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SAMOTHRACE『Reverence To Stone』の神話的マリワナ志向で葬々。

カバー画像

基本的には大作志向のポスト系ストーナーというかんじ。ただ、葬式ドゥームの有名どころ、MOURNFUL CONGREGATIONを扱う20 Buck Spinレーベルから発売ということもあって、葬式ドゥーム的要素も通り一遍もっている。リズム楽器としての役割を果たしてないドラムとギターの重い一撃が憂鬱なメロディを奏でているところに反響のききまくったグロウルが乗る形。全体として感情の方向としては葬式に近い、鬱々しいものなんだけれども、前述の大作思考が要所要所で顔をだしておりそれだけには留まらない。ポストロック調に悦ってみたり、速度をあげて生き急いでみたり、雄弁なギターソロしてみたり。それが葬式とないまぜになって、結果EARTHが『Angels of Darkness, Demons of Light I』で奏でてたような、哀愁と倦怠感ただよう臭みのある葬式―いやこれもう葬式じゃねえだろ、っていう状態になっている。

どっからこんな哀愁メロがでてくるんだ、あるいはどっからこんな葬式フレーズがでてくるんだ。そのあたりを探るために歌詞を見てみよう。

#1「When We Emerged」の歌詞は、海から地上にあがってきた我々生物が洪水によって海へと戻される、という内容で、そのなかで生死の意味などを語っている。死を前提とした物語のなかで、生きることの苦悪を書くようなひとらだから葬式ドゥームが採用されてもおかしくない。

歌詞であつかわれているような大洪水というと旧約聖書の「ノアの箱舟」が思い出される。一方彼らのバンド名は、ニーケー像で有名なサモトラケ島から来ている。ニーケーはギリシャ神話の勝利の女神だ。聖書とギリシャ神話を世界観に両方ふくんでいるあたり、彼らの死生観を描くためなら題材に関しては節操がないのだろう。とはいえ観念的/幻想的世界観ではなく、具体的な神話群を取り扱っているところは共通している。自分の感情と詩に落ち込まず、神話をもとに死生観を描くという神話学に近い方法が、葬式に振り切らない要因のひとつだろう。

雰囲気としては以上。音楽としての質は非常にすばらしいのひとこと。ただズズーンと長ったらしくギターならしつづけるだけではなくて、ハウリングなどの装飾をしっかり扱っている。冗長になりがちな大作ドゥームだが、しっかりと展開させて世界観を深めている。個人的には、#1「When We Emerged」の3分20秒、イントロのくだりがひととおり終わって、葬式パートに入るまえの柔らかな、タァァンというドラムにジュンと来た。こういう静の盛り上がりを表現できるってのはステキなことだとおもう。

非業にまみれて死にたいひとには明るくて、煙にまみれて昇りたいひとには感情的すぎるやや癖のある音楽性ではある。しかしながらその癖と、その癖を存分に発揮できる才能に私はやられてしまったのだった。

あと、メンバー写真、中目黒の小物屋感出してて笑う。

member

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