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ヴィジュアル系に青春を捧げた氏が東北ジャム2013in石巻を全力で楽しんできた

前情報

90年代。それはヴィジュアル系が奇跡の流行を見せたキラメキの時代。青春を90年代とヴィジュアル系に費やした私は、その隆盛と同時に2000年代に向けて一気に衰退していくヴィジュアルシーンを眺めてもいたのであります。そんな中、入れ替わるように台頭してきたのがメロディック・ハードコアでありPIZZA OF DEATHでありまして、その万人受けするバンドサウンドは多くのキッズを今なお夢中にさせているのであります。メロコアキッズからすると「ヴィジュアル系ってwwww音楽ジャンルなのにヴィジュアル系ってwwwwww」って感じであり即ちPIERROTとMALICE MIZERと槇原敬之(絶妙なゲイ感)に心血を注いでいた私は彼らからすると被差別対象でありそそそんな私が恐れ多くもジャムフェスに参戦!?門外漢の気楽さで当日の雰囲気をあますことなく伝えていきます。細かいところは事実と違うかもしれませんが記憶力のせいなので許して。1日目のみです。タイムテーブルはこちら

会場

ライブは黒い服を着ていかなければならない、という謎の価値観を持つ友人氏と落ち合ったのち、みんなめっちゃカラフルな服着てるじゃねーか!と問答をしながら専用バスで石巻へ。最初バス停に全然ひとがいなくて、係りのひとも「予約したひと全然来ないね」なんつって言ってるし大丈夫なのか!?と心配になりましたがちゃんと満員になり杞憂でした。

11時過ぎくらいに石巻に到着。工場の倉庫を改装してできた石巻ワンパークがメインステージ。そのすぐ隣に無料のアウトドアステージが設置されてました。

客層はPIZZA OF DEATH3割、MAN WITH A MISSIONファン3割、その他出演バンドのファン3割、何かおもしろそうなことやってるからとりあえず来てみたお祭り感覚の家族連れ1割、AMENRAティーシャツを着た再会の血と薔薇の末裔1名といった感じ。しっかしMAN WITH A MISSIONの名前はいたるところで目にし、改めて彼らの人気を感じました。

混雑具合は普通で、物販も吟味しながら買えるくらいの余裕ありました。

開演前に実行委員の岡氏とNAMBA69の難波氏が出てきて注意事項。地震などの災害が起きたときの避難についてかなり念入りに説明していました。私も石巻で被災した知り合いがいるので他人ごとではない。ちなみにワンボックスカーの上で水浸しの石巻を漂流したその知り合いは「こんなチャンス二度とない」と思ってスマフォで写真を撮ったら一緒にいた人に「そんな場合じゃないだろ!」と怒られたので、音がならないアプリをわざわざダウンロードして写真を撮りまくったということで、震災がいかに恐ろしいかが伝わってきます。

coldrain

本フェスのヘッドライナー。ONE OK ROCKやSiM、FEAR,AND LOATHING IN LAS VEGAS、ちょっと違うかもしれないけどマキシマムザホルモンなど、現在盛り上がっている日本のスクリーモ/メタルコアシーンの一角を担う有望バンドですね。

荘厳なシンフォニックSEののち開始。音源の印象通りの本格派エモメタルコア。低音がごりごり出ていて良い感じです。ガニマタも披露しまくってぼく満足。

数曲やってハーフな顔立ちのボーカル氏が話し出す。

イケメン「出てくるまえに、難波さんにボケて来いって言われて」
ぼく「むちゃぶり!」

上下関係こわい、と思っていたら聞き間違いでした。「届けて来い」でした。そのあと「おれら音楽で伝えるしかないんで」というようなイカニモな発言ののち再開。ボーカルの「まわれーっ!」の合図でサークルモッシュ!初めて見た!これがニコニコプンでやっていたあの!皆幼児に戻りきゃっきゃとまわり続ける。隅で指くわえてみてる私。ニコニコプンでもひとりはいるよねこういう子……会場大盛りあがりののち、合唱を促される。

イケメン「皆さん、おれらともうちょっと英語の勉強をしましょう」
ぼく「ぼけた!」
イケメン「◯×※△って、一緒に叫んでください」
ぼく「ききとれない!」

「ロックが好きっていう気持ちがウンタラ」というMCを聞いて、ああ、この人たちは“ロック”をやってるんだなあ、と妙に腑に落ちたところで終了。

とりあえず頭振るぜ暴れるぜお前らもな!みたいなライブパフォーマンスとペイント過多でわきだるだるのタンクトップ着てるファッションセンスが何かビジュアル系と被って私のバンギャ男心くすぐる名演でした。出身地調べたら名古屋だそうで、確かに名古屋系感あるのでこれからはcoldrainは名古屋系という誰も得しない自説を展開していきます。

余談ですがギターのひと、会場内禁煙なのにめっちゃパイプ吸ってました。いけない子!

The BONEZ

RIZEのJESSEを含む四人組。私はRIZEは「Why I’m Me」と「ピンクスパイダー」のカヴァーしか知らない、というパンピーな立ち位置でしたが、全然問題なく安心と信頼のラップメタルでした。音響が相変わらずの低音過剰でドラムとベースはエグかっこいいことになってたんですが反面ギターの音があんまり聞こえなくてちょっと残念。レゲエ風の曲やメロコア風の曲もあったしギターもわちゃわちゃやってたし、もっと素直な音響のほうが映えただろうなー。と玄人を装ってみましたが最初にJESSE氏を見たときの感想が「顔ちっちゃ~い」だったので毎日のアボカドとヨーグルトは順調に私をスイーツ脳へと変えていってるようです。まぢ語ろっ☆(周回遅れのスイーツのイメージ)

ペットボトルの水をばっしゃばっしゃかぶったり「やべーしゃべんの忘れてた(笑)」って思い出したようにMCし出したり、この人たちなんか本当にバンド楽しくてライブ好きなんだろうなあ、と伝わってきてとても好感触でした。

under the yaku cedar

無料のアウトドアステージに登場した石巻出身のバンド。ギターボーカル、ベース、ドラム、サックスの四人編成です(CDのメンバー欄にはサックスのひとのってませんです)

エアジャム流れの本フェスの雰囲気とはやや外れたジャムロックでした。最初は「次の次に登場する細美武士のために最前列確保をしている女子数人+ノッている私+遠巻きに見ている観客」という感じで、地元なのにアウェーみたいなところがあったんですが、素晴らしいパフォーマンスによって、中盤以降は「最前列細美女子+遠巻き+ノリにのっている私と知らないオッサン+彼らの知り合い」となっていました。あれっ、あんまり変わってない……?

締めのMCで石巻や被災後の想いを語ったあと、それまでのテンションの高さから一転して歌物のミドルテンポ曲をやりはじめました。これ卑怯なやつだ!とミドリの「POP」や凛として時雨の「傍観」を思い出しながら聴き入る。最後の〈ever ever clean… ever clean…〉の連呼と、演奏そっちのけで叫び地団駄を踏み感情をさらけ出すサックスのひとを見ていたらもうなんかマジで泣くやつだコレ。演奏が終わって、会場から大きな拍手が起こっているときに隣からボソッと「ヤバイよ……」とつぶやく声が聞こえたので見てみると真っ赤な髪のひとが真っ赤な眼をして泣いていました。あれ、おれこのひと知ってる!NAMBAさん!?と思いつつ「ヤバイっす」と返してなぜか二人で肩を抱き合ってるうちに終演となりました。

地元うんぬん抜きにしてもめっちゃかっこよかったのでCDを買ってほくほく。iTunesでも売ってます。残響レコード好きなかたなんか良いんじゃないでしょうか。

locofrank

大学の講義室の壁の「locofrank最高←僕も好き!友だちなって!」という落書き以来の邂逅です。

「この石巻ワンパークの噂を聞いてずっとやりたいと思ってた」、「エアジャムのオファー、お前らどうせ来るんでしょ、みたいな感じで来たことない。もちろん今回も呼ばれなくても来たぜ!」など今回のライブへのヨイショ感スゴイ。いや本心なんでしょうけど。でもいくら親しみを込めても方言の真似だけはタブーだから!踏み込んではいけない領域だから!

演奏はかなりの盛り上がりをみせていました。だてに長年活動してねぇですね。みんな大好きlocofrank!かくいう私は目の前にいた背の低い女性が慣れた手付きで手をひらひらさせてるのを見て、ああ、メロコアにもバンギャル的ひとたちはいるのだなぁ、と物思いにふけっていて演奏どころではなかったです。

ANCHOR

石巻出身のスリーピースロックバンド。良い感じの爽やかなギターロック!細美効果もあるのかもしれませんがかなりの集客力で、その真っ直ぐなサウンドと盛り上げ方で会場しっかり湧いていました。コロダイをやろうとした客も出てた(ただしさすがに人口密度が低く未遂)

MCもとても前向き感強く、なかでも「バンド始めた当初からこういうステージに立つのを妄想してましたけど、まさか実現するなんて、嬉しいです。だって、次MAN WITH A MISSIONだぜ!?対バンだぜ!?」は全バンド小僧に希望と夢とはかどる妄想をもたらす名MCでした。

MAN WITH A MISSION

というわけで今日の目玉のひとつ、いまノリにノッてる狼バンドです。ですが、えー、見ませんでした。なんというかくそげろ混んでたのと疲れてたのとで友人と相談してイェイェオだけ口ずさんでました。

細美武士

狼の演奏が終わって間髪入れずに登場。「let it be」や「stand by me」などの海外有名曲とELLEGARDENの曲を数曲披露。ELLEGARDENの曲は「金星」、「風の日」、「虹」などの日本語曲がほとんど。「おれがおまえらの歌を聞きたいんだよ!」という煽りもあり、ほぼ全曲観客との合唱になってました。途中、その辺の客をステージにあげて歌わせたりも。大久保さんという女性だったと思いますが、帰り道狂信的なファンに襲われてないか心配です……。ひとまずのシメは「Make A Wish」(ELLEGARDENでのライブ定番合唱曲)。これはもうエルレファン垂涎のライブだったですね。逆に、彼らの曲を知らない層はちょっと置いてけぼりを食ったんじゃないでしょうか。

ひと段落ついたところでBRAHMANのTOSHI-LOW氏と東北ライブハウス大作戦の西片氏が登場。いや西片氏登場前に二人でなんか演奏したっけかな……?と記憶が曖昧になるくらい演奏せずに三人で延々と喋ってました。しかも女子高生にオナホール投げつけたとかウンコ漏らしたとかさぁ、めちゃ楽しそうじゃないか!

さんざんしゃべったあとに三人+なぜか再登場の大久保さんで「酒と泪と男と女」。何この豪華カラオケ。素人二人がはけたらまたひたすら話し出すも、時間がないことに気付く細美氏。せまるKEN YOKOYAMAバンドの開演時間ととどまることを知らないTOSHI-LOW氏のシャベリに焦りながら泳いだ眼で早口にMC「新大久保の人種差別に対して……」。いやそんな感じで言われても説得力ないから、と誰もが思いましたがその後に演奏したTHE BLUE HEARTSの「青空」のカバーは、長年この界隈で一線張ってるボーカリストふたりの力を見せつけるステキさでそのココロ、しっかり届きました!

KEN YOKOYAMA

超満員の会場で10分くらい押してからメンバー全員アルパカのカブリモノをして登場。そもそも元ネタ見てないしHi-STANDARDもあえて避けてきたからあんまり知らないし寒さのせいなのか横山氏ギターめちゃトチるしずっと外で棒立ちしてたせいで足が痛いしでゆっくり見たいのに超満員で後ろのほうにいても押されるしで体力の限界が来てやむなく途中退場。なんか目玉ふたつをすっぽぬかした気がするけどとても楽しかったので良かったことにします。

宮城の郷土料理おくずかけをうめえうめえと貪ったのち、帰り道、バス停までの誘導係の女性がにこやかに「ありがとうございました!」って挨拶してくれたので最大級のイイ声と笑顔で「こちらこそ」って答えたけど「アッ(笑)」みたいな反応されたあたりで精神的にも限界が来てさようなら石巻。

感想

楽しかった!「がんばろう東北!」みたいな雰囲気強いとめんどうだなあ、とおもってたんだけどそんなこともなく、皆純粋に楽しんでました。あと、ヴィジュアル系でなくてもバンギャル的立ち位置のひとはいて、そこにファンの男も絡んできたらすごくドロヘドロでめんどくさくなりそうだなと思いました!!1

ともかく演者も運営も最高でした。これを機にHi-STANDARDも聴いてみようとおもいました。まる。

「びいしき」と「エモ」~メタルコアら編~

「エモ」?「びいしき」?

ミュージックビデオ観ていて、唐突な展開に思わず噴き出したことありませんか?あるいは、曲はよい。垢抜けてもいる。でもいや、ちょっとまて、それは違う!そうおもったことはありませんか?私はあります。そういう体験や違和感を「エモ」や「びいしき」として紹介していくのがこの企画です。

「エモ」の代表例としては陰陽座の以下の映像があげられます。

陰陽座「紺碧の双刃」

 エモォ…┌(┌ ^o^)┐

 瞬火の頭の回転は、演奏によって昂ぶった彼の内なるエモーショナンの噴出であり、これこそがまさに「エモ」であり、我々と彼の「エモ」は共有されるのです。

「びいしき」は、有名どころではIMMORTALが近いでしょう。あの表情、あの姿勢、あの動きは「びいしき」のカタマリです。他に、KALEDONはどっちかっつうと貧乏要素が強いので微妙。NINJA MAGICはおふざけ要素が強すぎるので除外。もっとも、この辺の感覚はひとによって違うでしょう。だからこそ各々で美意識のズレが生じてこんなことになってしまうわけであります。

「エモ」と「びいしき」の明確な線引きはありませんが、「びいしき」の瞬間的な昂ぶりが「エモ」であるともいえます。

というわけで上記のような「エモ」や「びいしき」をひしひしと感じる、そんな映像を紹介していきます。今回は私が現在最も「エモ」を感じるジャンルであるメタルコアを中心に8曲をまとめました。

ATTACK ATTACK!~メタルコアスタンダード

まずはチャラコアの標準とも言うべきATTACK ATTACK!の名曲「Stick Stickly」です。この映像には近代メタルコアの基本的な「びいしき」がこれでもかと詰まっています。ともかくどうぞ。

まず目をひくのがガニマタです。本作はこのガニマタにかけては他の追随を許さないクオリティを誇っています。この中腰を支えているであろう強靭な筋肉……元ヤクルトの名捕手古田を髣髴させます。

次に目につくのがギターアクションやステップで、かつそれを揃えてやっているところでしょうか。ある特定の動きを全員で行う、というのもメタルコア映像の特徴のひとつです。スタジオで演奏そっちのけで「ここでこうやってギター振りかざそうぜ!」と練習している様子を思い浮かべるとほほえましい限りです。混ぜろ!彼らに関しては衣装や髪型も揃えているのがポイント高いです。

アクションという点でもうひとつ。近代チャラコアの特徴のひとつとして横流しの前髪がありますが、これを活かした「前髪を横に流しなおす動作をヘッドバンキングと兼ねる」動作が盛んに見られます。ATTACK ATTACK!ではギターボーカルで特に顕著ですね。感情の昂ぶりを表しながらお色直しもできる一石二鳥のこの動作はぜひみなさんも習得してください。

あと忘れてならないのが脂肪です。まあまあの頻度で食べすぎた影響が強く出てる体格のメンバーがいます。メタルコアマンはこの手の音楽性のバンドマンのなかでは年齢が若めであること、細身の衣装でキメていることが多いためこの脂肪はより目立ちます。学校に数人いた、太ってるのにカースト上位だった言うなればデブ充とでも言うべき存在は我々の胸に郷愁を浮かび上がらせます。

本作の最エモポイントはこちら。昂ぶる感情が故左手に黄金長方形を宿した一瞬です。

 ブウワァァァァァアアアアアァァァァアァ

さて、メタルコアの基本的な「びいしき」を体験していただいたところで次に参ります。

SIENNA SKIES~期待の新人

残念ながらATTACK ATTACK!は解散してしまいました。そんな彼らの意志をつぐ次世代メタルコアバンドがSIENNA SKIESです。前述したポイントを踏まえながら早速見ていただきましょう。

強烈ぅ……。

おそらく多くの方が最初に目に付いたのがその脂肪でしょう。明らかに配分が偏っています。ベース、腹震えすぎ。とりあえず左二人のカロリーは足して2で割ったほうが良いです。また、ボーカルの軽やかなデブ感もなかなかステキです。あとは一番のイケメンがキーボードっていうのも哀愁がありますね。

そんな本作の最エモポイントはこちら。全体的に演奏が必死なドラムにスポットがあたった瞬間です。

THE BETRAYER’S JUDGEMENT~エンジョイキャンパスライフ

Twitterにて五条隆志ことban_off_jp氏が紹介していたバンドです。

なんというか冒頭のヒゲのおっさんの顔ですでに胸いっぱいなのですが、さらにそこから登場するメンバーのファッションセンスに脱帽です。なにこの大学1年生のオシャレ感。しまむらからavailへ、そしてOIOI or 109メンズ館へ……。キマってます。ボーカルCyril氏のカリアゲ+チョビヒゲ+英字Tシャツ+綿パーカーは役満つきます(綿ベストだったら跳満だった)。極細スキニーとガニマタを両立させるためにみんな膝が破けてるのもポイント高いです。

シンフォ要素や唐突なキスシーンなど、全体から「おれたちスタイリッシュ」感が滲んでいて私歓喜です。サビでいい感じに唄ってる背後でヘドバンかますやつがいる統率の取れてなさも大学生グループっぽくてステキです。

音楽的なところにもちょっと触れさせてもらってよいでしょうか。メタルコアの必須要項であるブレイクダウン――この映像だと2分40秒から始まるそれは、彼らの場合「デーデーデーデーデーデーデーwwwwwww」とギターだけだと単調でかなりマヌケです。ところがシンフォ要素がかぶさることでそこに強力な縦ノリが発生しています。さらにそのシンフォ効果が薄れてくるあたりでギターソロに移ります。練られてます。最初にもちょろっと触れましたが“音楽的基盤がしっかりしていること”というのは、「びいしき」においては結構重要です。

そんな見所満載の本作の最エモポイントはこちら。「エモ」が全力放出されて気の抜けた表情を捉えた決定的瞬間です。


フゥ…

MISS MAY I~彼女いない歴=年齢

とにかく動画を見ていただきましょう。

THE BETRAYER’S JUDGEMENTと真逆の、この全体に漂う「モテなさ」は一体何なんでしょうか。いやそりゃ具体的に挙げられますよ。ベースのゲイっぽさとか、ドラムのヤケクソっぷりとか。でもそういうんじゃなくて、もう何か、漂ってるんですよ。ああ、こいつらコッチ側の人間なんだなっていう空気感が。誰だバンドやったらモテるなんて言ったやつは。クソが!そしてそこの女、やめろ!「あたしは良いとおもうけどな~」とかそういうカンチガイを起こさせるような発言は!みじめになるだけだろ!

そんな鬱屈満載の本作の最エモポイントはこちら。「モテなさ」が集約された横スライドです。

PHINEHAS~魅せる客観視

ここまでは、本人たちが自分たちの美意識を客観視できていないがためのズレから来る「びいしき」を紹介してきました。次はやや趣向を変えて、本人たちが客観視できているバンドを紹介します。カリフォルニアのクリスチャンメタルコアバンド、PHINEHASです。

自分たちの美意識を客観視できていると、それを演出としてうまく扱えるようになるんですよね。例えばこの動画でいうとライブ映像が挟まれているところが演出。キメ動作のところをピックアップすることで、おまえらそれライブでもちゃんとやってんのかよ!と視聴者に突っ込ませる構造になっています。そしてその「ライブでもちゃんとキメ動作をやっている」という事実は彼らの微笑ましい音楽愛を我々に強く印象付けるのでした。

最エモポイントはありませんが、代わりにもうひと作品どうぞ。


ふざけすぎ。

これで「主の希望を皆に届けるバンドとして結成された」とか言うんだからなんかもうキリスト教わけわからないです。

THE HYSTERIA~辺境を彷徨う

次はメタルコアというよりマスコアなんですが、私が本企画を思いつくキッカケとなったバンドの紹介。ベラルーシのメタルバンドTHE HYSTERIAです。

共有無効なのでリンク先で視聴ください

まず「ベラルーシの森」っていう時点でこみ上げるものがありますが、メンバーひとりひとりに着目していきましょう。

とりあえず目に付くのがベースでしょう。でかすぎるイヤリングに筋肉でパッツパツの半袖スパッツ。服装という点では右ギターのMESHUGGAHティーシャツも影響元モロバレって感じでよいですし、左ギターの普通のチェックシャツもこの集団にあってはむしろ異様です。そしてドラムはベースに半分くらい筋肉をわけてもらったほうがいい。

あとは皆さん突っ込みたくてしょうがないボーカルの挙動。どうしたんでしょうか。大事なものでも落としたんでしょうか。このボーカルの動きと、弦楽器陣の楽器を構える位置の高さ、そしてその音楽性が一致して妙にコミカルな印象を受けます。

最エモポイントはこちら。ボーカルの探し物を一応手伝うフリをするギター。

SUBLEVELS~ストーリー性

お次はアルゼンチンのマスコアバンド、SUBLEVELSです。とりあえずどうぞ。

今回の作品群のなかではかなり玄人向けです。一見強烈な印象は受けませんが、やはり何かおかしい。そのおかしさの一番の理由は、映像のストーリーの意味不明さです。森の奥に消える謎の人物を追いかける形で映像は始まりますが、散々森の中をさまよった挙句最後に出てくるのがよくわからない像。えっ、だから何!?この像見つかったとたんに何でメンバー消えるの!?アルゼンチン史に詳しいかたなら何かわかるのかもしれませんが、平均的日本人にとってはなんか怖そうな雰囲気だけしか伝わりません。本人たちは何か意味があってこういう演出をしたんでしょうが、視聴者に全く伝わらないあたりまさに「びいしき」といったところでしょう。

また、その「びいしき」を実現するために未開の森奥で撮影したせいで、みんなハーフパンツはいてます。そりゃ長ズボンはいて撮影したら汚れてしまいますからね。

玄人向け本作の最エモポイントはこちら。石像発見後にとり憑かれたかのように全方位に変顔をするボーカルです。

OF TEMPLES~最終兵器

さて、ここまでさまざまな形の「びいしき」と「エモ」をご覧いただきました。皆さんかなりメタルコアのびいしきセンサーが発達したとおもいます。というわけで以下の最終兵器作品を持ちまして、本稿「びいしき」と「エモ」メタルコアら編は終了とさせていただきます。

本作の最エモポイントは言うまでもありませんね。それでは最後に皆さんご一緒に!

ドゥルルドゥルルッwwッドゥルルトゥルwwwwドゥルルツドゥルルッwwww

ハッwwwwwwwww

おしまい

いやあ、すばらしいバンドばかりでした。よい作品を届けてくれて本当に感謝です。今回紹介したバンドも、紹介できなかったバンドも、皆その美意識を強く保って今後も活動してもらえるよう祈っています。

なお、THE HYSTERIA、SUBLEVELS、OF TEMPLESはTwitterにてDanbo666氏に教えていただいたものです。ありがとうございます。最近ツイートは控え目ですが、氏の紹介する作品はどれもステキですのでフォローをおすすめします。マスやプログレ、辺境メタルが好きなかたは特にどうぞ。

POLYPHIAに見る「テクニックだけ」という定型批判


歴史から外れたPOLYPHIAの容姿

氏の素晴らしい三段落ちツイートに表されている通り、彼らは見かけからは想像もつかないテクニック偏重のメタルをやっている。

メタルバンドがテクニックを見せつけるのはそう珍しいことではない。ギタリストとしてはYngwie Malmsteenが先駆けだろうか。その後のスーパー・ギタリスト・ブームはテクニック偏愛ギタリストを多く生み出した。ベーシストはよく知らないが、最近ではRED HOT CHILI PEPPERSなんかがバンド小僧の憧れとなっているのだろうか。ドラマーもいろいろいるが、エクストリーム界ではCRYPTOPSYのFlo Monieが有名だ。

さて、以上の名前が出た人たちを見ていただくとわかるように、テクニック系の人たちは長髪だったり坊主だったり、刺青だったりパッツパツだったり、なんというか全体的にアレな容姿である。アレ、というのは、電車で無意識に隣の席を避けてしまうような雰囲気、とでもしておこうか、とにかく一筋縄ではいかない容姿である。もちろんメタル界全体の容姿がアレなのだが、テクニック系の人たちはその中でも特にアレな印象を持たれやすい。それは、技術力の異常性が外面の印象にも影響を与えるからだ。素晴らしい演奏を見せる人たちを我々は尊敬を込めてしばしば“変態”と呼ぶが、その通り、度を超えた技術力偏愛は容易に異常性へと繋がる。その異常性とメタル界特有の飛び出た容姿を合わせて我々はこう思う。「こんなに変態じみた演奏をするからやはり見た目も変態なのだなあ」と。そうして歴史はつむがれ、テクニカルなメタラー=見た目も変態的という何となしの印象が出来上がった。

さて、POLYPHIAだ。流した前髪、低脂肪低タンパクな身体、柔和な笑顔……“変態”とは無縁な、親しげな優男たちがそこにはいる。こいつらが、いざ演奏を始めてみるとテクニカル一辺倒なのである。歴史を無視するそのあり方に、我々は驚き、笑顔で拍手することになった。

「テクニックだけ」が出てくるまで

一方で、こうした彼らの魅力を、むしろ憎々しげに眺めるものたちもいる。メタル美意識を強くもっているBURRN!と燃えるメタル戦士たちだ。高校球児に坊主と恋愛禁止を強制するかのごとく、彼らはこう思う。「チャラい格好でメタルやってんじゃねぇ」、「こんなもんメタルじゃねぇ」。彼らにとってメタルは音楽ではない。音だけではなく、その人となり全てで表現される“生き様”である。そういう意味でPOLYPHIAはまず非メタルであり、“まじめにメタルやってるひとたち”に失礼なのである。

そういうわけでメタル戦士はなんとしてもPOLYPHIAを認めたくない。上記の“メタルではない”論理はあくまでメタルではないとするだけで、音楽的には認めることになってしまう。やはりここは曲を貶めたいところだ。とはいえ、POLYPHIAの技術はまじめにメタルやった末のそれであり、その点で貶めることはできない。必然的に矛先は作曲面に向かう。そして必殺テンプレワード「テクニックだけ」が発動する。

この言葉のイヤラシイところは、作曲能力の低さやそれ以外の惹きつける“何か”のなさが、まるでその技術力の高さによるものだと錯覚させるところにある。真面目に練習をした、という褒めて然るべき点を、マジメに練習しすぎて偏ってしまった、という印象へと繋げてしまう。もちろんそこに具体的な考察はない。ただ印象として、そうである、と断定する。論述として技術も美しさもない愚かな所業だが、その自尊心は醜く保たれる。

テクニックと解釈

もちろん、実際にテクニックだけの音楽もある。その最もな例は、そう、“歌ってみた”などの“してみた系”動画である。ここでいうしてみた系動画とは、既存の曲を素人が演奏する動画をさしている。人気のある人物のものだと再生数が10万回を超えるほどで、特に“歌ってみた”は歌い手という新しい概念が出来るほどのムーブメントとなった。これらの動画の投稿者は基本的に素人であるが、そのためもあり、動画の評価は「素人がいかにうまく演奏したか」という面が大部分を占めているだろう。

とはいえ、これだけしてみた系動画が普及した現在ではおそらく「テクニックだけ」以上の水準を求められる場合もあるだろう。他人の作品を流用して演奏するという点でクラシック音楽はしてみた系動画と共通しているが、クラシック楽器では楽譜を再現する、ないし豊かに表現するといった演奏技法がある程度の水準に達すると、「曲を解釈する」ことを要求される。解釈はいわゆる一般的に言うテクニックとは別の技術であり、それが出来ていないとただ弾いているだけ、すなわちテクニックだけと受け取られてしまう。してみた系動画でも同様で、普及によって全体の水準があがってくると、演奏がうまい以外の付加価値が重要になってくる。そして解釈はその付加価値のひとつになり得る。解釈の個性はそのまま演奏者の個性であり、そうなればもはやテクニックだけとは言われない。

さて、他人の曲を演奏するよりも自作曲を演奏するほうが解釈は意識されない。基本的に自作曲には自分自身のイメージがあり、自然と解釈のようなことが行われている。とはいえそれは明確に行われていない以上、解釈が不十分だったり楽曲にそぐわなかったりする可能性も出てくる。自作曲を演奏していて「テクニックだけ」と批判されるようなひとたちは、作曲技術の低さとは別にこの解釈がうまくいってない可能性がある。逆にテクニックや作曲がお粗末なのに何か惹きつける作品は解釈がしっかりしているとも言える。解釈は楽曲的にはアレンジとして表れるだろうが、アレンジをする前に今一度自分が何をやりたいのか、自分がどういう音楽遍歴をたどってきたのかを思い出してみると良いかもしれない。その上でマジで「ひたすらテクニックを見せつけたい」と思ったら、それは立派な解釈として人を惹きつけるんじゃないでしょうか。

と、ここまで書いてきて、やはりテクニックだけで許されるのはプロ未満の演奏者だけなのかな、という感じがしてきた。改めてPOLYPHIAを見てみると、なるほど彼らはレコード会社と契約しているわけでもなく、現状セミプロのような位置だ。現時点ではそのことと「こんな顔立ちでこの演奏wwww」という驚きでおもしろがられている感はあるのかもしれない。ここから一歩先に出てプロの土俵で勝負したときにどうなるかというところだろう。

現在彼らはボーカルオーディションを行っている。ここで彼らの曲を良く理解して表現してくれるボーカルが選ばれれば、彼らの楽曲に自然と解釈が付加されるだろう。ぜひよいボーカルを見つけて欲しい。

ちなみにボーカルオーディションについては下記記事がわかりやすいのでどうぞ。

Guitar Idol ギターアイドル 非公式ファンサイト Polyphiaボーカルオーディションを見てみる – 2013-9-15