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ALCEST『Ecailles de Lune』に見る音楽と思想の乖離。

感傷という部品をうまく利用してブラックメタルとシューゲイザー系ポストロックを接合した秀作。

元々乾いた空気感やトレモロリフなんて要素を見ればふたつのジャンルは似た者同士だった。んじゃなぜにこれまでうまいこと融合しな かったのよ?

そりゃ根本的な思想背景が異なるもの。

シューゲイザーは音楽オタクが自己陶酔して内部に深く沈み込む内省的音楽。ブラックメタルは、いろいろあれど、基本的には体制に反発する反社会的音楽。反社会的に内省するなんてパラノイアなことができる感性過敏なひとはたぶんすぐに精神がまいって音楽どころじゃないっす。

つまりこういう音楽が誕生したことは、音楽と思想背景の結びつきが緩くなったことを示唆しているかもしれない。ネットを通じて色んな 表現が可能な昨今、わざわざ音楽を選ばなくても…。とか、そういう文脈で語る材料になるんじゃないかなあ。機会があれば論じたいけど、そんな機会は一生設けないだろう。

ブラックメタルに反社会性を感じてるひとはたくさんいて、そういうひとたちにとってこの作品は目の上のタンコブになりうる。だって内省的な自己陶酔野郎たちがよくわかりもしないで「ブラックメタルとシューゲイザーの融合!」とか騒いでブラックメタル聞いた気になるんだからね。

おれもブラックメタル要素のある非ブラックメタルを聞いて「俺はブラックメタルも聞くんだぜ」とふんぞり返ってる音楽メイニアはそのままひっくり返って後頭部を強打して人生がブラックメタル化すればいいと思うし、シューゲイザー要素のあるブラックメタルを聴いて「シュ、シューゲイザーいいよねフヒヒッッ」って歪んだ笑いを浮かべてるやつは孤独死すればいいと思う。逆にこういう異ジャンルを結ぶ音楽をきっかけとしてメインジャンルを飛び越えて色々聞いちゃうような人とは友達になりたい。