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CORTEZ『Phoebus』:ドラマーに焦点を当ててみた。(Mathcore)

Greg(ドラム)、JR(ボーカル)、Antoine(ギター)の演奏陣と、作曲とプロデュースを担当するSam(前ギタリスト)の4人編成。実質的にはトリオメタルバンドです。スイス。

手数が多く拍を強く意識させるドラムと輪郭のハッキリしたギターリフで、変拍子をまじえて突進するその楽曲たち。真っ先に思い浮かんだのがフランスのメタルレーベルであるListenable Recordで、そういやスイスはフランスとお隣ですね。

Listenableは芸術の国おフランスらしくテクニカルだったりプログレッシヴだったり、垢抜けたデスメタルが得意なレーベルで、初期SOILWORKやGOJIRAが有名です。ツーバスをふんだんにつかいながらの、デスメタルらしい暴力性のある数学的アンサンブルが聴けます。

変拍子界隈で有名なレーベルというとRelapseもあげられます(とはいえこのレーベルは守備範囲が広いので、一部ですが……)。メタルではなくハードコア色が強いです。こちらの代表選手はTHE DILLINGER ESCAPE PLANやCOALESCE。マッチョな変態さが味わえます。

実はCORTEZはGOJIRAやTHE DILLINGER ESCAPE PLANともライブを行ったことがあるようです。やはり似た部類の音楽性だと認識されているのでしょう。

とはいえ似た部類というだけで、方向性はちょっと違うようにおもえます。CORTEZの作品ではデスメタルのような暴力性も、ハードコアのようなマッチョイズムも顕著に見られません。

その違いを紐解くために、変拍子の要となるドラマーの容姿に注目してみましょう。

まずはGOJIRA。

中長髪+上半身裸です。正しきデスメタルドラマーの風貌です。

つぎにTHE DILLINGER ESCAPE PLAN。

短髪+黒Tシャツです。正しいハードコア野郎の風貌です。

最後にCORTEZ。

……黒ブチ眼鏡でヒゲで、ジャカード柄のパーカーだと……?フードかぶりだと……?

ともかく、どう見てもメタルやハードコアのひとじゃありません。メンバー紹介の欄で最初に書いてあることからもドラマーのGreg氏はリーダー格と予想されることもあり、彼らのサウンドの鍵はここにあるとおもわれます。

Greg氏はその格好だけでなく演奏時の動きも非メタル/ハードコア的です。前述2つのバンドや、CORTEZのギターやボーカルの動きと比べるとわかりますが、明らかに派手な動きが少ない。魅せる際のキメが、どちらかというとジャズなんかでの、即興系テクニカルドラマーのソレです。演奏中に目を閉じて悦に浸るところなんかまさにってかんじです。

すなわちこのバンドの基盤はメタル/ハードコア的な戦闘力の高さではなく、ジャズ/インストロック的な偏差値の高さだったんだよーっ!!

とはいえ、じゃあJR氏とAntoine氏の演奏もそうした知的さがあるかというとそうではなく。映像を見ればわかるとおり相当荒ぶっております。各メンバーが他の2人に負けじとせめぎあっている。Greg氏は知的な土台を作りあげ、それを他の二人が高ぶる感情でもって飲みこもうとする。それは否定ではなく、より高いところへ行くための対立。彼らの音楽は、知性と感性が相互に攻撃しあうことで非常に魅力的なものへと昇華しています。

というわけで激しい変拍子曲が好きなかたは是非聴いてみてください。