ネット上でカッコツケるひとびと:「芸術家の作品と性格」問題を横目に考えた

きっかけの記事

あなたは、「「いい人」が創作したものを読みたい」のだろうか?それとも、「いい人かどうかはどうでもいいから、とにかく素晴らしい創作物が読みたい」のだろうか?

自分では後者のつもりでも、実は前者だった、という人は案外いる。

人格と創作物を切り離せない人は、SNSで好きな作者さんをフォローしない方がいいかも知れません」(しんざき氏『不倒城』、2013年1月13日付け)

芸術家の性格の善し悪しによって芸術家とその作品への評価を変えること(以下当記事では「性格に影響される」と表記します)への考え方が冒頭記事の内容です。そのなかで、引用部の、後者のつもりでも実は前者だったというひとってどういうこっちゃ、といろいろと考えてみた結果を以下に書いていきます。

芸術家の性格に影響される場合

さて、まずは前者的な、芸術家の性格に影響されている発言をまとめていきましょう。まずひとつ目。

渋谷慶ー郎ってツイッターで損するタイプのアーティストだなって前書いたらエゴサーチでRTされた挙句ブロックされた

これは、渋谷氏がじぶんの顔写真ステッカーが勝手に配布されていたことにTwitter上でブチぎれた件をうけての発言でした。SNS上での言動がアレなことによって作品ふくめた全体をアレな目で見られてしまうことをして「損するタイプのアーティスト」としていると思われます。そしてその後の例が実際の「損する」行動になっていますね。

上の方の発言はネタ色が強いですが、最近別の方によるこういう発言もありました。

(きこえますか・・・ツイッターやってるバンドのみなさんきこえますか・・・・いますぐその「エゴサーチしてRT」をやめてください・・・サブいです・・・人気アピールはダサいです・・・曲聞いてフォローしてガッカリ被害が多発してます・・・いますぐやめるのです・・・)

これはバンドマンのある行動を、テンプレを使ってやわらげてはいるものの、直接批判しています。「曲聞いて」という流れがあること、またわざわざこうした表明をしていることから、「ガッカリ」は作品や芸術家としての評価の部分に対しても影響を与えているとおもわれます。そして1月15日現在でリツイート数が95、お気に入り数が34あるということは、同意者がおおいということです。(そしてこの件にはエゴサーチとエゴRTの話もからみ複雑な事案……別途記事にしたいところであります)

さらに、「今夜お前をASHDAUTAS VRASUBATLAT」事変というブラックメタル界ではたいへん有名な出来事がありました。

ASHDAUTAS VRASUBATLAT。2ちゃんねるブラックメタル板で「日本のSORTSIND!」「日本のSILENCER!」(意訳:「キチガイ好きなオレ」を演出するのに最適!)という煽り文句で評価されていたブラックメタルバンドがいた。ある日、ASHDAUTAS VRASUBATLATがサイドプロジェクトでへびーめたるにーそっくすという萌え萌えなことをやっていることが板住民にばれた。その結果、由緒ただしきブラックメタラーたちは「SORTSINDやSILENCERのパクり」(意訳:これじゃ「キチガイ好きなオレ」を演出できねーからクソ)と近年まれにみる見事な掌がえしでASHDAUTAS VRASUBATLATを罵倒しだしたのだった……。

ブラックメタルという芸術の末端領域の話ですし、直接的に芸術家の性格に影響を受けているというわけではありません。しかし、芸術作品以外のことがらで作品に対する評価が真反対に変わることがあるという好例ではあります。

芸術家側からの発言など、ほかにも探せばこの手の発言はネット上にたくさんあります。

Yahoo!知恵袋で質問されてるよ

さて一方で、Yahoo!知恵袋でこんな質問があります。貴方も回答を考えてみてください。

若干内容がちがったり、回答がずれていたりもしますが、9対2で「芸術家の性格に影響されない」、冒頭でいう後者側が多数です。

これはTwitterおよび2ちゃんねる利用者と、Yahoo!知恵袋利用者のアーティストに対する意識のちがいのあらわれかもしれません。そしてまた、これはその発言形式による差でもあるでしょう。すなわちTwitterや2ちゃんねるは実際の出来事への反応行動であり、Yahoo!知恵袋は想定上の問いに対する回答であるという差です。

ひとは「カッコイイ」回答をしたがる

ここで確認です。たとえば下記のような2種類の発言、どちらがより「カッコイイ」と感じますか?

アーティストは作品で評価されるべきだ。たとえ幼児性愛者だろうとなんだろうと、彼の作品がすばらしいという事実は変わらない。私は彼自身ではなく、彼の作品に惚れているのだ。(32歳、レコードショップ経営)

もぅマヂ無理。ぁぃつロリペドだったみたぃ。ちょぉ大好きだったのに。ホントきもちわるぃ。今CDぜんぶすてた。 (14歳、バンギャ)

誘導的なのは百も承知ですが、断然前者がカッコイイですね!前者は作品に対して真摯なかんじがします。一方で後者は芸術家をアイドル的に見ているような、ミーハーな感じがします。繰りかえしますが、誘導的なのは百も承知です!

公共の場で質問に答える場合や意見を表明する場合、よりカッコイイ回答をしようとするのは自然です。たとえそれが実際のじぶんの行動と食いちがう答えだとしてもです。だからYahoo!知恵袋で――他のコンテンツ界隈のひとからはYahoo!知恵遅れなどと揶揄されるようなサイトなのに――カッコイイほうの「回答」がおおく、にもかかわらずYahoo!知恵袋を揶揄している側の2ちゃんねるやTwitter上で真逆の「行動」が散見されるのです。これはまさにダブルスタンダード――はいいすぎな気もしますので、ここでは「カッコツケ」とでもしておきましょう。

このカッコツケは、作品の受け手だけでなく芸術家側でも起きます。作品を世の中に出す以上は、その作品は世の中を意識したカッコイイものになりうるからです。そしてそのカッコイイ芸術作品に惹かれて芸術家の言動を追ったひとびとが、理想と実際の乖離を目のあたりにしたときに幻滅させられるのです。

まとめ

カッコイイじぶんと実際のじぶん。ひとりの人間がそういう二面性をもっていることは極めてふつうです。カッコツケ自体は悪ではありません。ただしカッコツケてることを指摘されると恥ずかしいのは事実。カッコツケたらつらぬきとおしたいものです。ちなみに私も本ブログで「俺は買うのをやめるぞ!CDーッ!!」などとカッコイイことをいっています。しかしながらWORSHIP『Terranean Wake』がダウンロード販売されないというまことに嘆かわしい事実に直面しており、毎日寝るまえにゴボゴボゴボゴボゴボ……とフューネラルなうめき声をあげています。みなさまもカッコツケるなら慎重にどうぞ。