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PALMS『Palms』(Post-Rock):アイシスじゃナイシス。

3秒でわかるISISの解散とPALMSの結成

ターナー「もうマヂ止み……やりたぃことなんて無いしす……」
コロッシア「わかる」
ギャラガ「それな」
カアイド「えっ」
ハリス「えっ」
メイヤー「えっ」

三人「まだバンドやりたいね…」
チノ「まーぜーてー」

本文

とりあえずすいませんでした。

さて。やけにベタなPALMSというバンド名の由来について、ドラマーのHarrisは以下のように語っています。重要だと思うのでちょっと長めに引用。

I think that’s one of the hardest parts about starting a new band is finding a name. (…) To me palm trees can represent something inviting and soothing. They sometimes represent calm and beauty. They can also be mysterious and haunting. They make eerie noises when the wind blows though them. They’re tall and skinny and look down at you at night. I thought it fit well with the music. We can be pretty and nice, but also haunting and aggressive. Everyone liked the name and we went with it.

新しいバンドを始めるにあたって、バンド名を見つけるのはかなり難しいことだと思ってるんです。(中略) 自分にとってヤシの木っていうのは魅惑的なもの、心を和ませるものです。ヤシの木は平穏と美しさを表していますし、また神秘的で記憶に残るものでもあります。風が吹けば不気味な音を立てますし、夜にはその細長い体で我々を見下ろします。そういうところが自分たちの音楽にとても合っていると思ったんです。このバンドの音楽は心地良くて繊細で、それと同時に心に残ったり攻撃的だったりしますから。みんなこの名前を気に入ってくれて、これで行くことになりました。(*1)

ここでバンドの音楽を示すキーワードが出てきました。〈…pretty and nice, but also haunting and aggressive…〉の部分ですね。この言葉を覚えておいてください。

さて、ISISはよく静と動との対比で語られます。確かに彼らの作品は主にアトモスフェリックパートとハードコアパートで構成されており、そのふたつは明確に切り替わっていました。例えば「Ghost Key」なんかはわかりやすくそういう曲になっています。もちろんこれだけで語れるほどISISの作品は単純ではありませんが、静と動という観点で言えば、平静状態から激情状態に行くその落差が基本になっていることは確かです。

一方でPALMS。ISISのように平静状態から激情状態へと推移するという構造自体は共通しています。ただ、彼らの場合それが段階的になされます。例えば#1「Future Warrior」はイントロ→+歌→+歪みギター→最大状態と、かなりわかりやすく段階を踏んで盛り上がって行きます。

しかし単純な落差という意味では明らかにISISのほうが高いですし、激情状態そのものの強度もグロウルというわかりやすい部分がある分ISISのほうが上です。それでは、推移の落差ではなく、その滑らかさ、という点ではどうでしょうか。実は、これもそれほどではありません。確かにISISと比べれば段階的であるためゆったりとしてはいます。ただ、たとえばANATHEMA『Weather Systems』と比べると確実に劣ります。ANATHEMAの曲のほうが長い時間をかけて昇っていくため滑らかで、しかもその到達点も高いです。ANATHEMAの当該作品は超名盤であるとはいえ、PALMSのメンバー編成から言えばそうレベル差のある比較ではないでしょう。というわけで本作は、平静→激情への推移という観点で見ると、どうにも中途半端な印象を受けます。

しかしこれは、静という極点から動という極点へ推移していく、2次元的な推移で考えたときのみの話です。彼らにとって重要なのはその極点同士を繋ぐ線、あるいは面ではなく、むしろその奥行きなのです。そしてその奥行きに大きく貢献しているのが、他でもないChinoの豊かな歌唱力なのです。つやっぽさと力強さを、曲に合わせて自由に行き来する彼の歌が、時間をx軸とし盛り上がりをy軸とする二次元スペクトルに、z軸を加えているのです。もともと音の奥深さには定評があったISISですが、こと歌に関してはグロウルとお経の2段階しかありませんでした。それがChinoというボーカルに置き換わった。当然曲構成は変わってくるわけです。どう変わったかというと、前述の通り段階的になった。歌という観点で再度この段階的な変化を見てみると、なるほどこれはいわゆるウタモノの構成になっています、すなわちAメロ、Bメロ、サビ、という構成です。

通常ならばそれぞれのパートによって場面が転換しますが、ISISの特徴である静動変化によって曲の連続性が保たれています。ボーカルの深いリバーヴや、とにかくシンバルで隙間を埋めたがるドラムもその連続性に寄与しているでしょう。

というわけで、アンビエント的な音の広がりとハードコア由来の攻撃性、そして一般的なウタモノのわかりやすさを兼ね備えている本作は、なるほど確かに彼の言うとおりPALMSであったのでした。

追記。正直に申し上げますと、わたくしDEFTONES1曲も聴いたことありません……。単純な無知です……。そして艶っぽい声からさぞかしイケメンなのだろうと思ったらなんだこの体重は。伊集院光の名前詐欺かよ!

*1Bearded Gentlemen Music ? 16 Questions with Palms’ Aaron Harris – 2013-6-18