メタル/ハードコア系個人レーベル兼音楽レビューサイト。

A STORM OF LIGHT『Nations to Flames』:ポストメタルバンド、スラッシュにはまるの巻

カバー画像

何やらSLAYERとの共演で速い曲に対して意識を改めたとのこと。何を今さら……という感はあるが、ともかく本作はその影響が明らかだ。全体的なテンポアップと短曲化はもちろんのこと、何よりギターが刻む刻む。冗長雰囲気メタルの極み『And We Wept the Black Ocean Within』を作ったバンドとは思えない。

とはいえそのことがメタルバンドとしての力強さを単純に強化している点はまず評価できる。作風が変わった際の、知見不足による品質低下もない。やはりビジュアル担当とはいえ初期からNEUROSISに在籍していたJoshがいるというのは心強い。もともとこの手のバンドの中では輪郭のハッキリした音を鳴らしていた彼らなので、ミュートで刻んでもサマになっている。また、鈍重に力を注いできた経緯もあって、リフのひとつひとつが重い。スラッシー=ムチ打つような、という言葉にふさわしい音になっている。

もちろん、彼らはただのスラッシュメタルバンドになったわけではない。もともと持っていた鈍苦しい雰囲気も十分に発している。そこを担っているのはドラムとボーカルだ。

まずドラムだが、スラッシュに見られる高速ツービートは見られない。代わりに多用されているのがタム回しスネア回しだ。ドコドコと休まることがない。これはポストメタルでは一般的な技法なので、単純なメタルリフとポストメタルドラムの合わせ技なのだが、これが予想以上に相性が良い。ドラムの手数の多さがリフの刻みを補強して、実際の速度や密度以上に音が詰まって聴こえる。もともとの雰囲気を損なわないままリフの強化が行われている。場面によるドラミングの切り替えも良好。録音について聞かれた際、Joshが〈いちばん大きかったのはドラムのビリーも一緒に曲作りを始められたことですね。(中略)今まではドラマー抜きで作曲していましたから。〉と答えているだけはある働きだ。

次にボーカルだが、これは本当に特徴的。もともと地声で浪々と歌う、それこそNEUROSISに近いスタイルだったし、前作『As The Valley Of Death Becomes Us, Our Silver Memories Fade』ではかなりしっかり歌いあげていた。音楽性の変化もあって、さらに歌を重視してくるのかと思ったらそうではなかった。音程がほぼ変わらない俗にいうお経ボーカルで、歌としての機能はほぼない。そのうえエフェクトもかけていて音の定位も広い。その点に関しては歌というよりもシンセに近い鳴り方だ。ただし、歌そのものの主張はかなり強い。声と言葉の存在感を存分に発揮しうるシャウトに近い歌唱法だ。歌にならない歌。それは『Nations To Flames』という主題とカバージャケットから想起される、人々の魂の叫びを彷彿させる。バンドとしての物理的強度に精神的な強度を加えるに足りるボーカルワークだと感じる。ちなみに本人はCONVERGEとのツアーのあとに〈このバンドに必要なのは、より攻撃的で、そしてもうちょっと無調なボーカルなんだと気づきました〉と言っている。CONVERGEからこのスタイルを想像するとは、感性が鋭いというか独特というか……絶叫するだけのフォロワーに聴かせたいところだ。

スラッシュバンドがポストメタルに傾倒するのはMASTODONがやったことだが、その逆は珍しい。本作はそういう意味でも貴重な作品と言える。興味がある人はぜひ聴いてみて欲しい。

完全に余談だが、ひとつ残念なのは元HOWLのAndreaタソが不参加なこと。「a storm of light」でgoogle画像検索すると彼女のソロ写真がやたら多いことからもヘヴィ音楽界隈には貴重な麗しきギタリストであることが伺える。写真によっては女装したオッサンに見えるけど。とにかく今後もこういうステキなバンドでステキに活躍して欲しいところではあった。ちなみにリンク先に他意はない。いや、ないですって。

発言の引用元→.::SCRATCHtheSurface Webzine::.: A Storm of Light | Interview with Josh Graham

関連記事