OZZFEST JAPANへのももいろクローバーZ参加にメタル戦士が激怒した理由

「なんでそんな怒ってんの?」

まずももいろクローバーZ側代表として以下の記事を。

それに対するメタル側からの記事。

でもそれはすでに”日本版Ozzfest”が発表された時に感じたワクワクじゃない。聖域が崩され、ただの音楽のお祭りになってしまった一般向けになった成功。

なるほどキーワードは「聖域」。今回BURRN!と燃え上がるメタラーたちが一斉にメタルジャスティスの名のもとにメタルハンマーを振りかざしながらマノウォォォォ!!と咆哮するメタル戦士にクラスチェンジしたのは、OZZFESTは彼らにとって聖域であったからで、これは聖戦であるのです。

この聖域っていうのは個々人の背景によって大きく変わっちまう。だから他人の、特に異文化圏にいる他人のそれはとても理解しにくい。異文化の聖域ってのでわかりやすいのが宗教で、たとえばMARILYN MANSONがやっていた、アンチクライストスーパースターを名乗って聖書を破くという演出が、敬虔なクリスチャンにとってどれほどエグいもんなのかは一般的な日本人の私にはピンと来ないです。ただのミュージシャンの「過激なパフォーマンス」じゃん、街ぐるみでライブ拒否されるほどのこと?まっ、さすがマンソンって感じだけどね(笑)って当時思ってましたもん。ああもうこのクソガキ(痛み)。

あとは、イスラム教のひとが豚を食べないってのは知識としては知っているけれども、豚肉に対して、豚に対してどういう感情を抱いているのか実感としては知りません。

じゃあだからと言ってイスラム教徒をトンカツ屋に連れてって食べさせようとしたら、そりゃ怒られるんじゃないですか。「日本ではトンカツ食べるのは当たり前。それにここのトンカツは本当においしい。それなのに食べないなんて狭量だ」って、そういう問題じゃないですよね。

もちろんこれは極例です。極例ですが、構造的には今回の件と同じだと思います。「アイドルが他のメタルバンドを差し置いて日本初のOZZFEST出演」はメタラーにとってはあってはならない禁忌だった。だからメタラーが怒り狂った。その怒りや行動の是非は別として、ともかく燃え上がるメタラーたちにとってOZZFESTっていうのはそういうもんなんだっていうことは、知識としてまずわかっておいてください。

異文化交流のためにゴーリキさんを呼ぶ

メタルとアイドルっていうのは基本的に異文化です。先のイスラム教の例のように、異文化交流する際には相手の文化を尊重するのが大切です。そのためには相手の文化を知りたい。聖域感覚の話であれば、相手にとってのそれが自分にとっての何に該当するのか類似例を探してみるのがひとつの手でしょうか。その際に同じ行為を自分に引き寄せるのは適切じゃあない。一般的な日本人にとっては豚肉食べるのはフツウだし、戒律上食べられないものも基本的にはない。だから、類似例として、かつ怒り具合を基準にしてみましょう。はい大切なものを思い浮かべてー。それをブチ壊すような出来事を思い浮かべてー。それそれ。たぶんそれ。それが聖域で禁忌。え、なに、「この俺に大切なものなんてない。人生なんてただの暇つぶしだしなw」だって?ああ、そういうかたは必要ないのでその辺でヒマでもゴクでもツブシててください。

ここでももクロ側の聖域もちょっと考えてみましょう。少なくともオジーが共演ってのは違うですね。彼女らはそういう自由さを売りにしてるところがあるから。というわけでハイ。ここで強力な助っ人に来ていただきました。あ、イヤな予感してますね。そうです、皆さんご存知、原作をアレしてしまう女優として名高いあのヒトです!ゴーリキさーん!

「どうもー!」
――今回の標的はももいろクローバーZということですけれども。
「ええ、今ノリにノッてますね。私ほどではないですけど(笑)。でも今回のお話はとってもありがたいと思ってます。だから全作一気聴きしました!Youtubeで」
――おおっと!かましますねー。それではどうなさいます?
「電撃加入!」
――それはちょっとファンタジーすぎるのでは……。
「そうですか?まあ私もヒマではないですし。ライブにお邪魔させてもらうくらいでしょうか」
――んー、それだとイマイチ禁忌感ないんですが。
「じゃあ、青い衣装着てきます!『青が足りないとおもったので』って(笑)」
――あ、それはヤバそうですね。
「でしょ!」
――でも初期ファンだけな気もします。
「じゃあ今後の私のライブ活動のために、バックダンサーとして働いてもらおうかな!ももいろクローバーGT(ゴウリキタチ)として全員短髪!」
――もうそれでいいです。
「じゃ、次の実写化があるからまたね!7月発売のデビュー曲よろしくね!」

冗談が過ぎました。ともあれ聖域が侵される怒りがなんとなくわかってもらえたでしょうか。

一方的に理解を求める、というのは交流とは言えません。互いの文化の違いを知る。今回であればOZZFESTに対する認識の違いを知る。そのうえで認めるところは認める。認められないところは認めない。決定してしまった以上、その辺の意識表明としては参加不参加くらいしかやり方はありませんが、それでもそれは素晴らしき異文化交流と言えるでしょう。もちろん、アイドル好きなんかと、メタラーなんかと交流なんて必要ない、おれは直感に身をまかせるというのであればそんなことしないで思う存分罵りあいましょう。モノノフとメタルウォリアーでの聖戦です。信念のために剣を振りかざし、互いに血を流す覚悟があるのなら、それを止められるものはいません。そして決してそれは悪いことだとも言えません。戦争の果てに学ぶことも多いでしょう。

倒すべきはももクロではなく……

ただし、ここではっきり確認したいのは、ももいろクローバーZは聖域を侵した主体ではないということです。どういう経緯で出演が決まったかはわかりませんが、彼女らに仕事をアレコレする権限はないでしょう。アイドルという仕事を選んだ以上仕事の責任の一端は受けなければならない、というようなアイドル論もあるでしょうが、まあともかく今回の件での主体でないことは間違いない。じゃあ誰が主体だったのか。前述の通り実際のところはわかりませんが、一般的な認識としては日本のプロモーターであるH.I.P.、そしてSharon OsbourneとOzzy Osbourneです。誰がどの程度関わっているかはこの際問題ではありません。Osbourne夫妻がももいろクローバーZの出演を承諾した可能性がある、という事実が重要です。

誇り高きメタル戦士たちがDIR EN GREYやMAN WITH A MISSIONに歯軋りしながら守り通していた聖域は、実は聖域でもなんでもなかった。その事実を、その聖域を聖域たらしめていた張本人たちから突きつけられたかもしれないという不安。自分の信念の根本が崩壊するかもしれないという不安。消化するには重過ぎるそれは、直情的な「ももいろクローバーZへの怒り」へと転嫁された。

これが、今回の騒動においての、すげえ重要な点なんじゃねーのかな、とおもってます。

ももクロOZZFEST参加の成否

さて、私はBLACK SABBATHを始祖とする遅暗いメタルを好き好んでいる身なので、日本初のOZZFESTがメタル戦士たちにとってどういう存在なのか多少わかります。一方そもそも根っこがヴィジュアル界にあるのでむしろメタラーからは迫害される側で、メタラーの狭量さは身に沁みてわかっているつもりです。だからこそ今回の一件を知ったときは「あ、ヤベェこれ」っと思ったですね。同じメタル系のフェスでも、LOUD PARKは彼女らのファン層や活動幅を広げる意味で、すげー良いことだったと思うんですよ。アニメタルUSAっていう飛び道具にゲスト参加っていう、うまいガス抜きもしてたし。ただ、今回はワケが違うぞ、メタラーの怒りを買うぞ、炎上するぞ、と。そして炎上は完全に悪手だぞと。んで実際炎上してる。プロライターも敵に回すほど炎上してる。ももいろクローバーZはその純粋な一生懸命さが魅力らしいのに、炎上とか、あるいはメタラーに迫害を受けた「被害者」属性とか、ノイズであって、健全さが失われるだけの邪魔な要素にしかならないんじゃないのかなあと。だから現時点では、やっぱり失敗だったんだろうな、っつう気はします。もちろんライブが想像以上に良くて、あと周囲の諌める声を察知して、多くのひとが手のひら返す可能性も大いにあるとはおもいますんで当日に注目ですね。

あとがき

長くなりましたが、以上が現時点でのOZZFEST JAPAN 2013に対する私見です。

ちなみに危惧すべきメタラーによるももクロ側への迫害行為ですが、以前似たような事例があったので紹介しておきます。

1998年8月に富士急コニファーフォレストで行われたMARILYN MANSON「BEAUTIFUL MONSTERS TOUR」。その初日の8月7日に当時の人気ヴィジュアル系バンドPIERROTが出演しました。それに対しネット上でファンをつぶしてやるというような物騒な書き込みがあったのですが、実際にライブが始まると洋楽ファンはすみっこのほうでバンギャの振り付けの真似をしている程度で「そ、それだけ?」という感じだった、というのがボーカルのキリト談でした(キリト『思考回路』に顛末が書いてあります。手放したので正確な引用でなくて申し訳ないです)。もっとも、相手がバンギャかアイドル好きかではメタラーの態度も変わってくるような気もしますが、ともかくOZZFESTでも両者ともに物騒なことは起こさずに「そ、それだけ?」で終わるように願っております。

今回の件はフェス、ひいてはライブそのもののあり方にまで関わる事案で、まだまだ語り口はあるとおもうので今後も注視していきたいです。ちなみに今後「まだやってんの?」「もう飽きた」みたいなクール系音楽通の登場が予想されますが、最初から興味がないならともかく、そういう上から目線でありつつ、その実音楽を流行として消費しているようなひとたちで、かつこういう指摘を受けると「音楽なんてしょせん趣味だしなにムキになってんのダサい」とか言っちゃうような恥ずかしい連中はウンコ投げつけたくなるくらい私が嫌悪感を抱く対象ですので目にしたら教えてください。その場で脱糞します。でも投げはしません。

事後感想記事: OZZFEST JAPAN 2013 ~ももクロという正義、メタラーという悪。~