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GROWN BELOW『The Other Sight』:ポストメタル王国王位継承候補

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ポストメタル王位争奪時代

2010年、ISIS王崩御。続く2012年に、王を失ったHYDRA HEAD王国は9年間の歴史に幕を閉じた。のちに言うポストメタル王位争奪時代の始まりである。

正統継承者であるPALMSに異を唱え、国の主権奪取を狙う5組のポストメタルバンド。知翔の神が手を貸したROSETTA、強力の神が手を貸したMOUTH OF THE ARCHITECT、残虐の神が手を貸したCULT OF LUNA、知性の神が手を貸したLIGHT BEARER、そして、今回紹介する技の神が手を貸したGROWN BELOWだ。

GROWN BELOW

GROWN BELOWはベルギーの5人組バンドだ。

彼らが鳴らすスラッジ由来の重厚なリフとポストメタル然とした叙情的なギター、長ったらしいアトモスフェリックパートはまさにISIS以降のアイシスラッジといった感じだ。彼らの場合、そこに叙情的な歌を加え、さらにメロディにポストロックに近い陽性の感傷を採用することで、“ポストアイシス”としての独自性を追及している。

ISISのボーカルは基本的にお経とシャウトだった。フランスから「メロなしMESHUGGAHにメロを加えたらいいんじゃね?」というバンドが同時期に2つも出てきたことを考えれば、「“歌”なきISISに“歌”を付け加えたらどうよ?」という考えも別段独創的なものではないと言えるだろう。上記の王位継承者候補のうちでも、PALMSはChinoという名ボーカリストを迎えたし、MOUTH OF THE ARICHITECTはシンガロングポストメタルという熱き血潮ほとばしる未知の領域に足を踏み入れている。したがってGROWN BELOWの歌自体は、彼らの大きな特徴とするほどではない

メロディ

歌は特徴とはならないが、そのメロディはどうだろうか。上述のように、彼らが用いるメロディはしばしばMONOなどの感傷系ポストロックに近づく。そしてこの“ポストロック的メロディ”というのは、意外にもアイシスラッジではあまり見ない類のものだ

ポストメタルに対してのポストロックという要素それ自体は、それぞれバンドとしてのダイナミズムに音響的な手法を取り入れる、という点で両者が共通していることもあり、比較的近いところにあるだろう。例えば前述のLIGHT BEARERなどはかなりポストロック要素が強いバンドだ。それはポストメタル界に衝撃を与えた彼らの『Lapsus』に対する「For Fans of Envy, Sigur Ros, Aphex Twin, Mouth Of The Architect, 65 Days Of Static, and Neurosis!」(*)という文章からも伺えるだろう。しかしながらことメロディ――特に歌のメロディに関して言えば、もともとの出自がネオクラストであることもあって、彼ら主軸は激情ハードコアに近く、ポストロック的キラメキとは少し異なる。

ともかく、GROWN BELOWの“ポストロック的メロディ”は彼らの大きな特徴として良いだろう。

静と動のなかのメロディ

アイシスラッジを語るうえで必ず出てくるのが「静と動の対比」だ。安易な展開を嫌い、執拗な反復で聴き手を暗闇に引き込むスラッジーな『Celestial』がISIS系ポストメタルの原点であるからして、これだけで語れるほど彼らの音楽は簡単ではないが、この構造がわかりやすい魅力であることは確かだろう。GROWN BELOWにしても例外ではなく、ポストメタルの静と動の型を忠実に体現している。

ここで活躍するのが前述のメロディだ。静の部分にポストロック的メロディを置くことで、一般的な型におけるアトモスフェリック→スラッジという落差に、陽性の歌→陰性のグロウルという落差を付け加えている。すなわちポストロック的メロディは、そのメロディ自体の珍しさに加えて、構造への寄与という形で彼らの音楽性を特徴付けており、なるほどそのメロディは、GROWN BELOWの次世代ポストメタルバンドとしてのフィニッシュホールドとなり得るだろう。

リズム

ひとつだけ残念なのがドラムパターンだ。多くのパートで、いわゆる4つ打ちの部分に明確な拍を持ってきている。アイシスラッジでは特にシンバルを用いてよく行われて強くリズムを意識させるそれは、しばしばスラッジパートなどで強力な縦ノリを生んだり、アンビエントパートでリズムを失わないために用いられる。

彼らの場合、そうしたプラス面よりもマイナス面のほうが目立つ。負の影響のひとつがメロディパートのメロディ性過剰化である。光の普遍性のあるメロディに明確なリズムという組み合わせによって増大したウタモノ感は、従来のアイシスラッジの“静”が含んでいるアトモスフェリックという意味を覆い隠してしまう。それによってアトモスフェリック→スラッジという意味での静から動への落差が失われてしまう。

また、ドラムの場面転換効果が薄くなっているため、どんなにフレーズや音圧を変えてもどこか平坦な印象を受ける。そして、そうした平坦さがミニマルな魅力として働くには、彼らの音楽はメロディアスだし、感情的すぎるだろう。

まとめ

音圧、展開、雰囲気、どれをとってもアイシス王国王にしてもおかしくないバンドだった……しかしただひとつの欠点はドラムが貧しすぎた。

とはいえまだ2枚目なので、今後の成長が楽しみです。

なお、文中の妙な言い回しはキン肉マンのソレでした。わからないかたはDVDでも借りるかNikupediaをご覧になることをおすすめします。

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