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ROSETTA『The Anaesthete』(Post Metal) : “中衛の魔法も得意な槍使い”感。

カバー写真

2年前の『A Determinism of Morality』を聴いたときの端書に「中衛の魔法も得意な槍使い。中盤あたりまでは活躍するが後半は中途半端で使えない。限りなく0点に近い75点」って書いてあって笑った。当時の私は重低音に傾倒してて、ポストロックの浮遊感なんかを積極的に取り込んでいるバンドを低く評価していたんだっけ。

さて、本作『The Anaesthete』でもその中途半端な印象はぬぐえなかった。基本的に前作とやっていることは変わらない。反響単音ギターで空間をつむいでいき、その感情を重いスラッジパートで発散する。良くできてはいるんだけど、これ、典型的なポストメタルの形式なんだよね。もうこの手の音楽今の時代褒めてはならぬ!という思いはあるにしろ、結局こういうのが大好きな私ですが、それでもなぜ彼らの音楽はこうも心に響かないのよ。

それは緩急のなさが故です。

確かに単音反響アルペッジョと重低音リフという点では緩急がある。けど、それ音の強度っていう部分だけでなんだよね。緩急っていうのは強度だけで作られるものではない。なぜポストメタルがアトモスフェリックメタル(雰囲気メタル)とも形容されるかを考えてみて欲しい。そう、雰囲気が重要なんだ。そして彼らの作品は、その雰囲気の変化が薄い。

その理由は、はっきり言ってしまえば、音作りが粗いからだ。

たとえばドラムのタム。本作はタカタカというタムまわしが非常に目立つ。静穏パートだろうとおかまいなしにタムをまわしてくる。このタムまわしはISISもよく使っているものだが、ISISと比べると彼らのその音への気遣いのなさが良く見えてしまう。

ISISの、例えば「Garden of Light」は静寂パートでひたすらタムが鳴っている曲だが、その音はかなり硬質。空間に大きく干渉せず、隙間は残ったままだ。ギターは主に2種類で構成されている。たっぷり反響を効かせた音と、豊かな中低域でメロを奏でる音だ。前者はその反響でドラムの音の隙間に入り込み空間を補填する。後者はドラムと反響ギターの中間程度の音質でドラムと反響ギターの親和性をあげている。こうして反響の効いた、しかし芯の通った静寂パートを形成している。スラッジパートに移ったあとはタムまわしは見られなくなっており、そこでもメリハリがついている。

それではROSETTAはどうか。ひたすらタムをまわすドラムの音はベシャっとしていて空間を大きく制限してしまっている。反響ギターや柔らかな音のベースが空間を形成しようとはするが、このドラムが邪魔をしてうまくいっていない。そしてその空間形成の失敗は、静寂パートと激情パートの雰囲気の分離も曖昧にしてしまう。曖昧になったその二つのパートで、相変わらずタムをまわしまくるもんだから、なんかドラムがずーっとタッタカタッタカなってる印象になる。結果、緩急を感じなくなってしまう。

この平坦な曲編成と驚きのないテンプレ進行があわさって、良く出来ているが心には響かない見事な75点バンドが出来上がっているのであった。

まだある。本作では彼らの持ち味と思われていた空間フレーズを使わずに徹底追尾NEUROSIS影響下のドス黒いハードコアを聴かせる曲が#4「Oku / The Secrets」、#6「Myo / The Miraculous」、そして#8「Ku / Emptiness」と3曲入っている。これがなかなかかっこいい。ただ、3曲は多すぎた。前述の緩急のなさとも合わさって、アルバム全体としては結局どうしたいんじゃ、という中途半端さに繋がってしまっている。

そう考えると不満はどんどん出てきて、まずなんで日本語とかいう辺境の言語を採用したくせに歌詞を掲載しねえんだよ、何も読み取れねえだろ、というところとか、日本語を採用したくせに曲からは全然ジャップの「空気読む」村気質が感じられないし、そもそもこれ中国と日本混同してんなっていう曲名だし、クッソだせえアートワークやブラックメタル風のロゴについてなんかづらづら言い訳してるけど言い回しが難しいから自分の英語力では読解できなくて悔しいとことか、なんか<自殺願望者からメール来て、ROSETTAの音楽聴いて希望湧いたとかいうからその辺をテーマにした(*1)>とかそれどこのRADWINPSだよとか、ああ、ああああああーーーーーーー!!

というわけで本作の端書は「中衛の魔法も得意な槍使い。中盤あたりまでは活躍するが後半は中途半端で使えない。しかも中途半端に主人公の心情に共感していけすかない。限りなく0点に近い20点」に決定!(55点ぶんは言いがかり)

スラッジパートがない#1「Ryu /Tradition」やウタモノに突っ切った#5「Hodoku / Compassion」、あと再度登場するけどドス黒い#6「Myo / The Miraculous」なんかはかなり好きなんだけどね。各方面の曲作りの才はあるのに、組み合わせたときにショボチンになってしまうとはなんとも惜しい。とりあえずプロデューサーを変えてみてはいかがでしょうか……。

*1Interview: Rosetta | Demon Pigeon – 2013-9-30

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