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INTER ARMA『Sky Burial』:ジャンル詰め込み型重黒メタル(Sludge Metal)

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メタルってのもまあ割と音楽的に飽和してんだろうなあ、ということを思ったりもします。「メタルなんてもう終わった音楽だ」と言いながらもメタルから離れられない哀しき老害になりつつあります。一方で、ネットの発達でミュージシャンが得られる情報量が格段にあがったこともあるからか、最近はひとつのバンドが雑多な要素を内包するような傾向にあり、そこから新しいものが生まれてきてもおかしくはないという期待感もあります。

今回はそんな情報化社会系ジャンル混合バンド、INTER ARMAのデビュー作『Sky Burial』の紹介です。メタルやハードコアなど、うるさいものなら幅広く取り扱っている名門Relapseから発売。

まず聴こえてくるのは重々しいドゥーミーなリフ。その雰囲気そのままにドラムがブラストを叩き出し、反響の効きまくったボーカルが喚き出します。ブラックドゥームとかデスドゥームとかその辺の音です。そういうのが好きな私はこの時点で垂涎状態です。そのうえドゥームとブラックの両立の具合がよい。ドゥームのドスの効いた凄みとブラックの禍々しさをうまいこと引き出している。低音域を中心にしたリフレインにDEATHSPELL OMEGAじみた不穏な単音フレーズを乗せる。肉感のあるボーカルにリバーブをかましまくることで、低音と単音両方の雰囲気にうまいこと馴染ませてやる。鈍足時のドラムのおかずの手数の多さと揺れ具合も、重さに殺伐さを付け足してて良い感じ。アンビエント部分も挟んで、この曲だけでもメタルとして良作の予感が漂います。

ただ、これだけじゃあ終わりませんでした。続く曲群「The Long Road Home」では、いっきなり雰囲気が変わりやがります。余韻のたっぷり効いたギター演奏に何やらキーボードまで鳴らし出して聴き手を混乱させます。え、え、いつの間にプログレバンドの作品に切り替わったの!?そんな風に思っていると頃合い良くズダズダギャーと始まり、ああやっぱりブラックメタルだったよ、と胸を撫で降ろせます。でも待って、さっきまではブラックドゥームだったの……。その通り一曲目の重黒さはどこかにいってしまい、そこには疾走と絶叫と感情のトレモロ若手ブラックが発生しています。

続く#4「Destroyer」~#5「’sblood」ではまた一転し、NEUROSISに近い密教感のある鈍重メタルに。#6「Westward」ではやや攻撃性を強めた肉感のあるハードコアを鳴らします。アコギ主体の小曲を挟んで最後は表題曲#8「Sky Burial」。あー、NEUROSIS好きなんだろうなー、っつうスラッジで締め。かと思いきや最後に最近のMASTODONみたいなテクニカル系のフレーズをかましてきます。

作品を通してこれだけ色々詰め込んでもアルバムとしてはある程度まとまりを保ってます。その理由のひとつは「Sky Burial」という題材。これはボーカルのPaparo氏が持ち込んだ先住アメリカ人の詩などがもとになっているようです(*1)。ギタリストのDalton氏もそれが全体の題材に合うと感じたとのことで(*1)、なるほど作品全体に民族感が通っています。そしてその民族感が音楽的にはやや異なる曲群にまとまりを付加しているのでしょう。その「民族感」は単純に曲のフレーズからも感じられますが、音の質感がやや分離の悪いアナログなものであることからも来ているでしょう。

そして題材提案者のPaparo氏の器用さも作品のまとまりに寄与しています。1曲のなかで細かく声色を変化させることで、曲調の変化に対応しながら一定の属性を作品全体に通しています。提案者であるため、曲調の意も汲み取りやすかったためこうした細やかな変化がなせた、というのはあるでしょう。また、前述した過剰とも言えるボーカルリバーブも、全体のまとまりという点では良い方向に働いています。全体のまとまりとは別の話になりますが、リバーブは効かせ過ぎると貧乏臭くなりがちです。ただ民族とBurial(埋葬)という題材には残響効果は馴染むこともあり、ボーカルの過剰なリバーブもある程度整合性が取れている点はうまいこといっているなあと思いました。

正直、最初は自分たちの好きな音楽をただ詰め込んだらこうなっただけなんじゃねーのか、と思ったんですが、作品の統一感を考えるとそうでもないようです。実際にインタビューでギタリストのDalton氏は以下のように語っています。(*1)

…I do think being able to eschew typical genre formats and strive for something a little further outside the normal spectrum of heavy tunes is important. I don’t think we’re necessarily pushing the metal arena into new territory or anything like that, but if bands don’t try new things then music tends to stagnate.

ちょっと細かいニュアンスがわからないんですが、ともかくジャンルの典型的な型を避けることを重要視しているようです。また一方で、メタルを新しい領域に押し上げることは必ずしも必要ではない、とも。既存のメタル領域のなかで停滞せずに進んでいく精神でこの作品は作られたようです。新しいことをやろうと意識しすぎると、単純に作品としての質が低い、単なる飛び道具で終わってしまうこともありますが、彼らに関してはそういうことはなさそうです。

正直に言えば、本作に出てくる要素自体はメタル界隈で既に使い古されたものばかりです。ただメタルという領域のなかで、それでも前に進もうとする姿勢は応援していきたいですし、そういう譜面以外の部分がやがて音楽に宿ることがあるのだと、まだまだ思っていきます。

革新性とかそういうの抜きにしても、単純に重い音楽好きとして評価できる作品ですので、以下を試聴して気に入ったらぜひ購入してみてください。

  1. *1 Echoes And Dust「Interview: Trey Dalton from Inter Arma
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