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CULTURA TRES『El Mal Del Bien』:ベネズエラの黒い安息日。(Sludge Metal)

カバー画像

好きなバンドの新作に先立って旧作レビュー!とか言う検索流入アップを見込んだ小賢しいマネをやってみたら、前回文字数的な意味でとぉーってもステキな記事が書けました。調子に乗ってその続編です。

そんときはベネズエラっちゅう出自に焦点をあてて「内外両方を向いた奥行きのある怒りが歌詞と曲双方にあらわれている(キリッ)(自らの首を絞める音)」なんてぇ論旨を展開してみました。ベネズエラという地域の特色と音楽性からその結論を導いたわけですが、本作をレビューするにあたってインタビューを読んでいたらどうもなかなか的を得ていたようです。……あ、あ、疑ってますね!「インタビューを読んでから件の論旨を考えたのにそれをさも自分で考えついたかのような言い訳がましいことを書きやがって」、そうおもってますね!ちがいます。神に誓って違います!無神論者が神にすがって否定します!すごいのか、それ。

つうわけで今回の標的は神です。まず作品名が『El Mal del Bien(神の悪)』ですからね。歌詞にも頻繁に神に関する言葉が出てきます。なんというか、神の御名下にいろんなことが正当化されてるのが気に食わないようです。

…governments still invade, manipulate, rob and murder individuals; all condoned by ‘god-given rights’(*1)
(過去にアメリカ先住民に対して侵略を行った)政府は未だ個々の侵略、操作、強奪、そして人殺しを行っています。そして、すべて「神の光」によって許されている。

ベネズエラはスペインの植民地時代の影響で人口の90%以上が名目上カトリックということです(*2)。侵略者たちの思想に染まって、あるいは甘んじて生活し、あまつさえ先祖にとっては侵略でしかなかったアメリカ大陸発見の10月12日を「祝日」として祝ってしまう自国民たちにガマンならないようです(*1)。スペイン語の歌詞が増えていること、そして<自分たちの音楽が武器だとしたら何を破壊する?>という質問に、<無知と無関心>と答えていることからも、少なくとも本作を発表した前後では侵略者たちへの外向けの敵意ではなくて内向けの啓蒙的憤怒が主な考えかたになっていると言えるでしょう(*1)

以上のように、神という概念を取り扱っていること、向いている方向が内側であることの影響もあってか、ハードコア的肉感のあった前作と比べると、単純な攻撃性が抑えられた音楽性になっています。突進パートは減り、鈍重パートも全体的にテンポが遅くなりました。ボーカルはメロディを大々的に取り入れ、古典的なドゥームメタルに近づいたように思えます。そういう意味でおまけとしてBLACK SABBATH「Black Sabbath」のカバーが入っているのはとても象徴的。なので、相変わらずおもしろみはあるものの、かなりズルズルでダルダルなので自覚者以外には前作『La Cura』のほうがおすすめです。

個人的にとても腑に落ちたのが彼らが影響元にALICE IN CHAINSを挙げていること(*1)。ドゥーム/スラッジ/ストーナーの割にいわゆるMELVINS、SLEEPフォロワーとちょっと異なる退廃的な雰囲気をかもしだしているのはそういうことだったんだな、と。また、THE MARS VOLTAやGOD SPEED YOU! BLACK EMPERORといったプログレ勢ポストロク勢も同時に挙げているものの、そのあたりの雰囲気はあまり感じられません(前作はギターワークに面影合った)。<まあなんでも聴くよ、雑食性かな(笑)>(*1)っつーその辺によくいるセルフレーム眼鏡クソサブカル5年連続ナンバー1!みてぇなこともぬかしておりますので、そういう音楽的に幅広い面がもっと発現してポストメタルに近づけば、その辺によくいるセルフレーム眼鏡クソサブカル10年連続ナンバー1!の私好みになるのになーと。つうことで新作は腹に据えかねる自由主義的怒りをスラッジ寄りポストメタル的音像で爆発させてくだしあ。

  1. *1 IDIOTEQ.COM「EXCLUSIVE: CULTURA TRES interview」- 28, Oct. 2012
  2. *2 U.S.DEPARTMENT OF STATES「Venezuela – International Religious Freedom Report 2008
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