気に空気が変わります。本来あるべきメロディに対して若干のモタつきがあるうえ、フランス人だから日本語の発音も英語の発音も本格的でないのでとてつもないB級感が醸しだされています。マイイリュージョォオ↑↑ン♪

過去作を聴いた限り、映像の曲あたりからどうやらボーカルが変わっている模様。前のボーカルはRUKI感すごいです。みんなthe GazettE大好きだな!でも言葉のモタつきは共通してて、これってもしかしてフランス語のノリってやつなんでしょうか。よくわかりませんがとにかくシエスタって感じです。

IN SHADE(元JENLAYN)

国:フィンランド
活動時期:2011年(JENLAYN)~2014年(IN SHADEに改名)~

LUNA SEAとか好きそうな感じです。映像の作品はイントロの爽やかなカッティングギターに期待感が高まる曲ですが、やけに頭に残るシンセフレーズとカッティングギターにあわせて狭いなかうねうねと動きまくりながら華麗にラップをキメるボーカルが脳裏に焼きついてやりきれない思いだけいつも噛みしめイラだちさえ感じます。本記事中のバンド屈指の中毒性。最高です。テーレレレレーレテーレレレレーレ……。

改名前後でそんなに音楽性は変わっていない気もするんですが、なんで改名したんでしょう。

KARMIA

国:フィンランド
活動時期:2010年~

哀愁ディストーションハードロック系。ボーカルの声質がハスキーなのが特徴的です。シングルを2枚出していますが、『Mistakes』に収録されている「Rapture」という曲はヘヴィなリフと雰囲気を保ちながら開放感のあるメロディを使っておりなかなかかっこいいです。

えっ、しゃべりすぎた芸人感……?

PSYGAI

国:ブラジル
活動時期:2001年~

2004年リリースのジャリ曲「Gomen~Supreme obscure art」が話題になったので知っているかたも多いでしょう。とはいえあれからもう10年。海外ヴィジュアル系の中ではベテランな彼ら。頭髪や筋肉に表れているストイックさがサウンドにも反映されています。ます?Bandcampでフリーダウンロードで無料試聴できるけどもうなんかプログレッシヴ目指したのかなんなのかわけわからんことになってるあたり、YAMAI、感じます。

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DRACE XII


国:ブラジル
活動時期:2008年~

クサメロヴィジュアルメタル。いや、見た目全然ヴィジュアル系じゃないですし、元ANGRAのEdu Falaschiがプロデュースとかそれただのクサメロメタルじゃないですか。いくらヴィジュアル系を自称されても私、困ります!

メタルとしてもアレですが、とはいえこれは素直に公用語で歌ったほうが良かったような気がします。我々が英語で歌うと英語圏のひとたちにはこういう感じに聞こえるんでしょうね……。うへえ。

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DNR (Dream Not Reality)

国:イタリア/ドイツ
活動時期:2008年~

海外ではかなり有名なバンドのようです。見た目こそベテラン黒服系っぽいですが、音楽性はエモい海外ロックに近いです。英詞で発音も洋楽的。とはいえもともとのコンセプトが<To fuse the Asian and Western Music as well as Visual styles into one.(アジアと西洋のヴィジュアル系を融合させる)>であり、確実にヴィジュアル系の影響を受けています。

そんな音楽性もさることながら、メンバー写真のフォトショップ修整技術も目を見張るものがあります。ボーカルの頬骨のラインとか特に。

GUREN(ぐれん)(GLORIA IN EXCELSIS)

国:ベルギー
活動時期:2008年~

ガイアに輝けと言われそうな風貌のスリーピースバンド。ヴィジュアル系やメタルの他、ヒップホップからの影響も公言している珍しいタイプです。HIGH AND MIGHTY COLORや、もしかしたらAA=やTHE MAD CAPSULE MARKETSが好きなひとも楽しめそうです。ただ女性がボーカルということもあり、ヴィジュアル系としては微妙に仲間外れにされそうです。

現在はGLORIA IN EXCELSISというボーカルのソロプロジェクトに他のメンバーがサポートで参加するという、実質別名バンドでの活動をしている模様。そっちは完全にメタルコアです。シンフォ/ゴシック要素がふんだんに盛り込まれておりなかなか聴きごたえがあります。ネオ以降バンギャルの方ならこっちのほうが受け入れやすいかもしれません。

AKADO(赤道)

国:ロシア
活動時期:2002年~

ゴス+サイバー+デジタルサウンドという、インダストリアル界隈の影響色濃いいかにもロシアなバンド。中心人物のNikitaの、グロウルどころか女声と男声の使い分けもするボーカルが特徴的。ロシア語歌詞のうえナヨ声でもないので†ザ・ヴィジュアル系†っぽくはないですが、ヴィジュアル系に多大な影響を与えたMARILYN MANSONが食えるなら全然イケるんじゃないでしょうか。

SYSTEMSHOCKとかこの辺のひとたちって、ヴィジュアル系の影響でこうなったのか、それともゴスからたまたまヴィジュアル系に寄ったのかがわかりにくいですが、彼らに関してはバンド色が強いことや日本語のバンド名をわざわざつけていることからヴィジュアル系の影響と取って問題ないでしょう。

zetsubou:[TRIGGER](絶望[トリガ])(元Kage No Shujin)

国:スイス
活動時期:2006年(Kage No Shujin)~2010年(現バンド名)~

えげつない低音出してチャグキメまくるNu Metal以降の雰囲気を持ちつつ、ゴシックなシンフォ要素や密室系のような和風歌謡経由の仄暗さも持つバンド。何となく在りし日のD’espairsRayを思い出しました。あと初期ムックも。とにかく低音好きのアテクシ一押しです。

日本語を中心とした歌でかつキメキメの声なので日本人の持つヴィジュアル系バンド観にもそぐわないです。メンバーもゴシカル方面に力を入れた化粧なのでマッチョ外人がキラキラ化粧したときの「あっ……」っていう感じもありません。邦ヴィジュアル系基準で見ても、音も見た目もかなりしっくり来るんじゃないでしょうか。

「終わりと始まり」は公式ウェブサイトで無料配信していますが、何度やってもInternal Server Error返ってくるので私はもうダメみたいです。

ちなみにKage No Shujinのときはもっとコテコテした感じだったようですが、音悪すぎてわかんねぇですねこれ……。

全然音楽と関係ないんですけどfacebookの投稿記事が4連続「〇〇くんの誕生日です!」で笑った。全員早生まれかよ!

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Visual Moon

国:モンゴル
活動時期:2010年~

チャラいシンセとかラップとか入る系。映像の曲はゴシカルなフレーズも交えておりなかなかかっちょよいです。でも何語で歌ってるんでしょうか。中国語?とりあえずモンゴルってだけで及第点出しておきますね。たくさん良い曲を書いてください。

(5月1日追記:いまさらですが貼る曲まちがえてました。ほんとはこっち。この曲はモロアジア歌謡ってかんじですね)

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In a SCAR

国:日本、スペイン
活動時期:2012年~

日欧混合バンド。中心人物が中村淳一氏という日本人のかたのようです。Visual Uniteで紹介されているものの、演奏は完全に本格派メロデスでボーカルはHR/HM。その辺りは全然ヴィジュアル系じゃないです。ただ、中村氏がLUNA SEAなどを好きな影響なのか、節々にキャッチーさが顔を出すのはそれっぽいです。

SoundCloudでたくさん試聴できます。

MUGEN ZERO(無限ゼロ)

国:スペイン
活動時期:2010年~

重低音系和風ヴィジュアルハードコアです。展開などは割と変則的で凝ってます。日本語で歌っていますがいかにもガイジンな感じで、辺境メタル好きにはたまらないものがあります。演奏が全体的にもっとかっちりキマれば日本のヴィジュアル系ファンにも届くんじゃないでしょうか。

ちなみにフリーダウンロードできる作品はバンドサウンドじゃなくリミックスみたいな感じ。ガテラルなども交える変態テクノサウンドで結構おもしろいです

facebookBandcamp

堕天使 PROJECT(Datenshi Project)

国:スペイン
活動時期:2011年~

元GothicDoll、元Disaster Vanghの方がサポートドラムを務めているとのこと。女性ボーカルで日本語歌唱。初期ムックの歌謡曲要素を増幅したような音楽性です。堕天使という言葉とPROJECTという言葉で堕天使(バンド)とKISAKI PROJECTが引っかかるあたり高得点です。

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EVE

国:韓国
活動時期:1997年~

ベテラン黒服系バンド。動画を見ると当時めちゃくちゃ人気だったようですね。Wikipediaの記述を信じると、現在はボーカル以外全員脱退してしまったようですが、その後もDuel Jewelとコラボしたり、THE HYSTERIC5というグラムロックバンドを組んだりいろいろやってます。

SOL ARDOUR

国:アメリカ
活動時期:2009年~

アフリカ系とアジア系で構成された珍しいヴィジュアル系バンド。黒人のヴィジュアル系バンドマンはこのまとめでも唯一。演奏はまぎれもなくヴィジュアル系ですが、とにかく見た目が邦ヴィジュアル系離れしています。重低音や速度やわかりやすいメロディではなく各楽器を響かせながらの表現力で聴かせるタイプで、なかなか聴きごたえがあるんじゃないでしょうか。

ゲームが大好きで「アニメや漫画は人生を輝かせる」と語るオタクっぷりを露呈しつつ、科学や社会の発展に貢献したいという意識の高さを見せ、でも最終的には音楽への愛を語って締めるfacebookの文章は知性を感じさせます。おすすめアーティスト欄にジェントルマンの二大バンドPERIPHERYとANIMALS AS LEADERSの名前が並んでて、やっぱジェントって流行ってるんだなあって感じですが、ヴィジュアル系ジェントはまだ未開拓なのでいっそ彼らの表現力と知性を紳士方面に伸ばしてゴシック紳士化して欲しいとおもっております。

Lolita KompleX

国:オーストリア
活動時期:2008年~

いきなりドギツイおっさんのゴシックロリータが出てきて辟易したかもしれませんが、映像の曲はt.A.T.u.の有名曲のカバーなので安心して聴けます。

facebookページでVisual-keiではなくヴィジュアル系と日本語表記しているあたり気合いを感じますが、音楽的にはそんなにヴィジュヴィジュしておりません。バンド本体の曲はハードロック調です。

バンド名に偽りなきロリータなボーカルが可愛いですね。姉妹二人でやっているような記述も見られるのですが映像を見る限りひとりしかいません。もしかして二重人格とかいう設定でしょうか。だとしたらヨダレズビですね……。

MACHINA SHOGUNATE

国:イギリス
活動時期:2007年~

WHISPEREDよりも先にSHOGUNATEという言葉を使った、絶妙に不安感を煽る何とも言いがたいメロディラインと何とも形容しがたいヴィジュアルのシンセ入りゴシックバンド。facebookのおすすめアーティスト欄にはX JAPANやLUNA SEA、VERSAILLESといった「あーはいはいそうだよね」っていうのの他、DREAM THEATER御大や、90年代ヴィジュアル系ブームを駆逐した憎きポップパンクの海外大家BLINK 182の名前なども挙がっています。

音源はフリーダウンロードできます(リンク先音楽再生されるので注意)。今のところ音質や演奏がデモレベルですが、今後に期待しましょう。

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MOTIONLESS IN WHITE

国:アメリカ
活動時期:2005年~

この並びに加えるのが申し訳ない感じの、若手の中でも特に勢いのあるメタルコアバンド。出自がヴィジュアル系じゃなくて確実にエモ文化なんですが、ゴスファッション+サビメロメタルコア+エレクトロ要素という組み合わせは日本でのヴィジュアル系の流行りそのものなので紹介しておきます。

なお、TOKIO HOTELBLACK VEIL BRIDESなどは出自にヴィジュアル系が関係なさそうなうえ有名なので今回は省いてます。

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Creatures (CD)

現在活動していない、活動しているか怪しいバンド

SEREMEDY

国:スウェーデン
活動時期:2010年~2013年

日本で一番有名な海外ヴィジュアル系バンドなんじゃないでしょうか。VRockフェスで来日も果たしています。ギタメロ泣き泣きの疾走ロックをやったり、ガゼット(カタカナ時代)みたいなモダンなリフをかましたりしております。ただ、英詞で発声も露骨にヴィジュヴィジュしてないので「ヴィジュアル系だこれ!」って感じはそこまでないです。男の娘ギタリストYOHIOのソロのほうがオサレ系としてすんなり受け入れられるんじゃないでしょうか

2013年4月に音楽性の違いにより解散しましたが、2014年9月に一夜限りの再結成をするようです。

Heart†Kreuz

国:スウェーデン
活動時期:2007年~2008年

アニメとタイアップしてそうなシンセ入り疾走ポップネス+日本語詞とたまらないものがあります。1年で解散したあたり心が痛い。ボーカルのtohmasu氏はボーカロイドのカバーなどをしている日本好きのようです。

JUNCTION SKIES(元SAI)

国:スウェーデン
活動時期:?~2011年から音沙汰なし

SAIが2010年に変名してJUNCTION SKIESになったようです。SAIのときより大人っぽい黒服ハードロックになってます。アルバムも1枚出していてiTunesとかで買えるんですが、この記事を書いた時点で公式facebookの「いいね!」が279しかないところに活動停止状態の理由が伺えます。そんなものをまとめている私は一体何なんでしょうか。

KYRIELLE

国:スウェーデン
活動時期:?~2010年

スーツとシャツというわかりやすい格好。英詞で発声はヴィジュアル系。曲はネオヴィジュアル以降という感じ。

CINEMA BIZARRE

国:ドイツ
活動時期:2005年~2010年

本国ではデビューアルバムがチャート9位になったこともある人気バンド。音楽性はいわゆる洋楽のロックで、見た目だけがヴィジュアル系になりましたという感じではあります。

解散後、ボーカルのStrify氏はソロでエレクトロポップスを、ギターのYu氏はDNRに加入しています。Yu氏はDNRのボーカルとMonoChrome HeartsというCINEMA BIZARREに似た感じのユニットを組んだり、ソロで活動したりしているようです。もはや大御所。

SHOCKER X

国:アルゼンチン
活動時期:2006年~2012?(最後のライブ確認日、公式ブログ消滅)

MADONNAの「Frozen」のカバーが有名なバンド。ガゼットの影響が強そうな、重低音でがりがり攻める系。ミドルテンポの曲はこんな感じ。ヴィジュアルの変態度高め。

PINKU JISATSU(ピンク自殺)

国:スペイン
活動時期:2006年~2010年

90年代後半~2000年代前半に流行ってたような気がする医療系そのものです。怪しい日本語詞ですがそもそもギャシュカッチュオウ!!シャダッアッ!!なので何ら問題ありません。ロゴも日本ですし、あの頃の日本のバンドと言っても通用しそう。

ヴィジュアル系のほかにパンクサウンドが源流にあることは<PINKU JISATSU was born in 2005-2006 as a project about Japanese Visual Kei and Punk genres.>と本人たちも認めるところです。

『Aku ga Rakuen de Saitara…』というミニアルバムを出しているようですが、入手不可能です。

GothicDolls

国:スペイン
活動時期:2003年~2012年
Last.fmTwitterより)

h.naoto的英字パンクの服という2000年初頭前後に良く見た格好です。短パン!短パン!英詞ですが、ねばっこい発声は完全にヴィジュアル系のソレです。ボーカルの音の外し方も絶妙。

ちなみにDIR EN GREYの「ain’t afraid to die」などをカバーしております。

CLOSER

国:フランス
活動時期:?

曲以外にほとんど情報がありませんでした。検索しにくいっす……。基本的には一時期のBUCK-TICKやLUNA SEAの流れを汲んでいるんでしょうか。ギャー!と叫んだりもします。

たぶん元メンバーと思われる方がSoundCloudにたくさん曲をアップしてます

LYRE

国:フランス
活動時期:2004年~?

日本のヴィジュアル系バンドDIOのヨーロッパアツアーで対バンをしたこともある本格派。動画ではパフォーマーを交えたとても良い感じの面妖なゴシックオペラを披露しておりますが、現在のfacebookのトップ画像はブン殴られた男衆になっておりヴィジュアル系感皆無です。また、2013年6月17日に「アルバム作るぜ!」的なことを言ったきり音沙汰なしです。

1stアルバム『Dukkha』は本国フランスのAmazonですら取り扱ってない模様。一応こちらの機能してるのかしてないのかわからない海外通販サイトで在庫ありですがさすがにアレ。

ANGEL HEART

国:韓国
活動時期:1999年~?

B級90年代サウンドの韓国ヴィジュアル系。いろいろやりたいことを詰め込んで変な感じになってます。おもしろみある。日本語と母国語両方で歌ってるのも良し。Youtubeの動画は公式なのかよくわからないので貼りませんでした。曲はMyspaceでまだ聴けます。

あとがき

計47バンドを一気に紹介しました。X JAPANやLUNA SEAの名前を挙げるバンドは多かったです。ついでDIR EN GREYで、ギルガメッシュもちょくちょく見かけた気がします。けれども全体的としてはthe GazettE感が強く、やっぱり彼らは今のヴィジュアル系のトレンドを体現しているんだなあと思いました。

ここで国別にバンド数を見てみましょう。

紹介バンド数(内活動中)
ドイツ 7(6)
スウェーデン 9(5)
スペイン 4(3)
インドネシア 3(3)
中国 3(3)
フランス 4(2)
フィンランド 2(2)
ブラジル 2(2)
アメリカ 2(2)
韓国 2(1)
イギリス 1(1)
イタリア 1(1)
オーストリア 1(1)
スイス 1(1)
ベルギー 1(1)
モンゴル 1(1)
ロシア 1(1)
アルゼンチン 1(0)

活動中のバンドだけで言えば、意外にもドイツがトップです。ただ内容を考えると、やっぱりスウェーデンが親ヴィジュアル系国のような気はします。そして大健闘のインドネシアです。

とりあえず死ぬほど疲れました。有名どころをまとめてちゃちゃっと終わらせようとしたらすげえいやがんの。カバーだけしてるとかいうバンドあわせたらもっといやがんの。しかも日本の基準からするとクセものばっかりでやんの。もちろん、それだけ海外でヴィジュアル系がマイナーな文化だということなんでしょうけれども。近年の日本のヴィジュアル系バンドの安定さには頭が下がる思いです。

文中でも触れましたが、エモ方面やゴス方面、メタル方面で化粧してる雰囲気を持っている、そっちの文化圏なんだろうなあ、っていうバンドは紹介してません。ヴィジュアル系の影響を公言していても、どちらかというとエモいハードコアになっているバンドも多く、日本人的ヴィジュアル系バンドを思い描いて接すると肩透かしを受ける場合もあります。

邦ヴィジュアル系を海外のバンドがやったってだけでも見た目で差別化できるので良いですが、どうせならガンガンその地域独自の文化を吸収した海外独自のヴィジュアル系も生まれて欲しいものです。メタルが盛んな欧州では、すでに邦ヴィジュアル系にはないジェントをやってるバンドも生まれてましたしね。そんでもって日本の若手ヴィジュアル系も、近親引用するのもいいですが、国外から影響をもっと受ければヴィジュアルシーンがさらにおもしろくなるんじゃないでしょうか。

the-body_i-shall-die-here

THE BODY『I Shall Die Here』は何とも収まりのよい作品だった

えっ!?THE HAXAN CLOAKがTHE BODYのプロデュースを!?

と、暗黒ミュージック界隈を雑然と追い続けるものたちを驚かせた今年2月の発表から2か月。ついにTHE BODYの『I Shall Die Here』がRVNGレーベルから発売されました。あの首つり縄が厭世のザ・ボディにかかってしまったら断末魔のガチョウ声はどうなってしまうの……。

FACTのインタビューによると、RVNGのMatt氏が二組を引き合わせたようです。それでは、彼らはお互いにどのような印象を持っているのでしょうか。

THE HAXAN CLOAK→THE BODY

前作『Christ, Redeemers』を聴いた感想が<I thought it was fucking amazing, so brutal. It appealed to a lot of my older metal sensibilities.(むちゃくちゃヤバいと思いました。ほんとブルータル。メタラーとしての感性をすごく刺激されました。)と、かなり誉めてます。THE HAXAN CLOAK(以下THC)ことKrlicは、人生で初めて行ったライブがSLAYERとPANTERA、MACHINE HEADが出演するもので、自身もメタルバンドを組んでいたという結構マジなメタラーだったようで、<I think there’s a lot of metal around at the moment that’s pretty safe, rehashing a lot of shit that has been done many times before.(今のメタル界って、焼き直しのクソみたいな、軟弱なやつばっかだと思ってますよ)とベテランメタルミュージシャンばりに現在のメタル界に苦言を呈しています。こわい。

THE BODY→THE HAXAN CLOAK

ピッチフォークの『Excavation』のレビューで知ったとのこと。直接THE HAXAN CLOAKの作品について誉めてはいませんが、SKINNY PUPPYやインダストリアルミュージックの名前を挙げたり、ドラマーなのに生ドラムよりドラムマシーンのほうが好きだとかひねくれたことも言ったりして「ぼくは電子音楽も聴くよ」アピールをしています。確かにインダストリアルについては彼らの音楽にも表れていますね。

というわけで、相互にそれぞれの音楽に対してある程度の理解があったことがわかります。また、人間嫌いのTHE BODYのオッサンですら今回のリミックスに肯定的な反応をしています。当事者間では、かなり有意義なコラボレーションになったようです

I Shall Die Here

以上の点をふまえて本作を聴くと、なるほどまったく違和感のない音になっています。たとえば#1「To Carry the Seeds of Death Within Me」。この曲はTHE BODYがドジャァ~~~ンといつものドゥームやったあとにTHCのエレクトロニックパートが顔を出す曲ですが、両者が持つ音の暗さとTHE BODYのもともとのインダストリアル感、そして何よりKrlicの手腕とメタルへの敬意によって、THCパートがアウトロとして違和感なく流れていきます。もちろん、THE BODYパートでもドラムが細切れになるなどのエレクトロニック要素はあるものの、同様の理由によりTHE BODY感を損なわないアレンジになっています。また、Pitchforkで先行配信されていた#4「Hail To Thee, Everlasting Pain」は、前半THCパートにTHE BODYの例の声が乗って、後半いつものTHE BODYパートになる曲です。「THCの打ち込みにあの声乗せたらヤバいんじゃね?」という誰しもが考えることが忠実に実行されています。

そう、作品全体として、何というか違和感もなく、滑らかで、予想を裏切らない形に仕上がっています。なので、最初に彼ら――ドゥーム界の人間嫌いとエレクトロ界期待の新人黒魔術師が合作すると発表を受けたときに感じたあの驚きからすると、ずいぶんと小奇麗な印象を受けてしまいました

いや、もちろん#5「Our Souls Were Clean」などは、THE HAXAN CLOAKがうまくTHE BODYのノイジーな部分を取り込みながら、ギターを契機にして徐々に激しさを増し、最終的に狂ったようなTHE BODYパートに移行する、MASSIVE ATTACKの「Angel」を思わせる名曲ではあります。ありますが、作品全体としてはやはりまとまりがある。逸脱しない。

これは当然と言えば当然です。本作はTHE BODY名義の作品。Krlicはあくまでリミックス担当です。また、Krlicは上述のように元メタラーで、THE BODYの作品に対しての評価も高いです。彼らから提出された素材を自らの領域に持ってきて料理するのではなく、敬意を込めて”メタル”として仕上げる、というのもうなづけます。

本作はTHE BODYの新作、ないし企画盤としては充分満足のいく内容でしょう。あるいはTHE HAXAN CLOAKの仕事のひとつとして「暗い!重い!うるさい!ヤバい!」と喜ぶひとも大勢出るでしょう。ただ、THE BODYとTHE HAXAN CLOAKという、メタル界とエレクトロ界でも優秀な重暗さを持った二組の合作に驚き、心待ちにしていたものとしては、何とも収まりのよい作品になってしまったなあ、と思うのでした。

Song of Sarin, The Brave

THE BODYは「Song of Sarin, The Brave」なんて曲で、麻原彰晃の声をサンプリングして「Oh, my beautiful Sarin the brave.」とか歌うクズです。そういうクズをPitchforkっていう大手メディアが持ち上げて、あまつさえオシャレな服まで着せて、色んなひとが賞賛するっていう今の状況。悪いって言ってるわけじゃないですよ。ただ、皆さんどう思うんでしょうか。「芸術作品と芸術家の性格」問題についてあまり考えたことがないひとは、これを機会にちょっと考えてみてはどうでしょうか。

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MURMUR『Murmur』:ブラックメタルとノイズロックのせめぎあい

ジャンルとジャンルのはさみ焼き

ジャンルとジャンルを混ぜたら新しくておもしろいんじゃね?というのは誰もが考えることだ。メタルもこれまで様々なジャンルと混じり合ってきた。例えばヒップホップなどのクラブ要素とメタルを合わせた、日本ではミクスチャー――すなわち混ぜ物とそのまんまの言われ方をしているラップメタルなどは、その相性の良さから大きな流行となった。

また、シューゲイザーとブラックメタルを混ぜたブラックゲイザーなるやり方でALCESTやDEAFHEAVENが成功を納めたのは記憶に新しいだろう。あるいはブラックメタル+ロックンロールのブラックンロールも、KVELERTAKの成功で今後増えてくるかもしれない。いずれにせよ、彼らはメタルとはあまり縁のないジャンルを掛け合わせて新しい境地を切り開いていた。

ブラックメタル・エクスペリメント

MURMURもブラックメタルに畑違いのジャンルと混ぜ合わせて独自の音楽性を築いている。そのジャンルとは、ジャズだ。と、言い切れるほどジャズには詳しくないので、ジャズ影響下にあるプログレッシヴロックやノイズロックとでもしておくが、ともかくそうしたジャンルで見られるいわゆるエクスペリメンタルな要素が本作ではふんだんに見られる

彼らのエクスペリメンタル感の根源は”揺れ”と”間合い”である。フラフラとしたリズムを、時にドラムが、時にギターが、時にベースが引き受けながら、それぞれの演奏が絶妙の掛け合いと緊張感のあるグルーヴを魅せる

その主軸となっているのはドラムだ。最低限のリズムを確保しながら、ドラムロールを中心に細かい手数で揺れまくるドラミングは、ツーバスやブラストで突進したがるメタルにはない手触りだ。そうしたドラムと、ポストハードコアのような焦燥感を煽る叫びや時折見せる素っ頓狂なフレーズもあって、本作にはジョン・ゾーンのレーベルTZADIKや吉田達也関連の作品に近い印象を感じる。そういう点でもやはりエクスペリメンタルなのだが、そういうバンドがメタル風をやったときにしばしば出る似非メタル感はあまりない。不穏なギターの響きで悪魔的・異教的雰囲気がしっかり形成されているし、グロウルは汚いしで、なんとかブラックメタル然としている。上で「絶妙の掛け合いと緊張感」と書いたが、こうしたノイズロックとブラックメタル要素の掛け合い、という意味でも絶妙で緊張感のあるせめぎ合いが行われている

こうしたジャンル同士の対峙については、メンバー編成を見ると納得できる。初期から在籍しているギタリストのふたり、Matthias VogelsとShane Prendivilleは、MURMUR結成前はそれぞれ別のブラックメタルバンドに在籍動していたようだ*1。一方で本作から参加となるベーシストのAlex Perkolupと2009年から所属しているドラマーのCharlie WerberはLOVELY LITTLE GIRLというバンドでも活動している。LOVELY LITTLE GIRLは試聴した限りでは変な格好をしたメンバーたちがオペラ風の歌唱にホーン楽器の入ったロックをやってハシャぐという、まさにアヴァンギャルド/エクスペリメンタルロックといった感じのバンドだ。

バンドの主導権を握る二人が作るもともとエクスペリメンタルなブラックメタルの土台を、バンドのリズム骨格を担う二人がさらに引っ掻き回す。メンバーの出自が、そんな構図として作品に表れている。

ブラックメタルとロック。異なるジャンルに身を置くもの同士が、MURMURという集合体のもとに、それぞれの”エクスペリメンタル”を目指して演奏をぶつけ合う。そこに生まれるジャンル間の”揺れ”と”間合い”が、そのまま演奏のそれになって濃密な緊張感を形成する。その雰囲気こそが本作の魅力だろう。

でもブラックメタルではないよね

ブラックメタルが基盤になっていて、優良メタルレーベルSeason of Mistからの発売とはいえ、やはりMURMURはいわゆるメタルからはやや遠い音楽である。随所で非メタル的なノリが出てくるし、雰囲気たっぷりにギター鳴り響く#4「Recuerdos」なんかは完全にフュージョンのソレだ。ブラックメタルにしては少々遊びが過ぎるだろう。とはいえ冒頭で触れたラップメタルやブラックゲイザーもしばしば「メタルではない」とされることを考えれば、新しい刺激を生み出す音楽に対してはこれくらいのハミ出しは歓迎したいところだ。もっとも、MURMURの魅力は曲の構成以上に演奏による空気感なので、前述のジャンルのようにそうそうフォロワーを生みだすことはないだろうが。

本作は単純にメタル寄りのノイズ/エクスペリメンタル/アヴァンギャルドなバンド作品としてかなりおもしろいので、最近話題のVAMPILLIAなどが好きなひとにはぜひおすすめしたい。また、プログレッシヴ/マス系のバンド好きも変態感のある作風に馴染みやすいと思う。普段ブラックメタルを好んでいるひとはとりあえず一番ブラックメタルっぽい#1「Water from Water」を聴いてみて判断して欲しい。

ちなみにMetal-Temple.comでは「1曲目以外ぜんぜんブラックメタルじゃねー」と言われて4点/10点つけられてます。ひええ。2010年の1作目と2011年のNACHTMYSTIUMとのスプリットは本作よりまだブラックメタルだったらしいので「もうちょっとメタルメタルしてくれ」と思った方はそちらを聴いてみてはいかがでしょうか。

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THE BODY『Christs, Redeemers』:肉体を否定する絶叫

枠を突破する音色

人間離れ、という言葉は、対象となるものが人間とは思えない様子であることを表す。それと同時に、”人間であること”を評価の地盤としていることから、その対象はあくまでも人間であることも示している。

THE BODY。アメリカはオレゴン州を拠点とする”肉体”をその名に冠するスラッジドゥームデュオもまた、人間離れした音を鳴らしている。最も目立つのはChip Kingのボーカルだろう。耳をつんざくような高音域で、得体の知れない――詞はあるが、聴き取りは不可能な言葉を絶叫する。あるいは楽器陣。低音発生装置と化したギターやベース、コンプレッサーをかけすぎて破裂音のようになったドラムは――現代の音楽では珍しいことではないにしろ――それぞれの既存の枠組みを突破した”楽器”離れした音を出している。そう、THE BODYの音楽は、狂気的な方向で従来の音色を突破した要素で構成されている。

「この世はクソだ」

そうした音で、一体彼らは何を表現しているのか。アルバムの最後を飾る#10「Bearer of Bad Tidings 」の歌詞を見てみよう。

人生に価値はなく、全ての意味が欠落している
(中略)
希望は潰えた
生気はなく
歓喜もなく
完全な屈服
共感はなく
呪われた我ら
全世界が墓だ

life worthless and devoid of any meaning.
[…]
hope has ceased
no spark of life
no joy
total resignation
no sympathy
our curse
all the world is a grave

まるで就職活動に失敗した大学生のような落ち込みっぷりだが、とにかく「この世はクソだ」と言いたいのは伝わる。銃を構えたアーティスト写真についてインタビューで聞かれた際に〈I don’t really like most people in the world, or trust them. It’s less of a thug or violent thing and more of a separation between us and society.(俺は世間のヤツらのほとんどが大嫌いだし、信用もできない。そして銃はマフィアや暴力なんかよりはマシだし、俺たちと社会を引き離すのにずっと協力的だ)と述べているような偏屈した性格なので、割と本気でこうしたことを思っているのだろう。

人間ならざるものへの渇望

さて、作品中、ボーカルや楽器以外で目立つ要素が西洋宗教的な合唱だ。それは神を讃えると同時に、神を意識する。あるいは本作のような非業の音楽に混ざったならば、神に祈り、救いを求め、ときには憎むための歌かもしれない。いずれにせよ、この合唱は、我々人間が、神という人間あらざるものへと近づく行為を意識させる(もちろん、西洋人と日本人では捉え方に大きな差はあるだろうが)

しかし、中盤以降この合唱は聞かれなくなる。代わりに台頭してくるのがインダストリアルな要素だ。大々的に女性ボーカルとストリングスを押し出した、ひときわメランコリックな#6「Night of Blood in a World Without End」を境として、形而上の“人間ならざるもの”から物質的な“人間ならざるもの”へとモチーフが変化している。

ボーカルを始めとした演奏や歌詞に、この宗教色の強い合唱とインダストリアルなリズム、そしてその移り変わりが加わることで、作品にある統一した意味がもたらされる。それは、人間でありながら人間を否定する絶望と、人間ならざるものへの渇望である。人間離れした声を上げる彼は間違いなく人間であり、どんなに歪んだ音を出して、どんなに祈りの歌を奉げても、どんなに無機質な感情に徹しても、その肉体からは離れられない。彼が叫べば叫ぶほど、肉体性はあらわになるばかりである。なるほど、THE BODYとは良く言ったものだ。

自らの肉体を超越しようともがくその姿は、本作を聴いている我々の肉体の否定でもある。己をも巻き込む敵意の塊。それが彼らの音楽を聴いたときに感じる苦痛の正体だ。

その肉体が朽ちるまで、彼らの絶叫は止まない。

※訳はLomophyのをお借りしました。Pitchforkを中心とした海外音楽レビュー記事を翻訳しているブログです。

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HEXIS『Abalam』:バンドと不定形さの両立

CELESTEからの影響

ミドルテンポを主体とし、陰惨なトレモロリフに絶叫を乗せて力の限り叩きつけるような音楽性は、フランスのブラッケンドハードコアCELESTEを思わせる。それについてはボーカルのFilip氏も<I think a band like Celeste is doing a lot of the same things as we do, [...] (大体CELESTEと同じようなことをやってると思う)*1と認めるところだ。

とはいえCELESTEとは目立って異なる点がいくつかある。

音質
かなり低音寄りの曇った音になっている。ドラムのスネアだけがやけに硬質で中央に陣取っている。
ボーカル
喉の上のほうで出すようなブラックメタル。CELESTEよりも汚い。
テンポ/展開
遅く、少ない。曲は1~2分と短い。

以上のように、全体的に鈍重に特化した仕上がりになっている。

躍動なき不定形

彼らの曲で目立つ要素は、徹底してトレモロを貫くギターと、そのうるささが故にドラムセットから完全に独立した楽器の様相を呈しているツーバスだろう。

本作におけるトレモロギターはひたすら連続してメロディを奏でており、リードギターとしての役割を持っている。と同時に、その音の厚さとワンフレーズの短さから、リフレインを形成するバッキングギターとしての意味もあるだろう。ただし、ドラムと同期してビートを刻むリズムギターのような働きはしていない。

ビートのなさ、という点ではドラムも同様だ。前述した通り音空間を支配するツーバスは、もはやリズム隊としての体をなしていない。時折打ち付けられるスネアも、その頻度の少なさと音の鋭利さから各拍におけるアクセントとしての意味が強い。かろうじてシンバルがリズムを保っているものの、定速で鳴らされ続けるそれは、ビートというよりも単純に拍を維持するメトロノームのような位置付けになっている。

このように、ギターやドラムがあわさってひとつの躍動を形成していない、という点で、HEXISはアンサンブル形成という意味での肉感は薄いと言える。

もちろん、それがバンド全体の強度を弱めているわけではない。メロディと拍、という最低限のバンド要素は抑えているし、何よりひとつひとつのパートが陰惨で鈍重な方向にその力を振り絞る姿勢は作品にひとつの色を与えており、それがバンドとしての地盤の強さになっている。

すなわち、アンサンブル的な肉感のなさは、彼らにおいては単純な躍動感のなさ、すなわち“不定形さ”として働いている。彼らはバンドとしての骨格を保ちながら鈍重方向へと向かって様々なものを削ぎ落とすことで、“不定形さ”をその骨に宿した。そして彼らの強度を持った“不定形さ”は大きなうねりとなって我々に黒い激情を届けてくれる。

意外とキャッチー

さて、不定形、というと思い出されるのは、去年の『Vexovoid』が話題となって来日も果たしたオーストラリアのデスメタルバンドPORTALだ。彼らの曲はその這いずり回るような低音志向のために、ヘヴィドローンのような音塊になっていた。

一方でHEXISはそこまで極端なところには至っていない。上述したように彼らはメロディと拍という骨格は維持しているし、構成要素の極端さの割にはしっかり曲が展開している。その展開に一役買っているのはドラムだろう。ツーバスドコドコの有無によって明確に場面が切り替わっている。曲中でテンポの変化はないのだが、その極端な音の密度の変化によって、まるで速度が上下したかのような印象を覚える。また、ツーバスはその存在感ある音圧でギターに肉薄し、連続したトレモロに断続的な“刻み”を付加している点も注目したい。

この手の音楽の中でも凶悪な部類に入るのだが、メロディや拍がはっきりしていること、1曲の中で目立った変化があること、そして1曲1曲が短く、アルバム全体で40分届かない程度の尺であることなどから、その音像に反して聴きやすい。BandcampであればName Your Price(0円以上)で購入できるので、普段こういう音楽を聴かないようなひともたまにはどうでしょうか。かっちょいいよ!

My first haiku!

そういえばインタビューで「これまでのリリースを俳句形式でまとめてください」とかいうわけのわからん質問されてるんだけど、ちゃんと答えてて笑った。すっげぇ適当だけど。

Sum up the entire release for fans in Haiku form…

Tobias:
satan abalam
guitars, bass, drums and screaming
play many live shows

…my first haiku!

noozer

AMP対談記事に見る“今後の方針”とタナソイズム

AMPのあの記事

AMPは、ユニバーサル ミュージック合同会社による洋楽情報を中心とした音楽WEBメディアです。先日、そのAMPの編集長である照沼氏と野地氏の対談が話題になりました。

http://ampmusic.jp/368/

本記事は要約すると以下の通りです。

  • この話は<ほんっとうに極端>な<俺リアル>だからみんな<音楽談義のタネにして>くれよな!
  • 音楽メディア情報:レコード屋(最強) >> WEB > 雑誌
  • フィジカル > 配信:配信はお金かかってないから気合いが足りない
  • 音楽にお金かける=気合いが入ってる
  • 俺たちがレコード屋を超える“新しいWEBメディア”になる

本人たちが音楽談義のタネにして欲しいと言っているので、私も音楽サイトの末端から波風をそっと立ててみたいと思います。AMPの編集長である照沼氏を中心に見ていきます。

金は“気合い”の基準にはならない

まず、おそらくはほとんどのひとが引っかかったであろう箇所を引用しましょう。

フィジカルで出ているということが「遊びでやってるわけじゃないんだな」という判断材料になってる気がする。

リスク負ってるからね。その曲をリリースすることに対して。

「金使ってフィジカルで出す気合い」と「金出して買う気合い」がぶつかってる方が健全だと思う。

照沼氏は<「音が聴ければOK」的なところがある>と言っているので、上記の発言はフィジカルと配信という形態の差への言及ではありません。“気合い”の判断基準として“金を使っているかどうか”を利用していると言う話です。

この“気合い”というのは曖昧な言葉ですが、<遊びでやってるわけじゃない>という言葉があるので、“遊び”の対義語として定義しておきましょう。

この金を使う=気合い入っているという図式のなかで、まずひとつ抜け落ちているのが「音楽制作はフィジカルリリースだけにお金がかかるわけではない」という視点です。手持ちに100万円あったとき、100万円を音楽制作に費やしてBandcampでデジタル配信するひとと50万円を音楽制作に費やして50万円をフィジカルプレス費に充てるひとでは、後者の方が“気合い”が入ってるのでしょうか。同じ100万円という“気合い”でしょう。あるいは年収1000万円の独身貴族が片手間に作った音楽で50万円かけて作った豪華レコードと、年収300万円のフリーターが生活を切り詰めて何とか作ったデジタル配信音源では、経済的な負担は間違いなく後者のほうが上ですが、それでも前者のほうが“気合い”が入ってると言えるのでしょうか。

そう考えると、金使ってフィジカルで出す>ことと“気合い”の関係性はそれほど深くないと言えます。つまり氏の基準で音楽を選ぶと、大多数の<遊びでやってるわけじゃない>ミュージシャンの作品を捕え損ねることになります。

もうひとつ、「金だけがリスクではない」という点も指摘しておきたいです。金以外のリスクとしてすぐに思い浮かぶのが時間です。例えばXINLISUPREMEは1曲作るのに10年費やしましたが、これはミュージシャンとしてとてつもないリスクでしょう。

どの音楽を聴きどの音楽を聴かないか、その基準を決めることは有益なことです。ユニバーサルミュージック下にあるプロライターとして、ミュージシャンに“気合い”=“本気で音楽やっているか”を求める気持ちもわかります。しかし、その“気合い”の判断基準の主軸として「フィジカルで出しているかどうか」あるいは「金」を使うことを据えることは、多くの気合いの入ったミュージシャンとの出会いを放棄することになってしまうのではないでしょうか。

というわけで、無意識的にフィジカルリリースを“気合い”の基準としてしまうのであれば、明らかに情報量が不足するので、意識的に改めたほうが良いと思います。照沼氏の情報量は、そのままAMPというメディアの情報量に直結するのですから。個人ブログならまだしも、ユニバーサルミュージック下のプロなのですから。

AMPは選定者となるらしい

さて、上では“気合い”を求める気持ちはわかると言ったものの、“気合い”という判断基準もまた、大きな取りこぼしを起こします。照沼氏の<スヌーザーが無くなって、いわゆるインディーとか洋楽ロック界隈は共通の話題を持ちにくくなった>という発言から、AMPはその辺りの音楽を取り扱っていくのだとおもいます。とすれば、2010年以降のVaporwaveの流行は無視できないものでしょう。Vaporwaveは実態のつかめない音楽ですが、過去のチープな音楽をサンプリングしてごちゃごちゃに混ぜたようなふざけた音楽性を考えると、Vaporwaveは明らかに“気合い”入ってません。現在はそこにいろいろな意味が見出されているものの、作り手聴き手双方の「これおもしろくね?」という悪ふざけじみた遊びの延長線上で発展したような音楽です(そこらへんが魅力の源のひとつでもあります)。そしてそもそものその特性と、既存の音楽のサンプリング中心という権利上の理由もあって、そのほとんどはフィジカルリリースされていません。氏の基準だと、Vaporwaveは完全に抜け落ちます。

とはいえもちろん、照沼氏がVaporwaveを知らなかったわけがありません。推測ですが、照沼氏が<遊びでやってるわけじゃない>作り手と聴き手が気合いでぶつかりあう健全な音楽の反対のものとして想定していたのは、Vaporwaveだったのではないでしょうか。それは日本でのVaporwaveムーヴメントを(たぶん)けん引したレビューサイトHi-Hi-Whoopeeを記事中でわざわざ引き合いに出していることから伺えます。ともかく、Vaporwaveが氏の基準からすると“気合い”入ってないのは事実で、つまりAMP編集長である彼の「フィジカルリリース=気合入ってる」発言をわざわざ誌上に載せるということは、「我々AMPはVaporwaveのような軽いノリでやっているような音楽は軽視していく」という宣言になります。

Vaporwaveは極端に遊びに振り切っている例ですが、遊びでやっているような音楽が大きなムーヴメントになることは少なくありません。最も近い例で言えば初音ミクを中心とするボーカロイドでしょう。おそらくごく最初は女性ボーカルの代替程度にしか扱われていなかったボーカロイドは、ネギ持たせたりなんだりというネットユーザー特有の悪ノリ揉まれるうちにどんどん“初音ミク”としての個を獲得していきました。その個は大きな市場を形成し、その市場に目をつけた、あるいは単純にボーカロイドに惹かれた若き才能あるミュージシャンたちはニコニコ動画内で活躍し、そのうち何名かは新しい才能としてボーカロイド界の外にまで影響を与えました。

“遊び”を軽視し“気合い”を重視するということは、こういう、リスクがないからこそ成立するような、おもしろいひとたちがおもしろいことをやっていたらいつの間にか大きくなっていく現象を、それが成熟した段階で初めて本格的に取り扱いだす、あるいは取り扱わないということでもあります。

編集部の3分の2が“気合い”を重視するAMPは、コアなひとたちがやっている遊びのおもしろさを世に伝えるというムーヴメントの1次形成者としての働きをせず、レコード屋やレーベルが選んだものを取捨して聴き手に良さを伝える選定者(キュレーターっつーんですか)的ウェブ媒体に近くなるのでしょう。もちろん、それはまったく悪いことではありません。あのPitchforkだっていまやそういうメディアです。情報が氾濫する現在、信念を持ったレーベルの作品を、確かな耳で選定し、うまい文章やインタビューで紹介するというメディアの意味は十分あります。その中でまた別にやりたいことや信念が改めて見えてくることもあるんじゃないでしょうか。がんばって欲しいです。

機能してない言い訳

ここでちょっと別の話題に移りましょう。後日談のほうで<「雑誌的な意味でのメディア」の話題をしてもらいたかった>と書いてある通り、本記事の主題は音楽メディアです。その中で照沼氏と野地氏は“レコード屋=音楽メディア説”を唱えています。

照沼:(略)でも、昔は音楽情報を仕入れるのって雑誌やWEBメディアだったけど、今はもうレコード屋で情報仕入れることの方が多くなったな。

野地:そうなんですよ。レコード屋が一番メディアっぽい。「あ、こいつら出したんだ」とか店で気付くこともあるし。

ここでのメディアは文脈からすると“音楽の情報を得たり共通の話題になったりする場”というような意味で使われているようです。そういう意味では、確かにレコード屋は、一番ではないと思いますが、メディアっぽいでしょう。また、レコード屋はお金を出して製品を仕入れているという点で、無料音楽雑誌のAMPよりも健全で“気合い”が入っているメディアになるでしょう。だからこそ照沼氏は<完全に個人的なところでは「レコード屋がたくさんあればメディアはいらない」くらいの気持ち>を持っているのでしょう。

おそらくこの発言は、のちの<色んな連中を煽って、騙して、新しい音楽を聞かせる。そんなメディアが必要だと思ってる。>の前振りでしょう。「個人的にはWEBメディアはレコード屋に劣ると思うが、AMPはそれを超えるようなメディアにしたい」という編集長としての所信表明であると、好意的にはそう解釈できます。で、好意的でない、ふつうの感覚では「は?テメーうちのWEBメディア/雑誌をバカにしてんのか?」となるわけです。

照沼氏は、このレコード屋最強説や前述したフィジカルすなわちKIAI含めた一連の発言を「極端だから!極端だから俺!相対的にね!」と言い訳していますが、はっきり言ってそれは何の言い訳にもなっていません。例えば、例えばですよ、私が「親が差別主義者だったから、極端だけど、〇〇(とてもひどい差別表現)は全員死ねとおもってる。みんなはどう?」と言ったら「は?まずテメーが死ね」と確実に糾弾されるでしょう。そこに絶対的も相対的もクソもありません。「しかるべき意図があれば発言の内容の是非で批判されることはない」なんてことはありません。もしそういう考えがあって、かつ今後意図せぬ炎上をしたくないのであれば、改めたほうがよいとおもいます。

炎上宣伝大成功

というか今回の記事、記事の内容が主に散々に言われるという形でしかも意図した音楽メディアの話が中心ではないとはいえ、音楽談義のタネに十分なってますよね。その意味では完全に成功だとおもうんですけど。なんで失敗みたいな捉え方してるんでしょうか。大手ユニバーサルミュージックのサイトでありながら、4月10日現在「amp」でGoogle検索してもまったく引っかからず、「amp music」で検索してもアフリカのインディーズ音楽を世界中に発信するレーベルが真っ先に出てくるという状態の、4月にできたばかりのサイトに関して、ここまでいろんなひとが言及して、こんな長文を書くものまで現れるっていうのは、AMPという独自性の全くないサイト名をつけてしまったというSEO的欠点をひっくり返すほどの大成功だと思います。精神的には大変かもしれませんが、自信を持っていいでしょう。

照沼氏はタナソウになりたかった

序文に出てくる<2014俺リアル>という表現や、繰り返される“極端”アピール、<メディアはいらない>発言、<色んな連中を煽って、騙して>発言などの歯に衣着せぬモノイイを見ていると、ひとりの人物が浮かび上がってきます。

そう、タナソウです

これなんか完全に今回の照沼氏と被りますね。

記事の文章から察するに、照沼氏はスヌーザーの熱心な読者であったようです。そればかりか「AMPが廃刊したスヌーザーの代わりになる!」という決意さえうかがえます。照沼氏はスヌーザーの代わりになるAMPのブレインなのですから、それはすなわちタナソウの代わりになるということでもあります。だからこそ照沼氏はタナソウ的な物言いで、タナソウ的に音楽界隈に議論のタネを提供しようとしたのでしょう。そしてそれは、タナソウ的に大成功に終わりました。

ただひとつ間違いがあったのは、照沼氏のメンタルが繊細だったことです。タナソウ的発言に対してしかるべくして返ってきた批判に対してどっしり構えられず、「怒らないで!」と及び腰になって「意図が伝わらなかった」という言い訳をしだした。そして<編集者としての力量不足によるところで、完全に僕のミスです>と自分を責めだした。その割に自分の偏った発言については一切釈明も撤回もしないもんだから、「こいつ本当は自分が正しいと思ってるだろ」と読者に疑念を抱かせて、「意図が伝わらなかった」ことも読者のせいだと若干思ってるな、と思わせてしまった(後日談の<そもそもの記事タイトルは「音楽情報メディアって読んでますか?」なのに>という発言からも、そういう雰囲気が取れますよね)。その、繊細な心を持ちながらも強気な発言をしてしまい、反論に対して自分の非を認めるような広い心を持ってる感を出しつつも、結局全く本心は曲げずに他人のせいにもしているような雰囲気は、なんかすごくスヌーザー読者のインディ青年だなあ、という同属感すげえ感じる感じですが、それはともかく、その行為はタナソイズムにもとる行為で、タナソウになりたいなら、もっと「俺がそう言ったんだから良いんだよ!」くらいのふてぶてしさを発揮していったほうが良いと思いました。

最後に。29歳でユニバーサルミュージック下のWEBメディアの編集長になったのは単純にチャンスだと思います。これにめげずにがんばって日本のPitchforkになって欲しいです。