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VHOL『Vhol』:蜜月ブラックメタル。(Black Metal)

カバー画像

2011年7月26日、サンフランシスコが誇るブラックメタルバンドLUDICRA解散。

  1. Aesop「ぁたしたちズッ友だょ(涙)」
  2. John「きっとまたいっしょにブラックメタルやろうね(涙)」

その後、AesopはAGALLOCHやWORM OUROBOROSでその想いをドラムにぶつけ、JohnはHAMMERS OF MISFORTUNEでその日のために技術を磨きました。そして2012年10月(*1)。ついにVHOL結成。二人の誓いは1年越しに叶いました。ちけぇよ!それぞれの親友の女子を連れての活動です。

Aesopのズッ友、HAMMERS OF MISFORTUNEのSigrid嬢(なぜかベースで)

Johnのズッ友、YOBのフロントマンMikeちゃん(三つ編みヒロイン)

この手の実績のあるひとらが集まったプロジェクトはスーパーバンドとよく言われますが、必然的にそれぞれの経験を引き合いに出されます。この件に関してはAesop氏は<そういう言い方しないで。いまやってる他のバンドも大好きだよ?でもあたしたちのVHOLは特別なんだから!>(*2)と言っております。音楽性に関してもなるほどその通りで、彼らのほかの活動名義とはかけ離れた音を鳴らしています。

その音楽性とは!めんどうなんでAesopの言葉を引用します。レビュワーにあるまじき意識の低さ。いいんだよ!うちのウリはコレなんだよ!

間違いなく、80年代のスラッシュやハードコア、あと昔のメタルへの愛を引き出しましたね。ただ、なんか変なものを作ってやろうっていうのは念頭に置いてました。(*2)

つうことで本作はブラックメタル+古典メタル/ハードコア/ロック、大きくくくってブラックンロールなわけです。あ、いやFacebookにDISCHARGEの文字がデーンとあるし(*3)、もちろんクラスト感もありますが、まあそれもふくめて、大きく。で、この手の音楽って、組み合わせ自体わけわかんなさを孕んでいます。思想面は抜きにして、音楽的に言えば、ブラックメタルが鳴らすトレモロと高速ドラムは冷徹で、いわゆるノリっていうものがない。だからこそ“ブラック”メタルであり、白黒のジャケットが多用されたんですね。そこにノリノリの古典系を足しちゃったのがブラックンロール。「こうすると脂が落ちてヘルシーになるんです」っていって鶏胸肉を湯通ししたあとにそのお湯を味噌汁にして食べたみたいな、それ、意味ねーじゃん!みたいな。この例え、意味わかんねーじゃん!みたいな。ともかくそういう不整合を含んでいるジャンルでした。

そんな不整合をやり通すには、なにかしらのカラクリが必要です。VHOLにおけるそのカラクリは圧倒的な喧騒。ロックからハードコアからパンクからブラックメタルからめまぐるしく移り変わる怒涛の展開でまず加点。ブラックメタルらしい粗い音質でまず加点。一発録りっすか?っつーよーな粗い演奏でまた加点。特にチンチンライド使いすぎなうるせえドラムと、もともとベーシストじゃないからこそかSigrid嬢のベースの揺れ具体がいい感じ。あとは朗々とした歌ときったねえ声を重ねるような、細かいアレンジも加点。そしてその全体的な音の粗雑さが、前述のめまぐるしい展開にむしろ滑らかさと整合性をもたらしている点は特筆すべきでしょう。

もちろん前述の「変なものを作ってやろう」っていう意気込みのとおり、そういう喧騒は明らかに意図されたものでしょう。AGALLOCHWORM OUROBOROSはむしろ丁寧に雰囲気を作っていく形だし、HAMMERS OF MISFORTUNEは引き締まったプログレッシヴだし、ふつうに作ったらそれなりに整ったものになるでしょう。それが、粗い。その粗さは、彼らの対象の音楽に対する愛を引き出した結果の要素である。だから作り物の意図にありがちなあざとさはありません。

あえての音ではあるけれど、必然の音でもある。熟練の粗雑さが感じられる本作はとてもステキ。さすがに初期衝動っつーよーなカンジでもないですが、新バンドの蜜月感のあるハッチャケぶりで、かつキャリアも感じる。こりゃあ2013年を代表する名盤だなーとおもいました。変り種ブラックメタルや騒々しい音楽が好きなかたはぜひ。

  1. *1 VHOLのFacebookページの最初の投稿が10月8日
  2. *2 SSG music「A Voice from the West: An Interview with Aesop Dekker」- 10 Apr. 2013
  3. *3 SSG music「VHOL Facebook基本データ」- 2 May. 2013
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