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KYLESA『Ultraviolet』(Sludge Metal):“強度”と“ゆらぎ”のスラッジ

カバー

彼らを知ったのは2009年の『Static Tension』で、確か「ドラムふたり編成の変則ハードコア!」みたいな煽りとジョジョ感のあるアートワークにつられたんだっけ。ややメンバーや担当の変更があったようだけど本作でも相変わらずツインドラムを採用している。

このツインドラムについては、ギターやプロデュースを手掛けるPhillip Cope氏は〈単純な話、ヘヴィにしたかっただけですよ(*1)〉と冗談混じりに語っている。だが、このツインドラムの効果はそれだけではない。

彼らは基本的にはブリブリッとした歪みギターと太いリズム隊によるスラッジ/ストーナーをやっている。特にツインドラムでなくても成立はする骨格ではある。ただやっぱり、わざわざドラムをふたりにやらせているだけあって、その構成はよく練られている。

現代のバンドにおける音の配置は、左右ステレオにギター、中心にドラムとボーカル、ベースはいろいろ、というのが一般的。それが彼らの場合反対で、左右ステレオでドラム、中心にボーカルとギターというのが基本編成になっている。この構成だと、まず中心にメインリフが来てガッツリ脳に入って来るのでギターリフの強度がかなり高くなる。ただ、ギターの“壁”としての役割はなくなる。そこに彼らはツインドラムを持って来ている。ドラムは持続音を出せないので、通常ドラムで“壁”を補填する場合、ブラストやツーバスで音の隙間を埋めてやらなければならない。一方彼らはそうではなくて、ふたりのドラマーの叩き方やタイム感の差によって生じる“ゆらぎ”によって“壁”を演出している。加えてボーカルワークにしても見事だ。音程の変化を抑えたリバーブの効いたお経ボーカルを基本として、ややシャウトに近い男性ボーカルと通常歌唱の女性ボーカルを使い分けている。これによる効果と意味はいくつかある。(1) 歪みの少ないボーカルは同じく中心に配置されているギターと競合しない。(2) ゆったりとした音の変化とリバーブが“ゆらぎ”を増幅させる。(3) 男女の差で“ゆらぎ”の強度を演出し分けている。

というわけでツインドラムは単純な音の重さだけでなく、独特の雰囲気の形成にも貢献している。

さて、そうした強度とゆらぎが作品中でどのように働いているかを、私の知る直近のフルアルバム三作で見て行こう。まず『Static Tension』。こちらはしっかりとしたハードコアを聴かせている。強度が主に効力を発揮し、ゆらぎはその強度に特性を加えている。次は『Spiral Shadow』。前作から1年程度で発表された本作は、NEUROSISなどのアトモスフェリックハードコアの影響を感じる民族的なドラムパターンで沈み込むようなグルーヴを鳴らしていた。これは前作よりもゆらぎが強く出ている。一方で強度もそのままであり、ゆらぎと強度が等しく一体となっていると取れる。最後に本作『Ultraviolet』だが、それまで部分的にしか見られなかったサイケデリック/ストーナー要素がかなり色濃く出ている。ハードコアなリフと同じくらいに反響ギターが使われている。このサイケ要素はゆらぎとかなり相性がよい。前述の通り、ゆらぎはふたつのドラム音から発生する。ふたりのドラマーのズレが、ゆらぎへと繋がる。サイケデリックな音楽では音が遅れてやってくるディレイが多用される。これはその効果に多くの人が“幻覚っぽさ”感じているからであろうが、このツインドラムのランダムディレイとでも呼ぶべき音は、なるほどはっきり脳を惑わせるのである。

スラッジとストーナーは同列に語られることも多いくらいに相性の良いジャンルではあるが、本作は上記の構造によりその二つをかなりうまく親和させている。ストーナー/スラッジ好きはもちろんのこと、サイケデリックロック好きにもアピールできる内容。グロウルもないし、MASTODONやBARONESSと並んで、パンピーにもオススメしやすい逸品。

*1 METAL STROM「Kylesa interview」 (06/2013)

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